オオイヌノフグリ・名前負けの金糸雀色
【学名】 Veronica persica Poir.
【英名】 Field Speedwell, Green field speedwell, Iran Speedwell
【別名】 星の瞳, 天人唐草
【生薬名】 腎子草(じしそう)
【科】 ゴマノハグサ科
冬が遠のき空気がぬるんでくると、そこここにポチポチと青い星のようなこの草が春をつげます。
ヨーロッパ原産の越年草。
現在はアジア,南北アメリカ,オセアニア,アフリカに広く分布します。
日本には明治時代に渡来。路傍や畑の畦道など、特に湿ったところで多く見られます。
実が犬の陰嚢に似ているという在来種の「イヌノフグリ」にくらべ、花が大きいことからこの名がついたんだとか。
だけど、こちらの実は犬の陰嚢には全く似ていない! 他にもみたてるものはあったでしょーよ、かわいそうに。
イヌノフグリの命名者は牧野富太郎とする記述が見当たりますが、江戸時代の植物辞典「草木図説(そうもくずせつ)」にはすでにその名が記載されているようです。ご他聞にもれず、現在はオオイヌノフグリに追いやられ絶滅危惧種となっています。
フランスでは「ペルシャの聖人」、イギリスでは「小鳥の瞳」、中国では「地錦」・・・と美しい長与えられているのに比べるとほんと、気の毒ですが、日本でも「星の瞳」「天人唐草」といった別名もあります。よかったよかった。
学名のVeronicaは、聖女ベロニカから。聖女ベロニカは、十字架を背負って歩かされるイエスキリストの額の汗を、自らの白いベールを差し出して拭ったといわれ、その後、ベロニカのベールにはキリストの顔が映し出されたと言われます。この逸話は、さまざまに絵画の題材にもなっています。
これを受けてか、ヨーロッパではオオイヌノフグリにはキリストの顔が映るという伝説があるそうですよ。
生薬名は「腎子草」。民間療法として全草を、解毒や腎臓病に用いることが知られています。
ヨーロッパでは古くから、全草を煎じたものが、月経困難症や出血に効くとされています。
なかなか試し染に十分な量を得られなかったのですが、やっと大きな群生を見つけて煮出してみました。
あまり濃い液にはなりませんでしたが、媒染後は透明感のある冴えた色がつきました。
アルミで金糸雀(かなりや)色、銅で璃寛茶(りかんちゃ)。鉄で黒くなるかと思いましたが、銅媒染とあまり差はなく、少し赤みがかった程度。
名前のインパクトに比べると、どの色も肩透かしなくらい清々しい色合いです。聖女ベロニカのお力か?
花言葉は、聖女ベロニカにちなんで「信頼」「忠実」「清らか」。
2月11日の誕生花。春の季語。
◎参考サイト / 文献
・http://www.hana300.com/
・http://www.e-yakusou.com/
・https://www.nies.go.jp/
・http://ja.wikipedia.org/wiki/オオイヌノフグリ
・http://www.amami.or.jp/
・https://pfaf.org/
・https://www.kahaku.go.jp/
・https://greensnap.co.jp/
・「季節の野草・山草図鑑」高村忠彦/監修 日本文芸社
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
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