ウルシ・縄文パワーのオレンジ色
【学名】 Toxicodendron vernicifluum
【英名】 lacquer tree、Chinese lacquer、Japanese lacquer-tree、varnish tree
【生薬名】 漆(しつ)
【科】 ウルシ科
中国、ヒマラヤ原産の落葉高木。
原産は中国ですが、塗料として「漆」が使われたのは、中国が殷・周時代(紀元前17世紀〜)だったのに対し、日本ではすでに縄文前期(1万2000年〜)の鳥浜貝塚(福井県)から漆塗りの器や櫛が出土しており、活用は日本が発祥と言えるようです。そのためか、陶磁器を俗にChinaというように、漆器のことは英語でJapanといいますよね。
絵画に漆が使われた最も古い例は、法隆寺の「玉虫厨子」とされています。
漆器が一般に普及したのは13世紀以降で、江戸時代になって、各藩の殖産政策によってそれぞれ特色のある漆器の伝統生まれました。
学名のvernicifluumは、「ワニス(ニス)を生ずる」の意。樹液に触れると激しくかぶれを生じますが、なんと、乾かした漆は生薬だそうです。
和漢三才図会には「虫を殺し血のめぐりをよくする。いつまでもなおらぬ凝結の瘀血(血の結滞)を破り動かす。乾漆を焼き、その煙を吸うと、針や薬を用いることのできない喉の痺れを治す」などの記述が見つかります。
「和漢薬」には、実が下血に効くとも。
そしてそして、和漢三才図会にはさらに、「漆は蟹を得ると水となる。蟹は漆をみると乾燥しない」というオドロキの記述が!
「漆にかぶれた人は杉木湯、紫蘇湯、漆姑草湯、蟹湯を浴びるとよい」とも。
ほんとかいな!
これを読んだ漆職人の方、蟹が本当に効くのか、ぜひ教えてください。
材は、耐湿性があり、黄色で、箱や挽き物細工にするのに適しています。
木工作家の友人が、漆材の端材をくれました。
全体的に黄色い木材で、煮出すと美しい濃い黄色の染液となりました。そして、長く煮出すと徐々に赤みが加わるという!
媒染による色味の違いがはっきりしており、どの色もたいへん堅牢。
アルミ媒染で黄支子(きくちなし)色、長く煮出した液では蜜柑色。銅で黄褐色(おうかっしょく)、鉄では黄味の強い黒緑。
力強い! 縄文文化の野太さを思わせる強い色!
花言葉は「「頭脳明晰」と「賢明」。
11月25日の誕生花。
◎参考サイト / 文献
・http://www.hana300.com/
・https://www.city.toyama.toyama.jp/
・https://ja.wikipedia.org/wiki/ウルシ
・https://ja.wikipedia.org/wiki/漆
・https://wakahaku.pref.fukui.lg.jp/
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社
(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房 禁転載
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