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2024/06/03

松本 工芸紀行2 「その人は、蝶。」



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(写真右 : 出典)

このところ、雨と晴天、雨と晴天・・が続き、カジュの庭はりっぱなジャングルになりつつあります。守護神イロハカエデにもたっぷりと蒼い葉が蓄えられて、それを下から見上げて、ひととき語らうのが、今の季節の日課です。

生きていれば大小様々心配事は尽きぬもので、それに囚われて気持ちが塞ぎそうになった時に慰めてくれるのはいつも、このカエデの木です。

樹齢はゆうに150年を超えていると思われ、それだけの年月、動かずに、花を咲かせ実をつけて、生き生きと生き抜いている。

敵が来ても逃げられない、というライフスタイルで、子育てをやってのけているです。

そこには、訪れるものすべてを味方につける覚悟が見えます。

風も虫も鳥も。害になるかもしれぬ台風でも日照りでも、皮を食い散らす小さな獣たちでさえ、味方につけてみせる、という揺るぎない覚悟がそこにはある。

日常生活の心配事も些事も、きっと何かの栄養になると信じてしっかり味方につけて、「やっつけ」や「消費」ではなく「糧」や「次の世代のための実り」につながる一手を打ってゆきたいと思います。

 

先週の松本出張は、私にとって大きな実りにつながる出来事でした。

素晴らしいお客様、出展者、スタッフに恵まれた展示ができただけでなく、幸運にも、敬愛するファッションデザイナーでアーティストでもある皆川明さんのお話を聴く機会にも恵まれまして。

「あまりにも多くのものを作り出して、それを短期間で大量に消費してゆくのではなく、良いものと長く付き合っていく世の中にしたいですね。たとえ少々値が張っても、長い目で見ればその方がお得ですしね。100年、200年うけつがれる手仕事をそういう考えのもので残したいですね」

手仕事の人間みなが思っていることを、すぱっと代弁してくださって、うれしい。

「今後、AIがさらに進化して、手仕事を追い詰めていくと思うのですが、どうしたらよいでしょう」という客席からの質問に対しては、

「AIをデータベース化するのがいいのでしょうね。たとえば、ある地域で廃れてしまった技術が、べつのところで役立つ、必要とされるということもあるはずです。また遠い国の伝統の手仕事の技が、私たちの新しい創造のヒントになることもあるはずです。そうした情報を国を超えてデータベース化することをAIに担ってもらうのがいいのでは」

シビれる答えでした。

AIと聞いただけで、手仕事に携わる私たちは「大いなる敵、現る」とつい身構えてしまいますが、皆川さんは、それすらも味方につけるビジョンをすでにお持ちでした。

まさに、樹齢150年のイロハカエデに通ずる智慧。

観客200人ほどのトークショーでしたが、皆川さんのお話は、きっとここからさざ波のように広がっていくことでしょう。

 

ご自身のブランド名「ミナ ペルホネン」はフィンランド語で「わたし、蝶々」という意味なんだそうです。

俗にブラジルにいる1匹の蝶のはばたきがテキサスで竜巻を起こすという「バタフライ・エフェクト」。

ミナガワ蝶の羽ばたきは、きっと大きな風を起こすにちがいありません。

 

私にできることは・・・この小さな羽ばたきを次につなぐ一手を、まずは身近なところから打っていくことでしょうか。

 

<おことわり>
文中の皆川さんのお話は、私の記憶を元に文字で起こしましたので、表現の違いなどはご容赦ください。また何らかの間違いなどは、すべてたなかの責任です。

 

 

 

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