オリーブ・神通力の藍海松茶(あいみるちゃ)
【学名】 Olea europaea L.
【別名】 ホルトノキ(別種の誤用)、カンラン(誤用)
【科】 モクセイ科
地中海沿岸または小アジア原産といわれている常緑樹。
オリーブには野生種と栽培種があり、野生種は有史以前からアフリカ北部沿岸から地中海沿岸一帯に自生していたのを、5,000年ほど前から栽培するようになり、それが現在の栽培種の起源となっているそうです。
やがてローマ時代に入ると、ベルベル人が接ぎ木方法を知っていたこともあり、ローマの支配地域での栽培が発展し、地中海沿岸の国々に広がってゆきました。その後、コロンブスのアメリカ大陸発見と共に南米にまで広がり、各地で栽培され始めたといわれています。
そこまで人々を魅了したオリーブ。たしかにその有用性は特筆に値します。
日本では、文久年間(1861年〜1864年)に横須賀で栽培したが失敗したという記録が残ります。オリーブの噂を聞きつけて「輸入しよう」ではなく「育ててみよう」というところが好奇心旺盛な日本人らしいですね。(笑)
本格的にアメリカから苗を輸入したのは明治になってからで、三重、香川、鹿児島の三県で栽培を試みたそうですが、小豆島だけが好成績で、あとはうまくいきませんでした。小豆島のオリーブは今ではりっぱなブランドです。
旧約聖書の「ノアの方舟」には、ノアが外部の様子を知るために鳩を放ち、戻ってきた鳩が、オリーブの小枝をくわえているのをみてノアは地上に平和が戻ったことを知ったというエピソードがあります。このことからオリーブは鳩と共に平和の象徴とされました。
現在、国連の旗には平和への願いを込めてオリーブの葉がデザインされています。
ヨーロッパや中東の神話、民話には数え切れないほどのオリーブにまつわるお話がありますが、有名なものでは・・・
>>ギリシャ神話<<
・アテナイの守護神になることをかけて争ったアテネとポセイドン。ポセイドンが泉を沸き立たせたのに対し、アテネはオリーブの木を生やして勝利する。(オリーブはアテネの木とされる)
>>オデュッセイア<<
・オデュッセウスのベッドは大地に生えているオリーブの木をくり抜いて作ったもので、長年留守にしていたオデュッセウスはそのことを言い当てて妻ペネローペを納得させる。
実からとれるオリーブ油は古代ギリシャ・ローマ時代から生活必需品で、食用のほか医薬品、化粧品、灯用などに幅広く利用されてきました。未熟な実は塩漬け・酢漬けにするそうです。
材は細工物に、葉は平和や豊穣のシンボルとして様々に装飾に用いられます。
今でもギリシャでは女の子が生まれると庭にオリーブの木を植える風習があるとか。
オリンピックの勝者には月桂樹の冠が贈られる、と思われていますが、正しくはオリーブの冠なのだそうです。
古代ギリシャの「オリュンピア祭」(現在のオリンピック大会の元)。この祭儀は最高神ゼウスに捧げられたもの。このオリュンピア祭の勝者となった英雄ヘラクレスが与えたとされるのが、オリンピアの庭に植えられていたオリーブの枝だったと言われ、これがオリーブ冠の由来となっています。
ちなみに月桂冠は、同じく古代ギリシャの祭儀「ピューディア祭」で勝者に贈られたもの。ピューディア祭は太陽神アポロンのための祭儀。アポロンは詩歌・音楽・芸能・芸術の神でもあったため、文化芸術の各分野において優れたものにアポロンの聖樹である月桂樹(ローレル)の葉で作られた冠を贈ったとされています。ノーベル賞受賞者のことを「Nobel Laureates (ローレルを冠された者)」と呼ぶ由来にもなっています。
体育会系はオリーブ、文化系は月桂樹、ということですね。
オリーブの葉には、血糖効下作用、血圧降下作用。循環系の機能改善、穏やかな利尿作用があり膀胱炎などに治療や糖尿病治療に用いられます。
オリーブ油は、血液中の脂肪のバランスを改善する効果あり。一般的には、オリーブ油は消化器官を保護する作用や外用剤として、精油の抽出剤として用いられます。
ずっと染めてみたいと思いながら、なかなか手に入らなかったオリーブの枝葉。なんと「葉山で剪定したけどいります?」と植木屋Sさんにお電話をいただきました! お心にかけていただいて、ほんとうににありがとうございます!!
期待通り、煮出してみると少量でも大変濃い染液となりました。かなり渋みがあるようで、染液の表面には白いアクの泡が浮かびました。
(煮出す前、くっついていた実を食べてみたら恐ろしく渋かった!)
アルミで黄金色(こがねいろ)、銅で黄唐茶(きがらちゃ)や桑茶、鉄で藍海松茶(あいみるちゃ)。
どれも透明感があり、押し出しのよい発色。大変堅牢です。
ウグイスがウグイス色でないのと同じで、残念ながらオリーブグリーンは出ませんでした(笑)。アルカリ抽出すればあるいは、と思うので、次は試してみたいと思います。
花言葉は「平和「知恵」「安らぎ」「勝利」「歓迎」。
5/26の誕生花。
◎参考サイト/ 文献
・http://www.e-yakusou.com/
・https://ja.wikipedia.org/wiki/オリーブ
・http://www.hana300.com
・https://www.lab.toho-u.ac.jp/
・https://ameblo.jp/mana-aloha-mahalo
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「世界植物神話」篠田知和基 / 著 八坂書房
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