ソヨゴ・秘めた海老茶色
(写真出典)
【学名】 Ilex pedunculosa Miq.
【英名】 Longstalk holly
【別名】 フクラシバ、ソヨギ、アオダマ
【生薬名】 とうせい(冬青)
【科】 モチノキ科
本州中部より来優秀、台湾、中国南部のやせた山地に自生する常緑樹。
硬い葉が風に戦ぐ(そよぐ)とザワザワと音をたてることから「戦(そよご)」の字を当てることもあります。
が、冬も蒼々と葉を茂らせる様から「冬青」の字を当てることが一般的です。
フクラシバの別名は、葉を加熱すると内部で気化した水蒸気が外に出られず、葉が膨らんで音をたてて破裂することから(!!)「膨らし葉」と呼ばれたことに由来するのだとか。煮出したときに音がしていたか、もっと気をつけておけばよかった!
(※モチノキ科の他の木もフクラシバと呼ばれるものがあります)
開花期は5-6月で雌雄異株。
花は濃厚な蜂蜜が採れるといわれています。近くに雄の木がないと、秋に秋に赤い実をつけることはないそうです。
根が浅く横にはるため、台風などで倒れやすいのが難点。鎌倉は特に里山全体の土層が薄いといわれているので注意が必要ですね。
和漢三才図会には「まさき」の名前で記述が見つかるりますが、「まさき」は誤用。
「冬青の木は白くて文(すじめ)があり、象歯笏(ぞうげのしゃく=象牙のような白い笏)をつくる。葉は緋の染料にすることができる」とあります。「実や樹皮を酒につけたものを服用すると、気血を補う、葉を焼いて灰にして酒で服用すると、切り傷によい」とも。
現在でも算盤玉、櫛、箱根細工などの小物の材料として重宝されているそうです。ギターのサウンドホールの周囲の象嵌にソヨゴの硬く白い部位
をつかうことがあるそうです。
枝葉は、榊の代わりに神事に用いることも。
他のモチノキ科の木と同様にトリモチを作ることもできるそうです。
和漢三才図会にもあるように、葉が赤を得る染料になることは古くから知られていますが、周囲の染色仲間の話では「褐色どまりになることが多い」とのこと。赤への道は遠いのダ・・・。
貰い受けた葉をアルカリ水で煮出したところ、ワインレッドの液となり「こりゃいけるか?!」と鼻息を荒くするも、酢酸をいれて中和すると、一旦は黄茶色に変化し、糸もそのように染まった・・・。が、媒染液につけると再び赤黒い色を取り戻しました。
すず媒染で唐茶、海老茶。銅で茶褐色から黒茶。鉄で漆黒、赤墨色。次は酸で中和せずに染めてみよう。
木の奥の奥に秘されている「赤」を引き出すのは、まだまだ試行錯誤が必要なようです。
花言葉は「先見の明」。晩秋の季語。 12/25の誕生花。
◎参考サイト/ 文献
・http://www.e-yakusou.com/
・https://ja.wikipedia.org/wiki/ソヨゴ
・https://www.uekipedia.jp/常緑広葉樹-サ行/ソヨゴ
・http://www.hana300.com
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 2」 北隆館
・「和漢三才図絵」 第84巻 寺島良安 / 著
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社
(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房 禁転載
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