ナガミヒナゲシ・新女王はカナリヤイエロー
【学名】 Papaver dubium
【英名】 Long-Head Poppy, Blindeyes, Field poppy
【科】 ケシ科
10年ほど前から、初夏の野原にポツリポツリと顔を出しはじめたオレンジ色のお花。
瞬く間に、それまでいた草たちを押しのけて、野原を席巻した感があります。
学名のPapaver dubiumはラテン語で「疑わしいケシ」の意味。地中海沿岸の原産で、ヨーロッパ、北アフリカ、西アジア、オセアニア、南北アメリカ、そして日本に分布。
日本には1960年前後に入ってきたものと思われます。ムギの栽培を介して世界中に広まったと考えられているそうです。
果実(芥子坊主)が細長く、和名のナガミヒナゲシ(長実雛芥子)はここから名付けられました。
果実の中には文字通り芥子粒の大きさの種が入っています。
芥子の実はアンパンなどについていますが、イギリスのサイトには、こちらの実は哺乳類には低い毒性を示すという記述が見あたります。
実際、アルカロイド系の毒性物質を微量に含んでいることは確認されており、食用しないほうが無難ですね。ですが、アヘン成分は全くありませんのでご安心を。
茎葉を傷つけると出てくる乳白色の液体が皮膚につくとかぶれることがあるので注意。中東地方においては食用としていた歴史もあるようですが。
さらに西アジアにおいては約6000年前には油脂分を多く含む為、生活に欠かせない物ともされていたらしいです。またギリシャにおいても栽培が盛んに行われていとの記述も見つかります。
たしかにこの実、放っておけない何かが宿っています。太古の昔なら「なにかに活かせないか」と真剣に研究したのではと拝察。
セイタカアワダチソウ、マリーゴールド等と同様、根と葉からは周辺の植物の生育を強く阻害する成分を含んだ物質が生み出される、いわゆるアレロパシー作用を持ちます。自家受粉でき、種は風媒、虫媒、人的作用と幅広く、繁殖力はたいへん強い。
はいはい、だからたちまち野原に君臨できたと。
今の所特定外来生物などには指定されていませんが、その予備軍という位置付けのようです。
かぶれを起こす乳白色の液体がでる毒草にはトウダイグサがありますが、染色の結果がよく似ていました。銅でうぐいす、鉄で海松色(みるいろ)。そして、錫ででたさすように強い金糸雀(カナリヤ)色に、女王然とした野原の君臨者の強さを感じました。
花言葉は「心の平静」「なぐさめ」「癒し」。
・・・女王様、意外とやさしいのか。
◎参考サイト / 文献
・http://ja.wikipedia.org/wiki/ナガミヒナゲシ
・https://www.nies.go.jp
・https://pfaf.org/
・https://mame-column.com/flower/hinagesi-4
・http://sukikoba.com/2018/05/09/nagami-hinageshi/
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