ユーカリ(スミティー)・古い記憶の黒紫
【学名】 Eucalyptus smithii
【英名】 Gully Gum, Gully Peppermint, Blackbutt Peppermint
【科】 フトモモ科
ユーカリは明治10年前後に日本に渡来しました。
ユーカリには600を超える種類があるといわれていますが、ホソバユーカリのひとつ、このユーカリ・スミティーは、シドニーより南の沿岸部~内陸部で比較的涼しく、雨の多い気候の地域出身。
そのため、日本の猛暑には少し弱いところもありますが、条件がよければ枯れることはないようです。10m前後で成長が止まるものと45m以上の大木に成長するものがありますが、種や苗の段階でそのどちらかを見分けるのはほとんど不可能なのだとか。同じホソバで日本でよく見られる園芸種のヴィミナリス(viminalis)やラディアタ(radiata)なども、外見がほとんど同じで、こちらも区別が難しい・・・。
植えてみて、出たとこ勝負か。
葉山在住の友人から、大きくなりすぎて剪定した枝葉を貰い受けました。
一緒にいただいた写真を見るに、おお、たいへん! お聞きしたところ、クレーンを使ったそうですよ。高温多湿の日本でよくぞ育ちました。
今回のものは新芽が紫がかっていたので「スミティー」と判断しました。
ユーカリの葉全般、乾燥した葉をたくと花粉症に効果あり。ユーカリ油は医薬品として利用され、刺激性により、神経痛、リウマチ、筋肉疲労などには直接患部に塗布します。防腐、殺菌、駆風、駆虫剤としても用いられるほか、化粧品の香料や蚊の忌避剤の皮膚クリームなどにも利用されます。
もちろんアボリジニも伝統的に薬として用いてきました。(というか、その伝統から学んだのですよね)
伝染病、熱病の治療。ハーブとして防腐剤、風邪、インフルエンザ、のどなどの痛みの緩和。気管支炎、急性肺炎の治療など。
見分けつかないほどよく似たそれぞれの細葉ユーカリたちですが、効能は似通ってはいるものの、多少差があり、毒性が強いのもあるようです。
刺激の強いの、優しいの、効能には禁忌がある品種もあるとのこと。・・・うーん、なにか「見る」だけではない「見分け法」があるのでしょうか。アボリジニさんたちは五感をフル活用して一発で違いを言い当てたりできちゃう・・・とか。
枝を含めて細い葉を煮出してみました。スミティーはユーカリの中でも特に香りが強いことで知られ、たしかに煮出している間も独特の芳香が漂いました。
赤が染まることで知られるユーカリ・シネリアとほぼ同じ赤みの強い黄色の染液となったので、もしや!と思ったのですが、赤はでなかった・・・。
しかし、どの色も大変堅牢。特にウールの染まりが素晴らしいです。アルミで辛子色、銅でカーキー色から海松色(みるいろ)、鉄で紫がかった黒の輝きは特筆すべき美色。オーストラリアの大地の古い記憶が、奥底に宿ってるようです。
ユーカリ全般の花言葉は「新生」「再生」「思い出」。
◎参考サイト/ 文献
・http://www.e-yakusou.com/
・http://www.eucalyptus.jp/
・http://www.sapporobeer.jp/
・http://hananokotoba.com/eucalyptus/
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・お話:原暁子さま
(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房 禁転載
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