スズメノカタビラ・死装束の檜皮色
【学名】 Poa annua
【英名】 Annual bluegras, Annual Meadow Grass, Six Week Grass
【別名】 イチゴツナギ、ハナビグサ、 ニラミグサ
【科】 イネ科
世界各地に自生する一年草。
学名の「Poa」はイチゴツナギ属を表し、これは古代ギリシャ語の「牧草」を意味します。
おもしろいのは和名の由来です。
和名の「カタビラ」は「帷子」と綴り、
1.裏地をつけない衣服の総称
2.麻布で仕立てられた、夏に着る着物のこと
3.経帷子(キョウカタビラ=葬式に着用する白い着物。白装束)
などの意味があります。
「スズメの」は、植物名においては「小さな」の意味で使われることが多く、この場合は「花穂の風情が着物を着た人形のようである」と見立てたようですね。
はて、ただの単(ひとえ)の着物・・・かしらん。
よく見ると、その着物の襟合わせに見立てた部分が、死装束と同じ左前にみえるではありませんか。
となれば、カタビラの意味は、3の「経帷子」ということになりましょうか。
死装束で花火のように乱れ咲く・・・腹くくって生きてますなぁ。
図鑑などには3月ごろに花が咲く、とありますが、昨今の鎌倉では夏に開花しているものを多く見かけます。
学名の「牧草」よろしく、オヒシバ、カモジグサ、ネコジャラシなどとともに夏の野原を埋め尽くし、畑や芝生では厄介者扱いです。
散歩中の犬が好んで食べてしまう草でもあります。(毒性はない)
8月の初めの暑い盛りに、近所に見事な群生を見つけて、煮出してみました。
イネ科の植物は総じて黄色をベースにした色合いに染まることが多いのですが、こちらは珍しく赤みの色合いに染まりました。
アルミで伽羅色(きゃらいろ)、銅で芝翫茶(しかんちゃ)から檜皮色(ひわだいろ)、鉄で茶鼠(ちゃねずみ)から黒橡(くろつるばみ)。
なんとなく、どれも雀の羽を連想させる色合いです。
花言葉は「私を踏まないで」。
晩春の季語「雀隠れ」は、スズメが野原の草に隠れる様子を表していますが、その代表的な草がこのスズメノカタビラです。
ちなみに七十二侯の第十候は「雀始巣 (すずめはじめてすくう)」 3/20~3/24頃。
最近めっきり数を減らしている雀。春のお彼岸の頃、あちらでもこちらでもスズメの巣作りが見られる・・・そんな風景を守ってゆきたいですね。
◎参考サイト/ 文献
・http://ja.wikipedia.org/wiki/スズメノカタビラ
・https://matsue-hana.com/
・https://pfaf.org/
・https://www.hana300.com/
・https://www.awaji.ac.jp/
・https://www.city.kani.lg.jp/
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 2」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房 禁転載
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