サルノコシカケ・霊力は江戸茶色
【学名】 Ganoderma applanatum (Pers.) Pat.,
Elfvingia applanata (Pers.) P. Karst (コフキタケ)
Polyporaceae (=サルノコシカケ科)
【英名】 artist's bracket , artist's conk , flacher lackporling,
bracket fung, shelf fungi
【別名】 コフキタケ、コフキサルノコシカケ、ブシキノコ、
イタチノコシカケ
【 科 】 サルノコシカケ科 マンネンタケ科
ずっとずっと染めてみたいと思っていた御仁。「霊芝」の異名をとるほどの薬効、霊験あらたかな この御仁。
仕事場のウメの木に出現したので、ついに試染いたしました!
・・・が、一筋縄ではいかなかった。
そもそも、広く呼びならわされている「サルノコシカケ」という名前。植物学上の名前ではなく、これが示すものがじつに多岐にわたっていることが判明。しかも、ネット上で見つかる写真と名前が、別のサイトでは違う名前だったり、同じキノコの名前でも、写真がサイトによって全然違ったり・・・。
なので、ここでは植物学より染色により近い生薬の世界の話を優先して書いてみたいと思います。
世界に広く分布。
一般に「サルノコシカケ」と呼ばれるものは、特定のものを指すのではなく、マンネンタケやコフキタケなどを総称しているようですね。
日本では、4科40属300種が知られているそうです。
半円形で棚状、木質で厚く硬い。一部には食用として珍重されるものもありますが、通常はきのこ狩りの対象にはされないようです。
マンネンタケやコフキサルノコシカケ、カワラタケは、いわゆる「霊芝(サルノコシカケ)」として漢方薬や民間薬として用いられてきました。得られる多糖類が、制癌剤として効能があることがわかっています。
特にマンネンタケは古代、不老不死の妙薬とされてきました。和漢三才図会には「芝(し)は、青・赤・黄・白・黒・紫の6つの名で表している。山川・雲雨・四時・五行・陰陽・昼夜の精が五色の神芝を生成するが、これは聖王のめでたいしるしとされる。およそ石芝・木芝・肉芝・菌芝など数百種類ある。むかしはめでたい祥(しるし)とされた」と、たいそうな記述が見当たります。
一方「芝とはつまり腐朽の余気から生えてくるものでまさに人間にコブができるのと同様である。それなのに古今の人はこれをめでたしぐさと消し、また服食すると仙人になるといっている。これはまことに誤りではなかろうか」の一文も。
なるほど。確かにサルノコシカケが生えると、その木は弱っていくそうですから、この寺島良安先生の一文は実に理性的です。
アイカワタケなどは、樹木の空洞・裂け目などに形成した菌糸の塊は布状の手触りがあり、古くはこれを加工して琴・日本刀などを収納する袋を作ったという記録があります。煙草入れなどの工芸品に加工することもあったといいます。
西洋では、ツリガネタケやキコブタケの子実体内部の肉をよく叩いて柔らかくし、そのまま外科用の綿の代用にしたり、硝石の水溶液をしみこませてから乾燥し、火口として使用したといい、これを「アマドゥ」というそうです。
ルーマニアには、このアマドゥを使った伝統の帽子があるそうです。
近年、このアマドゥが皮革の代用素材として再び注目されています。
宮沢賢治の童話にも「さるのこしかけ」という短編があります。少年が庭の栗の木にできたサルノコシカケを見て、小さな猿が座る姿を想像していたら、軍服を着た3匹の猿がやってきて言葉を交わすという可愛いお話です。
試染したものは、知り合いの樹木医さんのお見立てではコフキタケということ。
銅や鉄で油色から鶯茶(うぐいすちゃ)、路考茶(ろこうちゃ)。アルミではとくに心がほっこりする江戸茶色。
「霊」の字を冠するスーパースタァは、思いの外控えめで謙虚でありました。
花言葉は「木に寄り添う」「堅実」「謙虚」(どれも一般的ではない)
◎参考サイト / 文献
・https://okayamakajyu.com/
・https://mikawanoyasou.org/
・https://gkzplant.sakura.ne.jp/
・https://ja.wikipedia.org/wiki/サルノコシカケ
・https://www.weblio.jp/
・「身近なキノコ図鑑」秋山弘之 / 著 家の光協会
・「和漢三才図絵」第101巻 寺島良安 / 著
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社
(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房 禁転載
| 固定リンク | 0
「鎌倉染色彩時記(染)」カテゴリの記事
- カキドオシ・病退散の藍媚茶(あいこびちゃ)(2025.06.07)
- テイカカズラ・ストーカーの桑茶色(2025.06.01)
- サルノコシカケ・霊力は江戸茶色(2025.05.22)
- オニタビラコ・姐さんはウグイス色(2025.04.16)
- ナラタケモドキ・日陰者の白橡(しろつるばみ)(2024.12.19)
コメント