テイカカズラ・ストーカーの桑茶色
【学名】 Trachelospermum asiaticum Nakai var.
【英名】 Asiatic jasmine, Asian jasmine, yellow star jasmine
【別名】 マサキノカズラ、セッタカズラ
【生薬名】 絡石(ラクセキ)
【科】 キョウチクトウ科
中国南部、朝鮮半島、日本では東北以南、四国・九州の温暖な場所に分布。山野や林で岩や木を這い上るように自生します。
近種にケテイカカズラ、リュウキュウテイカカズラ、トウテイカカズラ、ハツユキカズラなどがあります。
名前は、能の演目「定家」に由来するそうです。
>>「定家」あらすじ<<
北国から来た旅僧が京都を訪れる。時雨が降ってきたため、由緒ありげな建物で雨宿りをすると、そこに一人の里女が現れ、そこが藤原定家の建てた「時雨の亭ちん」であることを教え、定家を弔うように勧める。
里女はさらに旅僧を式子内親王の墓に連れていき、式子内親王と深い契りを結んだ定家が、二人の死後も執心からカズラとなって墓に絡みついていることを語り、救ってくれるよう頼むと、里女は自身が式子内親王の亡霊であることを明かして消え失せる。
僧が法華経を読誦していると、式子内親王の亡霊が墓から現れ、カズラが解けて自由の身になったことを喜ぶ。
・・・ちょーっと待った。
サラリとあらすじを書いてしまいましたが、藤原定家くん、そうとうな粘着質! 死んだ後になっても絡みつくって、今の恋愛現場にいる人たちだったら言うでしょう、「無理無理無理無理、ちょー怖い」。絡みつかれた式子内親王がそれで幸せなら問題はないけれど、お坊さんに「お願い何とかして!」というぐらい迷惑しているという・・・。
たしかに、かなり重たい情念を内包している輩であることは、小網代の森で他の樹木を取り込みながら繁茂しているテイカカズラを見たときに強く感じてはいましたが。
和漢三才図会には「定家の墓に生えたのでこの名がある」という記述も見当たります。ふむ、ここから能の脚本が作られたのかもしれませんね。
古事記にも、アマテラスオオミノカミが天の岩戸に隠れて暗黒の世界になった折、アメノウズメノミコトが「アメノヒカゲ(天の日影)をたすきに
かけて、アメノマサキ(天のまさき)を髪に飾って舞った」と書かれています。
この「天のまさき」がテイカカズラだといわれています。
一般的には毒草に扱い。経口摂取するとお腹を壊すので注意。(キョウチクトウ科は総じて用心が必要ですね)
毒であるゆえに古くから薬としても知られ、全草を干したものを生薬名で「絡石(らくせき)」といいます。煎じて解熱や強壮に用いました。また生葉をすりつぶして傷に塗布すると効き目があるともされますが、素人は用いぬ方がよいでしょう。
和漢三才図会では「不老長寿で神に通ずる効験がある」と絶賛されています。生薬の世界では「上品」に列せられる良薬の扱いです。
鎌倉のお隣、逗子の市役所の建物の壁には一面テイカカズラが張っていて、初夏の開花期はそれはかぐわしい香りを放っています。(冒頭写真 左)
近種のトウテイカカズラは昨今カーデニングで人気です。テイカカズラよりさらに強い芳香。テイカカズラの花が少し黄色味を帯びているのに対し、こちらは真っ白なお花です。
やまがら工房のSさんが、おうちにの近くでテイカカズラとトウテイカカズラを見つけて採ってきてくれました。
トウテイカカズラに比べて、テイカカズラの方がやや赤みが強いですが、だいたい煮た色合いでした。
アルミで香色(こういろ)、芥子色。銅で桑茶、鶯茶。鉄で灰汁色、利休色、岩井茶など。
どちらもとても堅牢な色を染め上げました。煮ている間、工房中にいい匂いがして幸せでした!
花言葉は「依存」「 優雅」「優美な女性」「爽やかな笑顔」
夏の季語。
◎参考サイト / 文献
・http://ja.wikipedia.org/wiki/テイカカズラ
・https://mikawanoyasou.org/
・http://www.e-yakusou.com/
・http://www.hana300.com/
・https://lovegreen.net/languageofflower
・https://www.the-noh.com/
・「和漢三才図絵」第96巻 寺島良安 / 著
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 2」 北隆館
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