ナラタケモドキ・日陰者の白橡(しろつるばみ)
【学名】 Armillaria tabescens (Scop.) Emel
【別名】 オリミキ、カワギノコ、サワモタシ
【科】 タマバリタケ科
嗚呼、ついに手をつけてしまった。
キノコ。
染色の世界では、キノコを含めた「日陰者」の染めはヨーロッパを中心に発展しています。
学生時代に授業で乾燥した「パペリージョ」というキノコで黄色を染める実習はしたことがあるのですが、ググっても全然ヒットしません。試しにpaperillosとあっているんだかわからないスペイン語のスペルで検索すると、なんか怪しいタバコ風の嗜好品が出てきました。
実は危ないものだったのか?!
庭のアンズの木が枯れてしまってしばらく経ちますが、ふと根元を見たところ、たいへん勢いのあるキノコの群生を見つけました。
香りはシイタケのそれ。それなりに肉厚で美味しそう。
さっそくFBに「これ、なんというキノコか教えてください」と投稿すると、親切な朋友からいろいろなお返事がいただけました。
本当にありがとうございました!!
おかげさまで、この子が「ナラタケモドキ」であることが判明し、食用にもなるとわかったのですが、見つけるのがちと遅かった。すでに傘裏が褐色に変色していて、食べて美味しいレベルではないことがわかったので、染めてみることにしました。
ナラタケによく似たところから「ナラタケモドキ」の名があります。
ナラタケと生態はよく似ており、ユーラシアと北アメリカ、アフリカなどに広く分布するようです。
学名のtabescensはラテン語で「やせおとろえた」の意味。日陰者たち、扱いが気の毒。
主に秋の広葉樹の枯れ木やその周辺の地上に群生します。
傘は黄褐色や淡黄色で中央に細かい鱗片と周囲に条線があり、ヒダが白色、柄にはしっかりした白いツバがあるのがナラタケで、ないものがモドキだそう。
( 写真出典)
日本では食用キノコとして人気があり数多くの地方名もあります。
名前からもわかる通りコナラ、ミズナラなどの広葉木に寄生します。
厄介なのは、サクラ、モモ、ナシなどに寄生すると、その木を枯らしてしまう病原性をもつということ。
そうか、そのせいでうちのアンズは枯れたのね・・・。
世界中で食用とされていますが、過食、生食は中毒を起こすことがあるので注意。
日本では汁の実、炒め物、煮物などで各地に多くの郷土料理が存在します。
次は、目を光らせて新鮮なものをゲットするぞ! 「染」より「食」優先!
煮出してみると、ほっこりした香りとともに、トロみのある赤黒い液になりました。
ところが、糸にはほとんど色が移らず、どれもあっさり味。ウールと相性がいいようですが、アルミでほとんど生成りに近い練色(ねりいろ)、銅で白橡(しろつるばみ)、鉄でもちっとも黒くはならず灰汁色(あくいろ)どまり。
染めていて「ヤッタァ」感はないのですが、織り糸ととしては大変重宝な色合いです。
次は新鮮なもので試してみます。
鎌倉染色彩時記、キノコ編、開幕。
キノコにも花言葉は存在するようで、キノコ全般には「疑い」という花言葉があるんだとか。
近種のナラタケの花言葉は「一筋縄ではいかない」。
確かになぁ。
◎参考サイト/ 文献
・https://ja.wikipedia.org/wiki/ナラタケモドキ
・https://naturalism-2003.com/
・https://kinokobito.com/
・https://ippon.sakura.ne.jp/
・https://note.com/menderu68/n/n457ebbd25b94
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 2」 北隆館
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