鎌倉染色彩時記(染)

2021/07/19

アロエ・胃薬、お約束の黄金色

Aloe01 Aloe02

【学名】  Aloe arborescens (キダチアロエ)
      Aloe vera (L.) Burm.f. (アロエベラ) 
【英名】  Aloe, Octopus plant 
【別名】  蘆薈(ろかい)
【科】   ススキノキ科
        (※旧 ユリ科、アロエ科、ツルボラン科)


南アフリカ原産。
牧野図鑑では大正時代に菜種油色観賞用として輸入された、とありますが、どうやら鎌倉時代には伝来していたようです。が、

Aloe(アロエ)の名は、アラビア語の 「alloeh(苦味のある)」から。
アラビア語の発音「ロエ」が中国で「蘆薈」と綴られ、これが日本で「ろかい」と呼ばれるもととなりました。

キダチアロエは九州、本州の太平洋側に多く自生し、そのほか日本ではアロエベラが園芸用として多く流通しています。

俗に「万能薬」と認識されているますが、どうやらこれは誤り。

生薬のアロエは、アロエ・アフリカーナ(喜望岬蘆薈)の葉汁を煮詰めたもので、黒い塊。
ギリシャや欧州・中東では、紀元前から薬草として利用してきたようです。アリストテレスはアレクサンダー大王に、アロエの産地として知られるソコトラ島を領土にするよう進言したという逸話も。占領・・・したのかなぁ。

民間では、キダチアロエの葉汁をそのままか、あるいは葉をすりおろしたり、生のまま輪切りにして水で煮出した液を服用すると消化不良、胃炎などに効果。しかし、多量摂取は禁物。

火傷、傷、虫刺されには新鮮な葉を切り開いて、葉肉の透明なゼリー部分を貼りつけると効果。・・・なんですが、アフリカーナ以外は薬効成分は殆どないとの説もあり、あくまで民間療法のレベルと捉えるほうが良いみたいです。

でも、長い歳月「効く」とされてきたものですし、産地を占領しようというぐらいの信頼性は、科学データにあらわれない「力」があるの・・・かもしれませんね。

和漢三才図会には「苦くで黒い。なめてみて苦味ののちに甘みを感じるものがほんもの。ジャワや三仏斎(スマトラ南部にあった王国)のものは草に属し、カブトガニの尾のようだ」などの記述が見つかるのですが、文面から察するに、筆者の寺島良安先生、薬は見たことがあるものの、植物の実際は目にしていなかった様子。(ペルシャ産の「ほんものの」蘆薈を木だと思っている?)

和漢三才図会を読んでいて、いつも思うのは、江戸時代の中期の街のお医者さんなのに、外国の事もよく知ってるなーということ。日本人の好奇心は半端ないっすね!

苦味のあるものは、良い染料になることが多いので、頂いたキダチアロエの葉を煮出してみたところ、強い黄色の液となり、アルミで黄金色、銅でやや緑味の菜種油色、鉄で鶯茶。どれも堅牢。胃薬になるものは、総じて黄色の液になることが多いようである。

花言葉は、「健康」「万能」「苦痛」「悲嘆」「信頼」「迷信」
9/8, 9/11, 11/22, 12/20の誕生花。

◎参考サイト / 書籍

http://www.e-yakusou.com/
http://www.hana300.com
https://ja.wikipedia.org/wiki/アロエ
https://ja.wikipedia.org/wiki/アロエベラ
https://ja.wikipedia.org/wiki/キダチアロエ
http://chills-lab.com/flower/a-ra-08/

・「続々・草木染め 染料植物図鑑」 山崎青樹/ 著 美術出版社
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 82巻

(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房  禁転載

 





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2021/07/17

ゲットウ・香しき櫨色(はじいろ)

 

Getto01 Getto03
(写真出典   )


【学名】  Alpinia zerumbet (Pers.) B.L.Burtt and R.M.Smith,
      Alpinia speciosa K. Schum
【英名】  Chinese Fan Palm, Chinese Fountain Palm
【別名】  オオクマタケラン, サニン(砂仁)
【生薬名】 白手伊豆縮砂(しろていずしゅくしゃ)
      大草ずく(だいそうずく)=種子
【科】   ショウガ科

 

学名(シノニム)のspeciosaは「美しい、華やかな」の意。
和名は漢名の「月桃」をそのまま音読みしたもの。
インド原産。

九州南丹から、沖縄、、インドにまで分布する常緑多年草です。
このような温かい土地では、葉の鞘部を乾燥させて、マット、ロープ、
行李、草履表や漁網などをつくるために栽培され、それが一部で自生化しています。
葉を屋根葺きや壁に利用することもあるそうです。

葉はポリフェノールを多く含み、ノンカフェインなので、乾燥させたものを煎じてお茶にすると、美しい赤い煎じ液となり、良い香りと癖のない味で楽しめます。 
血液サラサラ、美肌に効果あり!また、葉には抗菌作用があるため、この辺が竹の皮を用いたように、食べ物を包むのに使われることもあったそうです。
現在でも沖縄では、伝統的な家庭で作るお菓子であるムーチー(餅)を包む葉と使用されています。

Getto02(写真出典)

全草が紙を作るときの補助原料にもなるというから、有用なことこの上なし。

秋に熟した果実から黒い種子を採り、日干しにして乾燥したものを生薬名で、白手伊豆縮砂(しろていずしゅくしゃ)、大草ずく(だいそうずく)と呼び、健胃薬として、1日量2~3グラムを粉末にして服用するとよいそうですよ。

沖縄地方では、民間療法として、毒虫に刺されたときには、根茎を切り火にあぶってから、患部に直接すり込むといいます。

葉からとれる油は、華やかな香りのアロマオイル。不安、緊張、迷いを解き放ち、集中力を高め、血圧を下げる効果があるとされ、虫よけ効果もあります。

亜熱帯でしか育たないのかと思いきや、逗子にお住まいの生徒さんのお庭で「わさわさ茂っていますよ」というので、分けていただきました。乾燥させてお茶にしたりしていたのですが、先日、友人の所有する美しいガラスの蒸留器を使って、蒸留するという幸運を得まして、いい香りのハーバルウォーターをつくりました!!

 Gettou05

染液は美しい茶味の赤。アルミ、すずで伽羅色(きゃらいろ)から櫨色 (はじいろ)、銅で枇杷茶色、鉄で海松色(みるいろ)

花言葉は「爽やかな愛」。7月5日の誕生花。


◎参考サイト / 書籍

https://www.weblio.jp/content/ゲットウ
http://www.e-yakusou.com
http://www.hana300.com/
http://botanic.seesaa.net/
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 3」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房

 

 

 

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2021/06/08

ローゼル・女神の情けの薄紫

Rosel02Rosel01 撮影:飯倉剛氏



【学名】   Hibiscus sabdariffa L. 
【別名】     ロゼリ草、ローゼリ草、レモネードブッシュ、
         Jamaica red sorrel, Indian red sorrel, jelly okra   
【科】      アオイ科 

 

アフリカ北西部原産。(インド、マレーシア という記述も)

別名に「jelly okra」とあるように、オクラと同じアオイ科。
葉に独特の粘液があります。花もよく似ています。

学名にあるHibiscus(ハイビスカス)は、エジプトの美の女神hibisと、ギリシャ語のisko(似ている)が語源といわれます。
花が美の女神に似る美しさであることを表しているそうです。

赤く熟した萼(がく)が「ハイビスカスティー」として利用されています。
クエン酸、ペクチンなどが豊富で風邪予防などに効果があるとされます。

イギリスのサイトには、萼をサラダとして生食、加熱してケーキの香りや色付け、ピクルス、ソース、ジェリーなど幅広く使う、などの記述が見つかります。若い葉もサラダで食べるらしいですよ。
また萼はペクチンが豊富なので、ジャムにも向いているらしいです。
薬効としては、萼の煎じ汁(お茶)は利尿、抗ウィルス、壊血病の治療などに効果。葉の粘り気は、軟膏の助剤として用いられる、とも。

ブラジルに移住した日系人の間では、梅干しを懐かしんで、このローゼルの実で “うめぼし”をつくるのだそうです。おお、ニッポンのソウルフード、梅干し! 梅が手に入らなくて、でもなんとか似たものを! と思ったのですねぇ。「花梅」の名で商品化もされています。

Rosel03 (写真出典)


蜜源の確保のために養蜂家・飯倉氏が育てたローゼルの乾燥した茎葉、萼(実)を分けていただく幸運を得ました。
萼の赤さはアントシアニンと思われます。
酢酸抽出でハイビスカスティーのような赤い染液にはなったものの、絹にけぶった薄紫を留めるのがやっとでした・・・。女神さん、出し惜しみますね。

アントシアニンの色の定着については研究の必要あり!

花言葉は、「新しい恋」 「常に新しい美」。 12/17の誕生花。
実は「乙女の真心」。(10/6の誕生果実)



◎参考サイト

http://ja.wikipedia.org/wiki/ローゼル
http://www.pfaf.org
https://world-diary.jica.go.jp/fukudayuko/culture/post_26.php
https://plaza.rakuten.co.jp/lilyandrose/diary/201312170000/  
http://www.hana300.com/

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2020/10/27

コブナグサ・輝く黄色はネクラの意地

Kobunagusa01 14_img_1(写真出典  )

【学名】  Arthraxon hispidus Mak.
【英名】  Jointhead arthraxon
【別名】  ハチジョウカリヤス(八条刈安)、カイナグサ(腕草)  
【生薬名】 藎草(じんそう)
【 科 】    イネ科 

山歩きの達人の工房の生徒さんが、白馬で見つけたというコブナグサをもってきてくださいました。

アジアの熱帯、日本では沖縄から北海道まで広く分布する一年草。コブナグサは「小鮒草」の意で、葉の形が鮒(フナ)のようであることから。別名をカリヤスと称することが多いのですが、正確には別物。
どちらも古くから鮮やかな黄色を染める染料として知られています。

鮮やかな黄色の地に赤や黒で格子縞を配した反物「黄八丈」の着物は、伊豆の八丈島の特産品。この黄八丈はコブナグサで染められており、そこから八丈刈安の名がつきました。
古くは武家大名や大奥の女中、裕福な町人などの間で愛好されていました。江戸時代後期には、庶民の手にも入るようになり、歌舞伎芝居「八百屋お七」の娘役などの衣装に用いられたことで大流行したそうです。当時の人気は大変なもので、江戸中の女性たちの、目の色が変わるほどだったと伝えられています。

和漢三才図会には、「多くを越前が産し、染物家の必用の物である。藎汁(コブナグサの煎汁)にミョウバンを加えて黄色に染めると色は脱けない。あるいは下に藍を染め、上から藎汁でもう一度染めると萌葱色になる」の記述が見当たります。
染料として使う場合は、初秋に穂の出かかったものを刈り取り、乾燥させれば、一年中染めることができます。

中国の古典「五経」のひとつ「詩経」の中に、
終朝采綠 不盈一匊
(朝じゅうコブナグサ(カリヤス)を摘めど 手のひら一杯に満たぬ )という詩があり、「緑」がコブナグサを示しているところが面白いです。

生薬では藎草(じんそう)といい、「いつまでもなおらぬ咳で上気しあえぐものを治す。また一切の悪瘡を洗うと効がある」(和漢三才図会)とか。

草で染色する場合は、染めたいものの重さと同量の染料を用意するのが常套なのですが、コブナグサは50%あれば、濃い黄色の煎汁が得られます。ミョウバン媒染で、黄八丈のメンツをかけたような鮮やかな黄色、銅媒染でも少し緑味の強い黄色、そして、鉄媒染では、透明感のある美しいうぐいす色を染め上げました。

花言葉が「やや暗い人」とは、その地味な見た目のせいでしょうか。・・・いやいや、見た目にごまかされてはいけませんね。 華は色に出ています。


◎参考サイト / 文献

http://www.city.takasaki.gunma.jp/docs/2015030300127/
https://ja.wikipedia.org/wiki/コブナグサ
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社
・「和漢三才図絵」第94巻 寺島良安 / 著

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2020/01/22

バタフライピー・瑠璃色の恋

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【学名】  Clitoria ternatea L.
【和名】    チョウマメ(蝶豆) 
【別名】  藍胡蝶(中国)、アンチャン(タイ)
【科】     マメ科 

昨年のカジュ祭。フードコートに出店をお願いした、鎌倉クルアノックのユキコさんは、例年通り、タイを中心にした様々なアジアごはんを独特のアレンジでたくさん出してくださいました。その中に、ひときわ目を引く瑠璃色の飲み物が!
「バタフライピーというお豆の、花びらのお茶なんですよ。東南アジアでは日常的に飲まれているんです。」

そ、染めてみたい・・・・っ!

そんな気持ちを見抜かれてか(笑)、ユキコさん、貴重な花びらのお茶を少し分けてくださいました。(感謝!! (T T)//)

南アジア原産。原産地では多年草ですが、日本では、冬の寒さで枯れてしまうため、一年草として扱います。
日本には、江戸時代・嘉永年間に入ってきたと言われていますが、和漢三才図会には記述は見つかりませんでした。

花には、青色色素「デルフィニディン」が含まれており、搾り汁を、菓子などの染料として使用したり、お茶にして飲んだり、さらには、黒髪の艶出し、白髪染めに使用したりすることで知られています。
搾り汁にライムやレモンをいれると紫色やピンク色などに変化します(!)。

根は、少し毒性を含むので注意。
現在は、日本でも園芸品種として人気があるほか、竹富島ではハーブとして栽培も行われています。

花の部分は、ブルベリー、ビルベリーなどと同じ抗酸化物質ポリフェノールの一種「アントシアニン」が多く含まれ、抗酸化作用による美容茶として、台湾などでは、女性に特に人気があります。
そのほか、血行促進し、冷え、眼精疲労の改善、血液中の血栓の解消、身体のむくみを取り除く効果なども期待できます。

ユキコさんにいただいた乾燥したお花。青や赤の染料には、熱を加えると色素が壊れてしまうものも多いのですが、「お茶にするときはガンガン煮出していますよ。」とユキコさんが言っていたので、通常の手順で煮出してみました。
20分も煮出すと、たいへん深い、それでいて、透明感のある青い液を得ました。まるで、正倉院に収められているペルシャ硝子の瑠璃色杯のようです。

どの媒染でもその透明感は維持しましたが、ウールや木綿には残念ながら青は染まりませんでした。(利休鼠麹塵山鳩色など)
が、絹にはその青の片鱗を留めることができました。
アルミ媒染がやや紫がかった藤鼠、どう媒染で桔梗鼠、鉄媒染で霞色

花言葉は「小さな恋」。


http://ja.wikipedia.org/wiki/チョウマメ
https://www.taiwanchakobo.jp/
https://harb-tea.com/what-is-butterfly-pea/
https://comedicplus.com/
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 3」 北隆館


 

(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房  禁転載

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2019/12/23

コスモス・突き抜けて黄海松茶色

  Cosmos    写真

【学名】  Cosmos Cav., Cosmos Cav.
【英名】  Cosmos 
【別名】  アキザクラ、オオハルシャギク
【科】   キク科 

メキシコ原産。ヨーロッパには18世紀後半にスペインを経由して広まったといわれています。
メキシコでは標高1600m以上の地域に自生するそうです。

明治12年に東京美術学校(東京芸大)の講師として赴任したラグーザが、イタリアから種を持ち込んだのが日本に渡来した最初とされますが、幕末説、明治29年説なども。
いずれにしても明治終わりには、日本全国で広まっていたと考えられます。

学名の属名cosmosはギリシャ語で「秩序」「調和」「美」「装飾」などの意味があります。調和のとれた花の様子が命名の背景なのでしょう。「宇宙」の語源となったのも、このあたりの意味からか。いや、宇宙のほうが先ですね。

日が短くなると花芽をつける短日植物なので、かつては夏にタネをまき、秋に花を楽しむものでした。
しかし、近年は、それほど日の長さに影響されずに開花する早生品種が主流になり、春にタネをまいて夏から開花を楽しむケースが増えているそうです。
ただし、秋にならないと開花しない晩生品種を早い時期にタネまきすると、開花する秋までに草丈が高くなりすぎるので、8月に入ってからまきましょう(NHK趣味の園芸先生談)。

花が食用になることは、あまり知られていない模様。食用菊のように生でサラダに散らすほか、ゆでた花びらを絞ってゼリーをつくる、スピリット系の酒に混ぜてカクテルにする、ジャムにする、などの記述が見つかります。これは楽しそうです!

多くの歌人、俳人が好んで題材としています。歌謡曲にも名曲がありますね。

コスモスや風に吹かれた明らかに  (高浜虚子)

コスモスの夜の花びら冷えわたり  (中村汀女)

心中をせんとなけるや雨の日に白きコスモス紅きコスモス                     
                                                         (与謝野晶子)   

筋金入り登山ガールの教室の生徒さんが、わざわざ白山近辺にたくさん咲いていたという、コスモスを、秋口に届けてくださいました。
残念ながら、少し日が経って、傷み始めてしまったのですが、それでもアルミで黄朽葉色 (きくちばいろ)、銅で青朽葉 (あおくちば)、鉄で黄海松茶 (きみるちゃ)

俳諧では秋の季語。                 
花言葉は、「調和」「乙女の純真」(全般)。
「優美」「美麗」(白)。「乙女の愛情」(赤)。「乙女の純潔」(ピンク)。
「野生の美しさ 」(黄)。 ※キバナコスモスは別種「恋の終わり」(茶)。
9/27の誕生花。

<<特別付録・関東エリアのコスモスの名所>>
鬼怒グリーンパーク   【栃木県】
吹上コスモス畑   【埼玉県】
あけぼの山農業公園 【千葉県】
昭和記念公園    【東京都】
くりはま花の国  【神奈川県】
山中湖 花の都公園   【山梨県】

◎参考サイト /文献

http://www.e-yakusou.com/
http://ja.wikipedia.org/wiki/コスモス
https://lovegreen.net
https://www.jalan.net
https://www.shuminoengei.jp
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「食べられる野生植物大図鑑」 橋本郁三 / 著 柏書房

 (C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房  禁転載

 

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2019/10/21

玉楠(タブノキ)・ハマとペリーと路考茶色

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【学名】  Machilus thunbergii
【別名】  イヌグス, タマグス, ナンタブ  
【生薬名】 楠(なん) 
【科】     クスノキ科 

本州から沖縄、朝鮮半島南部、中国に分布する常緑高木。
神社などに鎮守木として植えられることも多いです。

艶のある細長い葉は、裏が白っぽいのが特徴。夏に黄色の小花をつけ、その後に着く小さな丸い実は秋には黒紫になります。
和漢三才図会には、「船舶に多く使われる」という記述があり、実際、タンニン質を多く含むことから水に強いことが知られていたのでしょう。

名前の由来は、朝鮮語で丸木舟を意味するtong-baiが訛った、霊が宿る木とされていたことから、「霊(たま)の木」と呼ばれ、それがしだいに訛った、など諸説あります。

八丈島でつくられる織物「黄八丈」は黄色のものが有名ですが、江戸時代は鳶色や黒のものもありました。その鳶色や黒の染料としても、タブノキは用いられていたらしいです。水に強い特性を生かして漁網を染めるのにも使われました。

和漢三才図会にはほかに「肌理(きめ)が細かく錯縦(たてまじり)の文章(もよう)が多いので「樟」といい、彫刻するのによい」という記述も見当たります。

生薬では樹皮を天日干しして粉にしたものを「楠(なん)」といいます。これを塩と水で練ったものを塗ると、脚のひきつれや水腫を治すといわれています。またこの粉を水で練ったものを線香の材料としたり、もち粉と混ぜて食用にしたりしたそうです。

横浜開港資料館には「玉楠の木」と呼ばれる文化財指定のタブノキが中庭に保存されています。
1859(安政6)年、横浜は開港場となりました。ペリーが上陸した場面を随行画家ヴィルヘルム・ハイネが描いた絵には、この玉楠の木が描かれているのです。
Tamakusu03

浮世絵や写真にも残っています。(横浜開港資料館HPより)
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その後火災にあいながらも、明治期はイギリス領事館敷地内で、その後も震災や戦争をくぐり抜け、歴史の生き証人として、現在も元気にしています。
この話を耳にして以来ずっと、この木を染めてみたいなぁぁと思っておりました。この9月、思い切ってお電話したところ、ご厚意で、玉楠の木の枝葉を拾わせていただける幸運を得ました。(さすがに切るのはちょっと・・・ということで。)

だいぶ雨風にさらされていた枝葉だったようで、色は薄めでしたが、アルミで白つるばみ、銅で亜麻色から鶯茶、鉄の路考茶が美色。  
生葉、生枝ならば、鳶八丈や黒八丈の色も十分出たに違いありません。

花言葉は「威厳」「高潔」。9/25の誕生樹。


◎参考サイト / 文献
http://www.hana300.com/
http://www.e-yakusou.com/
http://ja.wikipedia.org/wiki/タブノキ・http://www.kaikou.city.yokohama.jp/guide/tamakusu.html
https://blog.goo.ne.jp/utsumiseikanosegaredesu/e/6dc8bd722b5b8a130608566828968602

・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社
・「和漢三才図絵」 第82巻 寺島良安 / 著

 

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2019/09/18

セイヨウニンジンボク・アブラハムの香油は藍媚茶

Seyoninjinboku01 Seyoninjinboku_t0-2 写真右 撮影 : 玉木ゆう子

【学名】   Vitex agnus-castus   ※Vitex cannabifolia(ニンジンボク)
【英名】   Ghaste tree, Chasteberry, Abraham's balm, Monk’s pepper
【別名】   イタリアニンジンボク、なまえの木
【生薬名】  牡荊(ぼけい) 
【科】     シソ科 (クマツヅラ科) 

南ヨーロッパ、西アジア原産。
学名のVitexはラテン語の「vieo=結ぶ」の意味で、この植物でかごを編んだことに由来するといいます。agnusは「神の子羊」、castusは「汚れない」「信仰深い」の意味。

英語名に「アブラハムの香油」とあるところからも、西欧では古い時代から香料、薬、香辛料に用いてきた歴史が伺えます。コショウの代用品として使われたことがMonk’s pepperの由来でしょうか。

日本には江戸時代に中国からニンジンボクが伝わってから、各地で自生するようになりました。
和漢三才図会には、ニンジンボクの木の枝で刑杖(棒で背中や臀部を打つ体罰につかう棒)を作ったという記述があります。硬さがちょうどいいとか? 叩くといい匂いがして罪が清められたとか??  どんな棒か見てみたいですねぇ。そしてセイヨウニンジンボクは明治時代に渡来しました。これで明治政府が体罰用の棒を作ったということはなさそう(笑)。

イギリスのサイトによれば、古くから高い薬効が認められ、近年ではその効能の多くが科学的にも証明されているそうです。中でも特に女性ホルモンの働きのバランスを整える効能で知られています。ドイツでは月経前症候群 (PMS) の症状の治療薬として正式に認可されています。 また民間では堕胎薬として用いられていた歴史もあるとか。

中医学ではニンジンボクは総称して「牡荊」といわれ、茎葉、根、実、いずれも用います。婦人病、不眠、に効果。経絡を開く作用があるとされます。和漢三才図会には「牡荊子(ぼけいし=実)は骨間の寒熱を除き、胃の気をよく通す。 咳を止め、気を下す。炒り焦がして粉末にし飲服すれば、心痛および婦人のこしけを治す。」とあります。

6月にみちくさ部長ハーブ王子に引率していただき、北鎌倉を散策した時、個人宅のお庭に植えられたセイヨウニンジンボクがきれいな紫の花を咲かせているを見つけました。ハーブ王子のお話では、セイヨウニンジンボクは、古代エジプトでミイラをつくるときに防腐剤として使われたということです。お茶にして飲んだら、老けないかしらん。

香料に用いられるだけあり、貰い受けた枝葉を煮出すと、キク科の植物に近い芳香の中に、華やかな甘さのある香りが立ち込めました。うーん、どこかで嗅いだ香りなんだけど、思い出せない・・・。漢方な感じは間違いなくするのですが。
黒黒しい染液となり、どれも渋みときつみの利いた堅牢な色合い。
アルミで菜種油色から鶯色、銅で鶯茶、鉄で藍媚茶。花の咲く前であれば、もうひと色明るくなるものと思われます。
花言葉は、「思慕」 「純愛」 「才能」 。7月22日の誕生花。

◎参考サイト /文献

http://ja.wikipedia.org/wiki/セイヨウニンジンボク
http://ja.wikipedia.org/wiki/ニンジンボク
http://www.zoezoe.biz/
http://search.eisai.co.jp
http://www.pfaf.org
https://www.language-of-flowers.com
http://gkzplant2.ec-net.jp/
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 2」 北隆館
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 第84巻

 

 (C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房  禁転載

 

 

 

 

 

 

 

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2019/09/17

バジル・偉大なる青白つるばみ

Basil (写真出典)

【学名】  Ocimum basilicum L.(スイートバジル) 
      Ocimum tenuiflorum(ホーリーバジル)
【英名】  Bazil
【別名】  メボウキ、カミメボウキ(ホーリーバジル)
【生薬名】 羅勒(らろく)
【科】   シソ科 

インド原産で、アジア南部、中東などに分布する多年草。ですが日本では越冬できないため一年草として扱われるのが一般的です。

学名のOcimumはギリシャ語の「okimon(香りを楽しむ)」が語源、basilicumは同じくギリシャ語のbasilikos (王室の) が語源です。「香り高き王族」といったところでしょうか。そんな由来からか、ギリシャにはバシレイオス(Basileios)という男性名が多く存在します。歴史上の偉人にもその名は見られ、たとえば、ギリシャ正教の教父で日本では「大バシリウス(バシレイオス)」の名で親しまれている聖人は、英語圏ではSt.Basil the Great と言われています。この大バシリウスさん(カトリック教徒では聖バジリオ)、4世紀にカッパドキア(現トルコ内)に実在した神学者で、三位一体論を確立しただけでなく、ハンセン病患者を含む病人の救済(当時は考えられないこと!)、貧民、孤児の救済などの福祉事業に大きく貢献したことで知られています。

キリスト復活ののち、イエスの墓のまわりにバジルが植えられたという伝説もあるそうで、ギリシャでは、キリストが磔になったゴルゴダの丘に生えていたバジルをハレナ女帝(コンスタンティヌス1世の母太后・聖ヘレナのことか?)が、ギリシャに持ち帰ったとされています。そこから食用、薬になったとなれば、名前に「王」の意味を持つもの納得ですね。ギリシャ正教会のなかには、今でも聖水を調合するのにバジルを使い、さらに聖壇をバジルで飾っているところもあるそうです。

インド、ネパール地方では、ホーリーバジルは聖なるハーブ “ツラシ” として知られ、アーユルヴェーダ医学では重要な薬草として扱われ、宗教的にはヴィシュヌ神、クリシュナ神、シヴァ神に捧げられる供物にもなるそうです。
ホーリーバジルはタイ料理にも欠かせませんよね。

日本には中国経由で江戸時代に入ってきました。葉より、黒い種を薬として重用したようです。種を目の中に入れると、水分を吸って蛙の卵のように寒天状に膨れて目のゴミを拭い去ったことから、「目の箒(ほうき)」の意味でメボウキの和名が付けられたそうです。この種を特に生薬では「羅勒子(らろくし)」と呼びます。

和漢三才図会には「3月頃植えるとよい。魚のアラ汁、米のとぎ汁、溝の泥水などを肥料にすると香りがでてよいが、糞尿をやるのはよくない。乾いた種子を用いて目のかすみ、塵が目に入ったものを治す。3〜5粒を目の中に入れると、湿り膨れて塵と一緒に出てくる。目はちょっとの塵が入ってもころころするのにこの種子なら何の妨げにもならないのはひとつの不思議である。」という記述がみつかります。現在ではバジルシードと呼ばれアジアンスイーツに用いられることも多いです。

地中海料理では葉を用いたジェノベーゼソース(バジルペースト)が知られています。カジュの畑でも毎年植えていて、バジルペーストをつくるのが夏の何よりの楽しみです。

葉は生食または乾燥したものをお茶として服用すると、抗鬱、殺菌、鎮痙、解熱、食欲増進、制吐、副腎皮質刺激、去痰発熱性疾患(風邪、インフルエンザ)、食欲不振、嘔吐、腹痛、胃腸炎、偏頭痛、不眠、倦怠、疲労に効能。外用ではニキビ、嗅覚欠損、虫刺され、ヘビの咬傷、皮膚感染症に効くとされています。日本では虫に食われやすいバジルは、トマトのそばに植えると虫食いになりません。

収穫後の夏の終わりに、畑に残った茎と根を煮出してみました。どの色もすべてを終えた命の末期を思わせる静かな色合いで、アルミで蒸栗色(むしぐりいろ)、銅で鶸茶色(ひわちゃいろ)、そして鉄で出た青白橡色(あおしろつるばみいろ)が実にクール。

夏真っ盛りの時期に葉ごとに出せば、もっと強い色合いになったことでしょう。

花言葉は「好意」「好感」「神聖 」「高貴」「良い望み」「強壮」
「憎しみ」「 何という幸運」 。
1/25 6/24 7/22 10/15の誕生花。


参考文献 / サイト

http://ja.wikipedia.org/wiki/バジル
http://ja.wikipedia.org/wiki/メボウキ
https://www.hana300.com
http://www2u.biglobe.ne.jp/~simone/more/pan/basil.htm
https://idun.exblog.jp/2280064/
https://www.takeda.co.jp/kyoto/area/plantno49.html
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 第99巻

 

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2019/09/12

ジュズダマ・ロザリオは璃寛茶

Juzudama01Jobs-tears (写真右→出典)

【学名】  Coix lacryma-jobi
【英名】  Job's tears
【別名】  ズズゴ、トウムギ(唐麦)、カワジュズ
【生薬名】 川穀(せんこく)/川穀根(せんこくこん) 
【科】     イネ科 

インドなどの熱帯アジア原産。水辺に生息する一年草です。
日本では稲作以前に食用としていて、稲作の伝来とともに栽培されなくなり野生化したという説があります。縄文人の主食の一つ、ということでしょうか。もともと自生していたものを縄文人が栽培していたのかもしれませんね。

学名のlacrymaはラテン語で『涙」を意味し、jobiは旧約聖書のヨブを指しています。それが英語名にも反映されていて、ジュズダマは欧米では「ヨブの涙』と呼ばれています。
ヨブ記は、神に信仰を試され数々の苦難に合い、それを乗り越えて神に祝福されるヨブの物語。このヨブさん、試練に合うたびにわんわん泣いて、最終的に「よく耐えた」と神様に褒めてもらって幸せになり、またまた号泣したという涙まみれの男。その涙、涙のヨブの物語を、涙型のジュズダマの実に連想したのでしょうか。
<<ヨブ記16章20節>>
わたしの友はわたしをあざける、しかしわたしの目は神に向かって涙を注ぐ。


そんなわけで、ヨーロッパの修道院では、この「ヨブの涙」でロザリオをつくるそうですよ。インドで貧しい人々の終末医療に身を捧げたマザー・テレサの愛用のロザリオも、ヨブの涙だったそうです。

でも、もともとジュズダマはヨーロッパにはなかったはず・・・はて。

日本を含めた東アジア各地では、このジュズダマをつないで子どもたちが首飾りや腕輪をつくる伝統的遊びがあります。これを布教のためにアジアにやってきた修道士たちが見て、涙型のジュズダマに「ヨブの涙」連想してロザリオに用い始めたのではないか・・・と推察しますが、いかがでしょう。
日本では、その名もジュズダマなので、仏教の念珠にあるかしらと探してみましたが、ムクロジはありますが、ジュズダマ製のものは見つかりませんでした。子供の遊びで終わっているようです。あまりに身近にたくさんあるものは、ありがたみを逆に感じないのかもしれませんね。

ちなみに、lacryma(ラクリマ)で思い出しましたが、ご存知ONE PIECEのドレスローザ編でヴィオラが繰り出す必殺技は「イエロ ラグリマ、目くじら!」。(で、目からクジラの形をした涙を出して、敵をやっつけちゃう) Lágrimaはスペイン語の「涙」。ラテン語圏、似ています。Hierroはラテン語でもスペイン語でも「鉄の」の意味。 鋼鉄の涙攻撃だったのか。
すみません、脱線しました。
Hierro_lacryma

ヨクイニン(薏苡仁)の名で知られるハトムギは近種。和漢三才図会には「薏苡には二種類あって、一種は殻が薄くて米が多く(ハトムギ)、一種は殻が厚く硬くて米は少なくて念珠にするとよい(ジュズダマ)」という記述が見つかります。

種子を採取日干しにして乾燥させたものを、生薬で川穀(せんこく)、また秋に根を掘り上げて、水洗い、日干しにしたものを、川穀根(せんこくこん)といいます。煎じて服用するとリウマチ、神経痛、肩こりに効果。健胃、解熱、利尿、解毒の効果があります。
慢性胃腸病、かいよう、下痢、リューマチ、神経痛、水腫、こしけ、イボとりや美肌保全にも高い効果を発揮するハトムギには及びませんが、ジュズダマを殻ごと砕いて代用にする、という記述も見当たります。

常磐にお住まいのYさんのお宅で、今年は一際ジュズダマがよく茂っているとお聞きし、まだ緑色の実がたわわについている茎葉を少し分けていただきました。
煮出すと、トウモロコシやエダマメを煮ているようなほっこりした香りが漂い、液はきれいな黄色に。
アルミで柔らかな淡黄色、鉄で海松色(みるいろ)、銅で得た力強い璃寛茶 (りかんちゃ)が特筆すべき美色。

花言葉は「祈り」「恩恵」「成し遂げられる思い」。
秋の季語。10/10・10/11・11/9の誕生花。


参考サイト / 文献

http://www.hana300.com/
http://www.e-yakusou.com/
http://ja.wikipedia.org/wiki/ジュズダマ
http://www.hanakotoba.name/
https://rosary-francesca.com/note/catholic/jobs-tears/
https://pfaf.org
・「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著 家の光協会
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢三才図絵」第103巻 寺島良安 / 著


 

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