鎌倉染色彩時記(染)

2019/09/18

セイヨウニンジンボク・アブラハムの香油は藍媚茶

Seyoninjinboku01 Seyoninjinboku_t0-2 写真右 撮影 : 玉木ゆう子

【学名】   Vitex agnus-castus   ※Vitex cannabifolia(ニンジンボク)
【英名】   Ghaste tree, Chasteberry, Abraham's balm, Monk’s pepper
【別名】   イタリアニンジンボク、なまえの木
【生薬名】  牡荊(ぼけい) 
【科】     シソ科 (クマツヅラ科) 

南ヨーロッパ、西アジア原産。
学名のVitexはラテン語の「vieo=結ぶ」の意味で、この植物でかごを編んだことに由来するといいます。agnusは「神の子羊」、castusは「汚れない」「信仰深い」の意味。

英語名に「アブラハムの香油」とあるところからも、西欧では古い時代から香料、薬、香辛料に用いてきた歴史が伺えます。コショウの代用品として使われたことがMonk’s pepperの由来でしょうか。

日本には江戸時代に中国からニンジンボクが伝わってから、各地で自生するようになりました。
和漢三才図会には、ニンジンボクの木の枝で刑杖(棒で背中や臀部を打つ体罰につかう棒)を作ったという記述があります。硬さがちょうどいいとか? 叩くといい匂いがして罪が清められたとか??  どんな棒か見てみたいですねぇ。そしてセイヨウニンジンボクは明治時代に渡来しました。これで明治政府が体罰用の棒を作ったということはなさそう(笑)。

イギリスのサイトによれば、古くから高い薬効が認められ、近年ではその効能の多くが科学的にも証明されているそうです。中でも特に女性ホルモンの働きのバランスを整える効能で知られています。ドイツでは月経前症候群 (PMS) の症状の治療薬として正式に認可されています。 また民間では堕胎薬として用いられていた歴史もあるとか。

中医学ではニンジンボクは総称して「牡荊」といわれ、茎葉、根、実、いずれも用います。婦人病、不眠、に効果。経絡を開く作用があるとされます。和漢三才図会には「牡荊子(ぼけいし=実)は骨間の寒熱を除き、胃の気をよく通す。 咳を止め、気を下す。炒り焦がして粉末にし飲服すれば、心痛および婦人のこしけを治す。」とあります。

6月にみちくさ部長ハーブ王子に引率していただき、北鎌倉を散策した時、個人宅のお庭に植えられたセイヨウニンジンボクがきれいな紫の花を咲かせているを見つけました。ハーブ王子のお話では、セイヨウニンジンボクは、古代エジプトでミイラをつくるときに防腐剤として使われたということです。お茶にして飲んだら、老けないかしらん。

香料に用いられるだけあり、貰い受けた枝葉を煮出すと、キク科の植物に近い芳香の中に、華やかな甘さのある香りが立ち込めました。うーん、どこかで嗅いだ香りなんだけど、思い出せない・・・。漢方な感じは間違いなくするのですが。
黒黒しい染液となり、どれも渋みときつみの利いた堅牢な色合い。
アルミで菜種油色から鶯色、銅で鶯茶、鉄で藍媚茶。花の咲く前であれば、もうひと色明るくなるものと思われます。
花言葉は、「思慕」 「純愛」 「才能」 。7月22日の誕生花。

◎参考サイト /文献

http://ja.wikipedia.org/wiki/セイヨウニンジンボク
http://ja.wikipedia.org/wiki/ニンジンボク
http://www.zoezoe.biz/
http://search.eisai.co.jp
http://www.pfaf.org
https://www.language-of-flowers.com
http://gkzplant2.ec-net.jp/
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 2」 北隆館
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 第84巻

 

 (C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房  禁転載

 

 

 

 

 

 

 

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2019/09/12

ジュズダマ・ロザリオは璃寛茶

Juzudama01Jobs-tears (写真右→出典)

【学名】  Coix lacryma-jobi
【英名】  Job's tears
【別名】  ズズゴ、トウムギ(唐麦)、カワジュズ
【生薬名】 川穀(せんこく)/川穀根(せんこくこん) 
【科】     イネ科 

インドなどの熱帯アジア原産。水辺に生息する一年草です。
日本では稲作以前に食用としていて、稲作の伝来とともに栽培されなくなり野生化したという説があります。縄文人の主食の一つ、ということでしょうか。もともと自生していたものを縄文人が栽培していたのかもしれませんね。

学名のlacrymaはラテン語で『涙」を意味し、jobiは旧約聖書のヨブを指しています。それが英語名にも反映されていて、ジュズダマは欧米では「ヨブの涙』と呼ばれています。
ヨブ記は、神に信仰を試され数々の苦難に合い、それを乗り越えて神に祝福されるヨブの物語。このヨブさん、試練に合うたびにわんわん泣いて、最終的に「よく耐えた」と神様に褒めてもらって幸せになり、またまた号泣したという涙まみれの男。その涙、涙のヨブの物語を、涙型のジュズダマの実に連想したのでしょうか。
<<ヨブ記16章20節>>
わたしの友はわたしをあざける、しかしわたしの目は神に向かって涙を注ぐ。


そんなわけで、ヨーロッパの修道院では、この「ヨブの涙」でロザリオをつくるそうですよ。インドで貧しい人々の終末医療に身を捧げたマザー・テレサの愛用のロザリオも、ヨブの涙だったそうです。

でも、もともとジュズダマはヨーロッパにはなかったはず・・・はて。

日本を含めた東アジア各地では、このジュズダマをつないで子どもたちが首飾りや腕輪をつくる伝統的遊びがあります。これを布教のためにアジアにやってきた修道士たちが見て、涙型のジュズダマに「ヨブの涙」連想してロザリオに用い始めたのではないか・・・と推察しますが、いかがでしょう。
日本では、その名もジュズダマなので、仏教の念珠にあるかしらと探してみましたが、ムクロジはありますが、ジュズダマ製のものは見つかりませんでした。子供の遊びで終わっているようです。あまりに身近にたくさんあるものは、ありがたみを逆に感じないのかもしれませんね。

ちなみに、lacryma(ラクリマ)で思い出しましたが、ご存知ONE PIECEのドレスローザ編でヴィオラが繰り出す必殺技は「イエロ ラグリマ、目くじら!」。(で、目からクジラの形をした涙を出して、敵をやっつけちゃう) Lágrimaはスペイン語の「涙」。ラテン語圏、似ています。Hierroはラテン語でもスペイン語でも「鉄の」の意味。 鋼鉄の涙攻撃だったのか。
すみません、脱線しました。
Hierro_lacryma

ヨクイニン(薏苡仁)の名で知られるハトムギは近種。和漢三才図会には「薏苡には二種類あって、一種は殻が薄くて米が多く(ハトムギ)、一種は殻が厚く硬くて米は少なくて念珠にするとよい(ジュズダマ)」という記述が見つかります。

種子を採取日干しにして乾燥させたものを、生薬で川穀(せんこく)、また秋に根を掘り上げて、水洗い、日干しにしたものを、川穀根(せんこくこん)といいます。煎じて服用するとリウマチ、神経痛、肩こりに効果。健胃、解熱、利尿、解毒の効果があります。
慢性胃腸病、かいよう、下痢、リューマチ、神経痛、水腫、こしけ、イボとりや美肌保全にも高い効果を発揮するハトムギには及びませんが、ジュズダマを殻ごと砕いて代用にする、という記述も見当たります。

常磐にお住まいのYさんのお宅で、今年は一際ジュズダマがよく茂っているとお聞きし、まだ緑色の実がたわわについている茎葉を少し分けていただきました。
煮出すと、トウモロコシやエダマメを煮ているようなほっこりした香りが漂い、液はきれいな黄色に。
アルミで柔らかな淡黄色、鉄で海松色(みるいろ)、銅で得た力強い璃寛茶 (りかんちゃ)が特筆すべき美色。

花言葉は「祈り」「恩恵」「成し遂げられる思い」。
秋の季語。10/10・10/11・11/9の誕生花。


参考サイト / 文献

http://www.hana300.com/
http://www.e-yakusou.com/
http://ja.wikipedia.org/wiki/ジュズダマ
http://www.hanakotoba.name/
https://rosary-francesca.com/note/catholic/jobs-tears/
https://pfaf.org
・「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著 家の光協会
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢三才図絵」第103巻 寺島良安 / 著


 

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2019/08/25

ミント・呪いは美しき岩井茶色

Spearmint01 (スペアミント)

【学名】  Mentha spicata L.(スペアミント)
        Mentha x piperita L. (ペパーミント=セイヨウハッカ)
      Mentha canadensis L. var. piperascens,
          Mentha arvensis var.piperascens (和ハッカ)
      Mentha japonica(ヒメハッカ)
【英名】  Mint
【別名】  オランダハッカ(スペアミント)、チリメンハッカ(スペアミント)
【生薬名】 薄荷(はくか=和ハッカ)薄荷葉(はっかよう)
【科】    シソ科

古くからハーブとして用いられているミント。葉の小さいペパーミント、葉が大きく縮れているスペアミントなどいろいろな種類があります。
スペアミントはペパーミントよりよりもハーブとして用いられた歴史は古いそうです。
聖書でハッカとされている植物はスペアミントの一種ともされるナガバハッカ(Mentha longifolia)とされています。

学名の「Mentha(メンタ)」は、ギリシア神話に登場し、呪いによりミントに姿を変えたメンテ(Menthe)の名に由来。

<<ギリシャ神話・メンテの逸話>>
冥界の王ハーデースは、ニンフのメンテの美しさに心を奪われる。それを知った妻のペルセポネーは「お前などくだらない雑草になってしまえ」とメンテに呪いをかけてしまう。それ以来この草は「ミント」と呼ばれ、ハーデースの神殿の庭で咲き誇り続けた。地上でも芳香を放ち、人々に自分の居場所を知らせるのだという。

日本には在来種である和ハッカがあります。スペアミントは江戸時代にオランダから伝わったため、オランダハッカと呼ばれていました。

和ハッカについて和漢三才図会には「薄荷は猫の酒である」という面白い記述が見つかります。猫が食べると酔うのでしょうか・・・?試したらまずいでしょうね・・・。

生薬では薄荷葉(はっかよう)。中枢抑制、血管拡張などの効果があり、芳香性健胃、かぜの熱、頭痛、めまい、消化不良、歯痛などに効能。スペアミントでも同様の効能が期待できます。

メントールの含有量は和ハッカが一番多いと言われ、「農業全書」には、和ハッカの栽培の記述があります。
文化14年(1817年)には、岡山で盛んに栽培されたとされ、その後、広島、山形、北海道などと全国で栽培されて、昭和の始めには、世界のハッカの生産量のほとんどは、メントールを多く含む日本産だったといいます(!)
その後、合成メントールが開発され、日本産の天然メントールの輸出の必要が無くなり、主力輸出品目ではなくなりました。残念ですね。来年の畑ではぜひ和ハッカの栽培に挑戦したいと思います。

スペアミントは、メントールの含有量は他のミントに比べ少ないですが、チューインガムの生産のため、今でもアメリカで大量に栽培されています。

鎌倉の野原でも、昨今スペアミントをよく見かけます。たいへん繁殖力旺盛で、夏の間は散歩のついでに摘んで、よくサンティーなどを作ったりしていましたが、今まで染めたことはありませんでしたので、この夏、初めて煮出してみました。すっきりとした涼しい香りが漂って(染場は暑かったですけどね・・・)、濃いうぐいす色の液になりました。

アルミ媒染でカナリヤ色、銅で市紅茶(しこうちゃ)、鉄で岩井茶。どれも透明感があり、堅牢です。

花言葉はミント全般では「美徳」「効能」 。スペアミントでは「あたたかな感情」。
3/16、7/21、12/21の誕生花。

◎参考サイト/文献◎

http://ja.wikipedia.org/wiki/スペアミント
http://ja.wikipedia.org/wiki/ニホンハッカ
http://ja.wikipedia.org/wiki/ペパーミント
http://www.e-yakusou.com
https://hananokotoba.com
http://www.hana300.com
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 2」 北隆館
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 3」 北隆館
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第93巻
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社

(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房  禁転載

 

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2019/07/20

カジノキ・押しも押されぬカミサマ色

Kaji02 Kaji03

【学名】  Broussonetia papyrifera    
【英名】  Spearmint
【別名】  ノロカジメ、アマタ、イヌタ
【生薬名】 楮実(ちょじつ)、楮桃、穀実(こうじつ)
【科】     クワ科

学名の「papyrifera」は、「紙をもった」の意。実際コウゾの仲間で、古い時代においては、ヒメコウゾとの区別が余り認識されておらず、現在のコウゾはヒメコウゾとカジノキの雑種といわれています。

また、江戸時代にシーボルトもこの両者を混同してヨーロッパに報告したために、今日のヒメコウゾの学名が「Broussonetia kazinoki」となってしまっているそうです。

古代より、神道では神聖な木とされ、諏訪神社の家紋にも用いられています。
Kaji09(鎌倉市玉縄にある諏訪神社のお正月祭事にて)

平安期には七夕行事において、カジノキの葉っぱ7枚に願い事を書く習慣がありました。これが現在、笹に短冊を飾る風習のもととなっています。
紙が高級品であった平安期、この大きな葉は、お習字の練習に使われていたんだそうです。短冊を飾るのは、文字の上達を願うという意味もあるそうです。

鎌倉鶴岡八幡宮の七夕祭事では、カジの葉っぱをかたどった短冊に願い事を書くことができると聞き、7月7日に、どれどれ、とでかけてみました。あ、ホントだ。
Kaji04

せっかくなので、一つ求めてお願い事を書いてきました。
ピンクと緑2枚で一組のカジの葉短冊は、一組ずつ、撚っていない麻の繊維でくくられています。
舞殿の周りに設けられた、お納めする結び処には、本物の梶の葉もくくってあります。
Kaji07 Kaji06

舞殿の脇に、梶の木があって、実がついていました。
ちょうど、神事に使われるのでしょう、神官さんたちが葉をとっておられました。
Kaji01

ちなみに、七夕飾りの「吹き流し」は、織姫が機織りに使う糸を表していて、機織り、裁縫などがうまくなりますように、という願いが込められているそうです。
Kaji05

和漢三才図会には「楮(こうぞ)」の項目に「穀(こう)と楮(ちょ)は同一種で枝葉もよく似ており、はっきりと区別することはできない」とあります。おそらく、ヒメコウゾとカジノキではないかと思います。さらに「皮をはぎ、搗いて煮て紙に造る。またつむぎ練って布につくる」とも。

生薬としても用いられていたようで、楮実・楮桃の名で「精力萎縮・水腫を治す。気を益し、肌を充実させ、目を明らかにする。長らく服用すると飢えず老いず、筋骨を壮健にして虚労を補う。」とあります。使えるな、カジノキ。

八幡宮の木から試染用に葉っぱをいただくのは無理そうだわね・・・。こりゃやっぱりどこかで調達してこなきゃ・・・とつぶやいてみたら、なんと、お庭に植わっているという大和市の方が、わざわざ送ってくださいました。(感謝!!)

どうやら雌の木。枝葉を煎じたところ、生薬の効能を反映するような濃い液となり、どの媒染でも、冴えわたった強い色を得ました。
すず媒染で鮮やかな山吹色、銅で鶯茶、鉄では冴え冴えした緑味の黒

コウゾの花言葉は「過去の思い出」 。カジノキも、紙の材料となり記録を留めたという点で、同じ花言葉と考えよいのでは。コウゾの季語は仲夏ですが、「梶の葉」では秋。

◎参考サイト / 文献◎
http://ja.wikipedia.org/wiki/カジノキ
https://hananokotoba.com
http://www.hana300.com
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 2」 北隆館
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第84巻
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店

 (C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房  禁転載

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2019/03/18

ユズ・お肌すべすべのカナリヤ色

Yuzu01

【学名】   Citrus junos
【英名】   yuzu
【別名】   ユ、ユウ、ユノス
【科】    ミカン科

中国揚子江上流の原産。
ホンユズは、奈良時代にはすでに渡来しており、平安時代には栽培していた記録が残っています。
対してハナユズは、日本原産であるといわれますが、定かではありません。

古名「ユノス」は、果汁を酢の代わりに用いたことから「柚の酸(ゆのす)」といわれたことに由来するそうです。これがそのまま、学名となりました。現在の「ユズ」も「柚酸」からきています。

和漢三才図会には、「柚の実は食を消化し、酒毒を解し、妊婦で食欲のないのを治す。柚の皮は気を下し、隔(胸部)を快くし、痰をなくし、憤懣(ふんまん)の気を散じさせる。」とあります。確かに、ユズの芳香には、気持ちを落ち着ける効果があるように思います。オレンジのような甘さはなく、レモンほど強い酸味は感じさせない、まさしく、和のすっきり系トップノート。

果実には、ビタミンC、クエン酸、酒石酸を含み、果皮には、ピネン精油、シトラール、リモーネンを含みます。果肉、果汁を肌につけてこすると、ひび、あかぎれ、しもやけなどの肌荒れを改善。 冬至に柚子風呂をたくのは、風邪予防、血行を促進して、神経痛や冷え性を改善、などの他、この、肌荒れ対策の意味もあるようです。リウマチには、種を黒焼きにしたものに熱湯を注いで飲むと良い、という記述も見当たります。種のぬめりに肌荒れを防ぐ薬効が特に多いといわれます。

<<ユズの種の化粧水>>※ご使用前にパッチテストしてください。
◆材料◆
・ゆずの種(洗ってないもの、ぬめりを取らないことが大切!)
・ゆずの種の3〜10倍量の焼酎(35度)
◆作り方◆
しっかり蓋のできる容れ物にゆずの種と焼酎を入れる。ときどきゆすって混ぜながら、冷蔵庫に入れて1週間以上漬け込み、液体がトロッとしてきたら出来上がり。
冷蔵庫で1ヵ月くらい保存できる。
これに好みの分量でグリセリンを足して使う。ただし、柑橘系の化粧水は紫外線によるシミの原因になりやすいので、夜、就寝前などに使用すること。

冬の日本料理にも欠かせないアイテム。お吸い物にユズの皮がちょっと刻んであるだけで、どうしてあんなに華やぐのでしょう。柚子胡椒、バンザイ! 柚子味噌、バンザイ! 
来年はぜひ、ゆべし(柚餅子)に挑戦したいと思います。

成長が遅いことでも知られ、「桃栗3年、柿8年、ユズの大馬鹿18年」などといわれます。大馬鹿はひどいですが、実際、栽培にあたっては、種子から育てる実生栽培では、結実まで10数年かかってしまうため、結実までの期間を短縮するため、カラタチへの接ぎ木によって数年で収穫可能にすることが多いそうです。そういえば、ユズの枝もカラタチに負けないぐらいの鋭いトゲがあります。

剪定したユズの枝葉をいただいたので、煮出したところ、芳香を放ちながら、濃い黄色の液となりました。スズでカナリヤ色、銅で璃寛茶 (りかんちゃ)、鉄でうぐいす色から麹塵色

花言葉は「健康美」「汚れなき人」「恋のため息」。
5/21、12/31の誕生花。冬の季語。

◎参考サイト / 文献◎

https://ja.wikipedia.org/wiki/ユズ
http://www.e-yakusou.com/
http://hananokotoba.com/
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「薬草の自然療法」 東城百合子/著 池田書店
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第87巻
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店

(C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

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2019/03/03

リュウゼツラン・燃え尽きて白橡(しろつるばみ)

Ryuzetsuran02 Ryuzetsuran01

【学名】  Agave L.(リュウゼツラン属),
      Agave americana var. marginata(アオノリュウゼツラン)
【別名】    マンネンラン, マゲイ(maguey)
【英語名】 Agave, Century plant
【科】     リュウゼツラン科

メキシコ原産。日本には、江戸時代の天保年間(1830〜44)に斑入りの種類が渡来しました。
その後、明治になって原種である葉に斑のないアオノリュウゼツランが渡来。

学名のagaveはラテン語で「高貴な」の意味。確かに、"エリザベス一世"みたいな、近寄りがたい空気感をまとっています。

アステカ文明以来、メキシコの先住民の間では、リュウゼツランの葉から繊維をとって衣服としていました。木綿以前の"原始布"なのだそうです。日本でも、木綿が普及する17世紀以前の繊維は大麻、苧麻、葛づるなどから取る草繊維が衣服を支えていました。似ていますね。

Ryuzetsuran03 (写真出典)

葉の皮(ミショテ)は、紙として用いた歴史もあるそうです。

数十年に一度しか花が咲かず、咲くとその株は枯れてしまうことが知られています。
リュウゼツランは、デンプン質が豊富で、「種を粉にひいたものはスープにとろみをつけるのに使ったり、他の粉と混ぜてパンにすることもできる。」という記述も見当たります。

そしてすごいのはここ!
その何十年に一度の開花期には、蓄えていたデンプン質を糖に変えるのだそうですよ!
もともと熱い乾燥した気候の植物ですから、その厳しい環境で花を咲かせるというのは、まさに命がけの大仕事なんですねぇ。そして、白く燃え尽きる・・・ジョーっっ!!

その糖分たっぷりの茎からは、サトウキビのように甘味料がとれまして、これをアガベシロップといいます。花芯もたいへん甘く、栄養価が高いそうです。また、花の茎はアスパラガスのように料理できるとも! やってみたーい!

この糖質を用いて作る蒸留酒を総称して「メスカル」といい、その中でもメキシコで作られる特に上等な蒸留酒が、有名な「テキーラ」です。

中央アメリカでは古くから、リュウゼツランの葉汁は湿布薬などに用いられてきました。服用すれば下痢、赤痢を癒やし、利尿効果や便通を良くする効果がある、という記述も見当たります。

2018年夏。雪ノ下の横浜国大附属の校庭のフェンス沿いあったリュウゼツラン。突如、10mほどのトウがにょきにょきと立ち、黄色い花が咲きました!
咲いているときは、通り掛かる人たちがみんな写メっていました。

冬になるとそのまま立ち枯れ、花茎の様子は、よく手入れされたマツのようでした。
数十年に一度のことなので、学校にお願いして、その枯れかけた株から葉を一枚いただきました。

「アロエのおばけ」ぐらいの構えでなめていたら、とんでもなかった。
葉の形状を龍の舌に見立てただけあり、古い葉は、刃物も容易に寄せつけないほどの硬さ!!
まるでかつお節。

なんとか、切り出しましたが、見ると、竹のような繊維の集合体でした。

戦前までは、サポニンが多いリュウゼツランの葉は、洗剤代わりに使われたこともあったそうです。(いやいや、すばらしく有用な植物ですね)
サポニンの多い植物は鉄媒染で紫が染まることが多いのですが、こちらの株は、命の火が尽きかけていたせいか、染液は黒黒としていましたが、アルミで白橡(しろつるばみ)色、銅で桑染 (くわぞめ)色、鉄で黄唐茶(きがらちゃ)
どれも総じて薄い染め上がり。大仕事を終えて、まさに戦いのリングで白く燃え尽きたような色合いでした。

花言葉は「繊細」「気高い貴婦人」。

◎参考サイト / 文献◎

https://ja.wikipedia.org/wiki/リュウゼツラン属
http://www.pfaf.org
https://horti.jp
https://tabimap.net/mex/?p=400
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房

(C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

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2019/02/12

マツ・不滅の海松色(みるいろ)

Matsu02 Img_8387_2 Matsu03

【学名】 Pinus palustris Mill.(ダイオウマツ)、
     Pinus densiflora(アカマツ)、
     Pinus thunbergii(クロマツ)
【英名】 Pine、 Japnese red pine(アカマツ),
     Japnese black pine (クロマツ),
     Longleaf pine(ダイオウマツ)
【別名】 トキミグサ(時見草)、トキワグサ(常磐草)
【生薬名】松脂(しょうし=マツヤニ)、海松子(かいしょうし=実)
【科】  マツ科

学名のPinus(パイナス)は、ケルト語の「pin(山)」が語源。
マツ属の樹木の総称。マツ属の天然分布は赤道直下のインドネシアから、北はロシアやカナダの北極圏に至り、ほぼ北半球に限られて分ぷしています。これは針葉樹としては最も広い範囲に当たります。
というのも、温度の適性が広く、亜熱帯や熱帯に分布する種でも−10℃程度の低温・組織の凍結には堪えて生存するといいます。そういうところはちょっと人間っぽいですね。強いっ!

日本には、二葉松類のアカマツ、クロマツ、リュウキュウマツ、五葉松類ではゴヨウマツ、ハイマツ、チョウセンゴヨウなどが分布します。

寒い冬にも耐え、常緑なので、"長寿の象徴"とされています。
神がその木に降りてくるのを「待つ」ことから「マツ」になったとも、葉が2つに分かれていることから「股(また)」が次第に「マツ」になったとも、久しく齢を保つことから「タモツ」が略転した、霜雪の季節を常緑で乗り切ることから「全く(またく)」とよばれ、これが訛った、など諸説。

通年常緑を保ち、樹齢が長いことから、日本では古くから「神の宿る木」とされ、様々な民俗行事や祝い事に用いられてきました。
お正月に年神を迎える門松もしかり。ちなみに、ブータンでは、客人を迎える際、家の門扉にマツを飾る風習があります。

古来、中国では「仙人が松葉を常食していた」と伝えられていて、山伏は松葉を食べて険しい山岳を旅したとされ、中国の漢方古書「本草綱目」では「毛髪を生じ、五臓を安んじ、中(胃のこと)を守り、天年を延べる(長寿のこと)」「強壮になり、歯を固め、耳目をよくす」という記述があります。

生薬としては、松脂(マツヤニ)が、古くから肩こり、筋肉痛、あかぎれなどに用いられてきました。
生のマツ葉を煎じてうがいをすると虫歯や口内炎治療の効果ありともいわれます。

マツの実、マツ葉は、低血圧症、冷え性、不眠症、食欲不振、去淡、膀胱炎、動脈硬化症、糖尿病、リューマチ、神経痛、健胃、疲労回復に効能。
マツの葉の有効成分は、
・葉緑素クロロフィル(増血作用、血液浄化、血液中の不飽和脂肪酸溶解)
・テレペン精油(ピネン、ジペンテン、リモネン含有成分・血中コレステロール除去し、ボケ、脳卒中、動 脈硬化を抑制)
・ビタミンA・C、ビタミンK、鉄分、酵素(血液の凝固、骨へのカルシウム沈着・老化を抑制し出血を防ぐ)
・・・といいことづくめ。

松葉を焼酎につけて作る松葉酒、生葉をミキサーにかけて作るジュースなどにして服用します。
5月の新芽を干してお茶として服用するのも良いそうですよ。
いずれも、生薬として用いるときはアカマツが最適とされているそうです。ま、マツなら大体OKでしょう。

祝い事の際に用いられる絵柄に「松に鶴」が伝統的によくみられますが、実際には、ツルはマツにとまることができないそうです。
ツルと称されていたのは、実はコウノトリであったと思われます。
(こういう例は他にもあって、「梅にウグイス」も実際にはメジロです。)

江戸時代、2〜3日水につけてアクをとった葉を、干して刻んだものをタバコの代りにするのが流行ったという記述が和漢三才図会にありました。健康たばこ。愛煙家の方、いかがでしょう。

年末、近所の仲間と門松を手作りしました。竹は竹やぶから切り出したもの、そして松は友人宅で切らせてもらったダイオウマツの葉を使いました。松の内が終わったそのダイオウマツの葉を、煮出してみることに。

テレピンの良い香りが漂い、少し白濁とした薄い黄色の液となり、アルミで淡黄色、銅でうぐいす色、鉄でまさに濃いめの松葉色! そして海松色(みるいろ)など。

花言葉は、「不老長寿」「勇敢」「同情」「永遠の若さ」「向上心」「哀れみ」「慈悲 」。
1/1、 1/3、 1/19、 11/14、12/12、12/14の誕生花。春の季語。

◎参考サイト / 文献◎

http://ja.wikipedia.org/wiki/マツ
http://chills-lab.com/flower/ma-ta-02/
http://www.kobayashi.co.jp/
http://www.hana300.com/
http://www.e-yakusou.com/
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 第82巻
・「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著 家の光協会
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店

(C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

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2019/01/31

モモ・子孫繁栄の鶸色

Momo01

【学名】  Prunus persica (L.) Batsch (モモ)
      Prunus persica (L.) Batsch forma (ハナモモ)
【英名】    peach
【別名】  ミキフルグサ、ミチトセグサ
【生薬名】 桃仁(とうにん=種)、白桃花(はくとうか=つぼみ)
【 科 】   バラ科

中国原産。学名にある「persica」は、ペルシャのことで、中国から紀元前に伝わったものがその後ギリシャやローマに伝わり、ギリシャの博物学者テオプラストスが、モモをベルシャの果物と思ったことが後の近代ヨーロッパに定着し、学名に影響したそうです。

中国では、モモの実は邪気を払い、また不老不死の妙薬とされてきました。「西遊記」で孫悟空が食べるエピソードにも、この背景があります。

日本には弥生時代に伝わりました。
桃は股(もも)のことで、そこから子がうまれ、子孫の繁栄するめでたいシンボルとされました。桃太郎の物語もそれが背景です。

日本の神話は、弥生文化によって伝わった話がもとになってできたと考えられます。ギリシャやローマの神話に酷似したエピソードか多くみられるのも、中国経由で弥生時代にギリシャ/ローマ神話が形を変えて広まったからという説があります。オルフェウスが死んだ妻エウリュディケを連れ戻そうと冥界に行くお話は、イザナギが死んだイザナミを黄泉の国に連れ戻しに行くお話とそっくり。
『古事記』では、変わり果てたイザナミの追手をのがれたイザナギが、黄泉比良坂でモモの実を3つ投げつけ悪鬼を祓ったとあります。ここでモモの実が登場するのは中国の影響でしょうか。このエピソードから、モモの実は生命の実(さね)という名が与えられました。

古い神社の家紋によくモモが見られるのは、この故事に由来するものと思われます。

Momo02 丸に葉敷き桃(和歌山県・須佐神社)

生薬では、種の仁を「桃仁」といい、杏仁に準ずる働きをするものとされ、煎じて服用すると、産前、産後、血の道、月経不順、更年期障害に効果があります。
蕾を乾燥させた白桃花は、下剤として用います。和漢三才図会にも白桃花は「悪鬼を殺し、大小便の通じをよくし、ニキビやソバカスを治す。」とあり、実については「多食すれば腹が張り、腫れ物ができる。害あって益なし。」とあります。
あまりに美味ゆえ、みんなが食べないように戒めているのでしょうか・・・。

あせもには、新鮮な葉をとってよく水洗いして乾燥させ、風呂にいれて入浴するとよいことはよく知られています。
ただし、乾燥していない葉は、青酸化合物を成分としているので十分換気をして入浴する必要ありです。干して乾燥させたものも、入浴剤になりますので、そちらのほうがいいでしょう。

中国文化圏では前述のように実を、日本では実よりも花を愛でている印象を受けますが、いかがでしょう。

Momo03_2 Momo04  (写真左:台湾、写真右:日本)

昨年春、活け込みに使われたモモの枝を貰い受けて煮出してみました。アルミでやさしい鶸色、銅で鶯茶、鉄で海松色。黄色味の強い一番液を捨てて、二番からじっくり煮出せば、アルミで薄紅色が出ると思われます。

花言葉は「私はあなたのとりこ」「天下無敵」「気立ての良さ」。春の季語。

◎参考サイト/ 文献◎

http://ja.wikipedia.org/wiki/モモ
http://www.e-yakusou.com
http://www.plantstamps.net
http://hananokotoba.com/
http://www.genbu.net/sinmon/momo.htm
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「草木染め 染料植物図鑑」 山崎青樹/ 著 美術出版社
・「和漢三才図絵」第86巻  寺島良安 / 著
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館

(C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

                                 

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ツワブキ・激渋キャラの魅惑のブラック

Tsuwabuki04 Tsuwabuki01

【学名】  LiguLaria tussilaginea Makino
【英名】  Leopard plant, Japanese silverleaf

【別名】  イシブキ(石蕗)、ハマブキ(浜蕗)、ツワ(豆和)
【生薬名】 橐吾(たくご)
【科】   キク科

本州石川・福島県あたりから沖縄、朝鮮半島、中国沿岸部に多く自生する常緑の多年草。フキと違い、冬でも蒼々とした艶のある葉をたたえているので、庭に植えているお宅も多いですね。鎌倉では、谷戸の日陰の空き地にもよく見かけます。

「つやのあるフキ」が「ツヤブキ」→「ツワブキ」に転じたという説と、フキに比べて葉が厚いので「厚葉フキ」、そこから「あ」がとれて「ツバブキ」→「ツワブキ」になったという説があります。
「石蕗」の字をあてることからも、フキに比べて「硬いぞ!」という感じが伝わってきます。

「山陰の小京都」と呼ばれる城下町、島根県津和野町の地名は、ツワブキの野、から来ているのだそうです。津和野の地名は日本全国に他にもありますが、おそらく同じ語源でしょう。

春にキク科を彷彿とさせる黄色い花を咲かせます。(最近は秋に咲いていたりしますけどね)
花や若葉は天ぷらでいただけます。
フキの茎を甘辛く黒くなるまで煮詰めた「キャラブキ」は、フキではなく、本来ツワブキを美味しくいただくための調理法でした。アクが強いので、木灰か重曹で煮て、一晩水にさらしてから味付けします。
料理には、いい食材をつかった調理と、そのままでは食べられないものをいかに食べるか、を考えた調理の2つがありますね。前者は、修行を積んだ職人さんの技。これはぜひ、居住まいを正して対価をはらって楽しみたいものです。後者は、日々の暮らしのお料理といえるでしょう。身近なものをよく観察、吟味して、食材として扱う、食べにくいものをいかにすれば食べられるかを考える・・・私の染色もこのようなアプローチでありたいと思っています。

10月頃の根茎を干して刻んだもの生薬では橐吾(たくご)といいます。煎じて服用すると、健胃、食あたり、下痢に効果。葉は橐吾葉(たくごよう)といい、強い抗菌作用があり、葉をよく揉む、または火で炙るなどして、打撲、できもの、切り傷、湿疹(しっしん)に直接つけて使います。
和漢三才図絵には「豆和(つわ)」の名で「葉は魚毒を解する。河豚魚の毒にあたった場合は、生で食べるとしばしば効験がある。また、馬の飼料にしてもよく、薊(あざみ)・葛(くず)の葉に劣らない。」の記述が見つかります。

見るからに強いアクを持っていそうな印象は、修羅場をいくつもくぐって渋みと色気を磨いたオジサマの貫禄。それを反映してか、鉄媒染で渋みと包容力のある美しい黒が染まりました。ゲキシブ、万歳。

花言葉は「よみがえる愛」「謙遜」「先を見通す能力」「謙譲」。
11/16・11/20・12/17の誕生花。俳諧では冬の季語。

 

◎参考サイト / 文献◎

http://ja.wikipedia.org/wiki/ツワブキ
http://www.e-yakusou.com/
http://www.hana300.com/
http://ejje.weblio.jp/
・「季節の野草・山草図鑑」高村忠彦/監修 日本文芸社
・「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著 家の光協会
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第94巻
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「よくわかる山菜大図鑑」今井國勝・今井万岐子/著 永岡書店

(C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

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2019/01/30

ムクロジ・やさしい気持ちの柳茶色

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【学名】  Sapindus mukorossi Gaertn.
【英名】  Soapberry
【別名】  ツブ ツブノキ モクレンジ
【生薬名】 延命皮(えんめいひ=皮)
【科】     ムクロジ科

東北以南の本州、九州、四国、沖縄に分布。庭木や公園樹としてもよく植えられています。学名の「Sapindus」は、sapo indicus=インドの石鹸、の意味。英語ではまさに「石鹸の実」です。
ムクロジは、夏に青いまあるい実をつけますが、この実にはサポニンが多く含まれ、インドでは昔から石鹸として使っていました。
日本でも「エゴの実」同様、洗濯に使われてきました。インドネシアでも、バティックを洗うのに現在でも用いられています。
江戸時代の百科事典「和漢三才図会」にも、「子(実)の皮を煎汁にし、これで衣を洗うと垢がよくとれる。また水に漬けて管で吹くと泡が膨れるので遊戯にする。俗に奢盆(しゃぼん)という。」とあります。
テレビの時代劇で、子どもがシャボン玉遊びをしているシーンをみるにつけ、「石鹸がないのに、どうやってたんだ?!」と不思議に思っていたのですが、なーるほど、なるほど。

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秋になるとこの実は黄色くなり、さらに透き通ってシワが寄ってくると、中の球体の黒い種子を取ることができます。 和漢三才図会には、その種子は炒って食べられるという記述があります。お正月に遊ぶ羽つきの羽の頭に用いられているのも、この種子です。昔はこれで念珠も作っていたそうですよ。

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(写真中央出典) (写真右出典)

子どもの守り神である地蔵菩薩を本尊とする鎌倉の宝戒寺は、白萩が有名で、別名「萩の寺」として知られていますが、実は境内に見事なムクロジの大木があることでも有名です。
ムクロジは「無患子」とつづり、その種子を持っていると「子が患わない」といわれています。宝戒寺には、このムクロジの種を自分で選んで袋に詰めるお守りがあり、たいへん人気があります。

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実の皮を干して乾燥させたものを生薬で「延命皮」といいます。昔は、強壮、去痰薬として用いられていましたが、実に含まれるムクロジサポニンに、溶血作用があり、誤食すると胃腸障害や下痢を発症することが知られて、現在は用いられていません。

また和漢三才図会には「伝えによれば、この木で器物を作りそれを用いていると鬼魅(きみ=鬼や魑魅魍魎)を圧服させることができる。それで俗に鬼見愁(きけんしゅう)という。」さらに、「鬼を封じるのにムクロジで作った棒で叩いた神巫(かんなぎ)がいた」という記述も見当たります。 面白い。機会があったらなんか作ってみたいです。織りで使う杼(ひ・シャトル)がいいかしら。

夏の終わりに、宝戒寺さんにお願いして青い実を少し頂いてきました。染めてみたところ、どの媒染でもやわらかな色合いで、銅媒染の柳茶色(緑味の砂色)が特に美しいです。

鎌倉では宝戒寺のほかに、源氏山にある葛原岡神社にもムクロジの大木があります。

秋の季語。

◎参考サイト / 文献◎

http://ja.wikipedia.org/wiki/ムクロジ
http://www.e-yakusou.com/
http://nenjyu.com/?pid=3540011
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「和漢三才図絵第83巻」寺島良安 / 著  
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店

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