鎌倉染色彩時記(染)

2019/03/18

ユズ・お肌すべすべのカナリヤ色

Yuzu01

【学名】   Citrus junos
【英名】   yuzu
【別名】   ユ、ユウ、ユノス
【科】   ミカン科

中国揚子江上流の原産。
ホンユズは、奈良時代にはすでに渡来しており、平安時代には栽培していた記録が残っています。
対してハナユズは、日本原産であるといわれますが、定かではありません。

古名「ユノス」は、果汁を酢の代わりに用いたことから「柚の酸(ゆのす)」といわれたことに由来するそうです。これがそのまま、学名となりました。現在の「ユズ」も「柚酸」からきています。

和漢三才図会には、「柚の実は食を消化し、酒毒を解し、妊婦で食欲のないのを治す。柚の皮は気を下し、隔(胸部)を快くし、痰をなくし、憤懣(ふんまん)の気を散じさせる。」とあります。確かに、ユズの芳香には、気持ちを落ち着ける効果があるように思います。オレンジのような甘さはなく、レモンほど強い酸味は感じさせない、まさしく、和のすっきり系トップノート。

果実には、ビタミンC、クエン酸、酒石酸を含み、果皮には、ピネン精油、シトラール、リモーネンを含みます。果肉、果汁を肌につけてこすると、ひび、あかぎれ、しもやけなどの肌荒れを改善。 冬至に柚子風呂をたくのは、風邪予防、血行を促進して、神経痛や冷え性を改善、などの他、この、肌荒れ対策の意味もあるようです。リウマチには、種を黒焼きにしたものに熱湯を注いで飲むと良い、という記述も見当たります。種のぬめりに肌荒れを防ぐ薬効が特に多いといわれます。

<<ユズの種の化粧水>>※ご使用前にパッチテストしてください。
◆材料◆ ・ゆずの種(洗ってないもの、ぬめりを取らないことが大切!)
・ゆずの種の3〜10倍量の焼酎(35度)
◆作り方◆
しっかり蓋のできる容れ物にゆずの種と焼酎を入れる。ときどきゆすって混ぜながら、冷蔵庫に入れて1週間以上漬け込み、液体がトロッとしてきたら出来上がり。
冷蔵庫で1ヵ月くらい保存できる。
これに好みの分量でグリセリンを足して使う。ただし、柑橘系の化粧水は紫外線によるシミの原因になりやすいので、夜、就寝前などに使用すること。

冬の日本料理にも欠かせないアイテム。お吸い物にユズの皮がちょっと刻んであるだけで、どうしてあんなに華やぐのでしょう。柚子胡椒、バンザイ! 柚子味噌、バンザイ! 
来年はぜひ、ゆべし(柚餅子)に挑戦したいと思います。

成長が遅いことでも知られ、「桃栗3年、柿8年、ユズの大馬鹿18年」などといわれます。大馬鹿はひどいですが、実際、栽培にあたっては、種子から育てる実生栽培では、結実まで10数年かかってしまうため、結実までの期間を短縮するため、カラタチへの接ぎ木によって数年で収穫可能にすることが多いそうです。そういえば、ユズの枝もカラタチに負けないぐらいの鋭いトゲがあります。

剪定したユズの枝葉をいただいたので、煮出したところ、芳香を放ちながら、濃い黄色の液となりました。スズでカナリヤ色、銅で璃寛茶 (りかんちゃ)、鉄でうぐいす色から麹塵色

花言葉は「健康美」「汚れなき人」「恋のため息」。
5/21、12/31の誕生花。冬の季語。

◎参考サイト / 文献◎

https://ja.wikipedia.org/wiki/ユズ
http://www.e-yakusou.com/
http://hananokotoba.com/
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「薬草の自然療法」 東城百合子/著 池田書店
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第87巻
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店

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2019/03/03

リュウゼツラン・燃え尽きて白橡(しろつるばみ)

Ryuzetsuran02 Ryuzetsuran01

【学名】  Agave L.(リュウゼツラン属),
      Agave americana var. marginata(アオノリュウゼツラン)
【別名】  マンネンラン, マゲイ(maguey)
【英語名】 Agave, Century plant
【科】   リュウゼツラン科

メキシコ原産。日本には、江戸時代の天保年間(1830〜44)に斑入りの種類が渡来しました。
その後、明治になって原種である葉に斑のないアオノリュウゼツランが渡来。

学名のagaveはラテン語で「高貴な」の意味。確かに、"エリザベス一世"みたいな、近寄りがたい空気感をまとっています。

アステカ文明以来、メキシコの先住民の間では、リュウゼツランの葉から繊維をとって衣服としていました。木綿以前の"原始布"なのだそうです。日本でも、木綿が普及する17世紀以前の繊維は大麻、苧麻、葛づるなどから取る草繊維が衣服を支えていました。似ていますね。

Ryuzetsuran03 (写真出典)

葉の皮(ミショテ)は、紙として用いた歴史もあるそうです。

数十年に一度しか花が咲かず、咲くとその株は枯れてしまうことが知られています。
リュウゼツランは、デンプン質が豊富で、「種を粉にひいたものはスープにとろみをつけるのに使ったり、他の粉と混ぜてパンにすることもできる。」という記述も見当たります。

そしてすごいのはここ!
その何十年に一度の開花期には、蓄えていたデンプン質を糖に変えるのだそうですよ!
もともと熱い乾燥した気候の植物ですから、その厳しい環境で花を咲かせるというのは、まさに命がけの大仕事なんですねぇ。そして、白く燃え尽きる・・・ジョーっっ!!

その糖分たっぷりの茎からは、サトウキビのように甘味料がとれまして、これをアガベシロップといいます。花芯もたいへん甘く、栄養価が高いそうです。また、花の茎はアスパラガスのように料理できるとも! やってみたーい。

この糖質を用いて作る蒸留酒を総称して「メスカル」といい、その中でもメキシコで作られる特に上等な蒸留酒が、有名な「テキーラ」です。

中央アメリカでは古くから、リュウゼツランの葉汁は湿布薬などに用いられてきました。服用すれば下痢、赤痢を癒やし、利尿効果や便通を良くする効果がある、という記述も見当たります。

2018年夏。雪ノ下の横浜国大附属の校庭のフェンス沿いあったリュウゼツラン。突如、10mほどのトウがにょきにょきと立ち、黄色い花が咲きました!
咲いているときは、通り掛かる人たちがみんな写メっていました。

冬になるとそのまま立ち枯れ、花茎の様子は、よく手入れされたマツのようでした。
数十年に一度のことなので、学校にお願いして、その枯れかけた株から葉を一枚いただきました。

「アロエのおばけ」ぐらいの構えでなめていたら、とんでもなかった。
葉の形状を龍の舌に見立てただけあり、古い葉は、刃物も容易に寄せつけないほどの硬さ!!
まるでかつお節。

なんとか、切り出しましたが、見ると、竹のような繊維の集合体でした。

戦前までは、サポニンが多いリュウゼツランの葉は、洗剤代わりに使われたこともあったそうです。(いやいや、すばらしく有用な植物ですね)
サポニンの多い植物は鉄媒染で紫が染まることが多いのですが、こちらの株は、命の火が尽きかけていたせいか、染液は黒黒としていましたが、アルミで白橡(しろつるばみ)色、銅で桑染 (くわぞめ)色、鉄で黄唐茶(きがらちゃ)
どれも総じて薄い染め上がり。大仕事を終えて、まさに戦いのリングで白く燃え尽きたような色合いでした。

花言葉は「繊細」「気高い貴婦人」。

◎参考サイト / 文献◎

https://ja.wikipedia.org/wiki/リュウゼツラン属
http://www.pfaf.org
https://horti.jp
https://tabimap.net/mex/?p=400
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房

(C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

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2019/02/12

マツ・不滅の海松色(みるいろ)

Matsu02 Img_8387_2 Matsu03

【学名】 Pinus palustris Mill.(ダイオウマツ)、
     Pinus densiflora(アカマツ)、
     Pinus thunbergii(クロマツ)
【英名】 Pine、 Japnese red pine(アカマツ),
     Japnese black pine (クロマツ),
     Longleaf pine(ダイオウマツ)
【別名】 トキミグサ(時見草)、トキワグサ(常磐草)
【生薬名】松脂(しょうし=マツヤニ)、海松子(かいしょうし=実)
【科】  マツ科

学名のPinus(パイナス)は、ケルト語の「pin(山)」が語源。
マツ属の樹木の総称。マツ属の天然分布は赤道直下のインドネシアから、北はロシアやカナダの北極圏に至り、ほぼ北半球に限られて分ぷしています。これは針葉樹としては最も広い範囲に当たります。
というのも、温度の適性が広く、亜熱帯や熱帯に分布する種でも−10℃程度の低温・組織の凍結には堪えて生存するといいます。そういうところはちょっと人間っぽいですね。強いっ!

日本には、二葉松類のアカマツ、クロマツ、リュウキュウマツ、五葉松類ではゴヨウマツ、ハイマツ、チョウセンゴヨウなどが分布します。

寒い冬にも耐え、常緑なので、"長寿の象徴"とされています。
神がその木に降りてくるのを「待つ」ことから「マツ」になったとも、葉が2つに分かれていることから「股(また)」が次第に「マツ」になったとも、久しく齢を保つことから「タモツ」が略転した、霜雪の季節を常緑で乗り切ることから「全く(またく)」とよばれ、これが訛った、など諸説。

通年常緑を保ち、樹齢が長いことから、日本では古くから「神の宿る木」とされ、様々な民俗行事や祝い事に用いられてきました。
お正月に年神を迎える門松もしかり。ちなみに、ブータンでは、客人を迎える際、家の門扉にマツを飾る風習があるんですよ。

古来、中国では「仙人が松葉を常食していた」と伝えられていて、山伏は松葉を食べて険しい山岳を旅したとされ、中国の漢方古書「本草綱目」では「毛髪を生じ、五臓を安んじ、中(胃のこと)を守り、天年を延べる(長寿のこと)」「強壮になり、歯を固め、耳目をよくす」という記述があります。

生薬としては、松脂(マツヤニ)が、古くから肩こり、筋肉痛、あかぎれなどに用いられてきました。
生のマツ葉を煎じてうがいをすると虫歯や口内炎治療の効果ありともいわれます。

マツの実、マツ葉は、低血圧症、冷え性、不眠症、食欲不振、去淡、膀胱炎、動脈硬化症、糖尿病、リューマチ、神経痛、健胃、疲労回復に効能。
マツの葉の有効成分は、
・葉緑素クロロフィル(増血作用、血液浄化、血液中の不飽和脂肪酸溶解)
・テルペン精油(ピネン、ジペンテン、リモネン含有成分・血中コレステロール除去し、ボケ、脳卒中、動 脈硬化を抑制)
・ビタミンA・C、ビタミンK、鉄分、酵素(血液の凝固、骨へのカルシウム沈着・老化を抑制し出血を防 ぐ)
・・・といいことづくめ。

松葉を焼酎につけて作る松葉酒、生葉をミキサーにかけて作るジュースなどにして服用します。
5月の新芽を干してお茶として服用するのも良いそうですよ。
いずれも、生薬として用いるときはアカマツが最適とされているそうです。ま、マツなら大体OKでしょう。

祝い事の際に用いられる絵柄に「松に鶴」が伝統的によくみられますが、実際には、ツルはマツにとまることができないんだそうですよ。
ツルと称されていたのは、実はコウノトリであったと思われます。
(こういう例は他にもあって、「梅にウグイス」も実際にはメジロです。)

江戸時代、2〜3日水につけてアクをとった葉を、干して刻んだものをタバコの代りにするのが流行ったという記述が和漢三才図会にありました。健康たばこ。愛煙家の方、いかがでしょう。

年末、近所の仲間と門松を手作りしました。竹は竹やぶから切り出したもの、そして松は友人宅で切らせてもらったダイオウマツの葉を使いました。松の内が終わったそのダイオウマツの葉を、煮出してみることに。

テレピンの良い香りが漂い、少し白濁とした薄い黄色の液となり、アルミで淡黄色、銅でうぐいす色、鉄でまさに濃いめの松葉色! そして海松色(みるいろ)など。

花言葉は、「不老長寿」「勇敢」「同情」「永遠の若さ」「向上心」「哀れみ」「慈悲 」。
1/1、 1/3、 1/19、 11/14、12/12、12/14の誕生花。春の季語。

◎参考サイト / 文献◎

http://ja.wikipedia.org/wiki/マツ
http://chills-lab.com/flower/ma-ta-02/
http://www.kobayashi.co.jp/
http://www.hana300.com/
http://www.e-yakusou.com/
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 第82巻
・「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著 家の光協会
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店

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2019/01/31

モモ・子孫繁栄の鶸色

Momo01

【学名】  Prunus persica (L.) Batsch (モモ)
      Prunus persica (L.) Batsch forma (ハナモモ)
【英名】     peach
【別名】  ミキフルグサ、ミチトセグサ
【生薬名】 桃仁(とうにん=種)、白桃花(はくとうか=つぼみ)
【 科 】    バラ科

中国原産。学名にある「persica」は、ペルシャのことで、中国から紀元前に伝わったものがその後ギリシャやローマに伝わり、ギリシャの博物学者テオプラストスが、モモをベルシャの果物と思ったことが後の近代ヨーロッパに定着し、学名に影響したそうです。

中国では、モモの実は邪気を払い、また不老不死の妙薬とされてきました。「西遊記」で孫悟空が食べるエピソードにも、この背景があります。

日本には弥生時代に伝わりました。
桃は股(もも)のことで、そこから子がうまれ、子孫の繁栄するめでたいシンボルとされました。桃太郎の物語もそれが背景です。

日本の神話は、弥生文化によって伝わった話がもとになってできたと考えられます。ギリシャやローマの神話に酷似したエピソードか多くみられるのも、中国経由で弥生時代にギリシャ/ローマ神話が形を変えて広まったからという説があります。オルフェウスが死んだ妻エウリュディケを連れ戻そうと冥界に行くお話は、イザナギが死んだイザナミを黄泉の国に連れ戻しに行くお話とそっくり。
『古事記』では、変わり果てたイザナミの追手をのがれたイザナギが、黄泉比良坂でモモの実を3つ投げつけ悪鬼を祓ったとあります。ここでモモの実が登場するのは中国の影響でしょうか。このエピソードから、モモの実は生命の実(さね)という名が与えられました。

古い神社の家紋にモモが見られるのは、この故事に由来するものと思われます。

Momo02 丸に葉敷き桃(和歌山県・須佐神社)

生薬では、種の仁を「桃仁」といい、杏仁に準ずる働きをするものとされ、煎じて服用すると、産前、産後、血の道、月経不順、更年期障害に効果があります。
蕾を乾燥させた白桃花は、下剤として用います。和漢三才図会にも白桃花は「悪鬼を殺し、大小便の通じをよくし、ニキビやソバカスを治す。」とあり、実については「多食すれば腹が張り、腫れ物ができる。害あって益なし。」とあります。 あまりに美味ゆえ、みんなが食べないように戒めているのでしょうか・・・。

あせもには、新鮮な葉をとってよく水洗いして乾燥させ、風呂にいれて入浴するとよいことはよく知られています。 ただし、乾燥していない葉は、青酸化合物を成分としているので十分換気をして入浴する必要ありです。干して乾燥させたものも、入浴剤になりますので、そちらのほうがいいでしょう。

 

中国文化圏では前述のように実を、日本では実よりも花を愛でている印象を受けますが、いかがでしょう。

Momo03_2 Momo04  (写真左:台湾、写真右:日本)

昨年春、活け込みに使われたモモの枝を貰い受けて煮出してみました。アルミでやさしい鶸色、銅で鶯茶、鉄で海松色。黄色味の強い一番液を捨てて、二番からじっくり煮出せば、アルミで薄紅色が出ると思われます。

花言葉は「私はあなたのとりこ」「天下無敵」「気立ての良さ」。春の季語。

◎参考サイト/ 文献◎

http://ja.wikipedia.org/wiki/モモ
http://www.e-yakusou.com
http://www.plantstamps.net
http://hananokotoba.com/
http://www.genbu.net/sinmon/momo.htm
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「草木染め 染料植物図鑑」 山崎青樹/ 著 美術出版社
・「和漢三才図絵」第86巻  寺島良安 / 著
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館

(C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

                                  

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ツワブキ・激渋キャラの魅惑のブラック

Tsuwabuki04 Tsuwabuki01

【学名】  LiguLaria tussilaginea Makino
【英名】  Leopard plant, Japanese silverleaf
【別名】  イシブキ(石蕗)、ハマブキ(浜蕗)、ツワ(豆和)
【生薬名】 橐吾(たくご)
【科】   キク科

本州石川・福島県あたりから沖縄、朝鮮半島、中国沿岸部に多く自生する常緑の多年草。フキと違い、冬でも蒼々とした艶のある葉をたたえているので、庭に植えているお宅も多いですね。鎌倉では、谷戸の日陰の空き地にもよく見かけます。

「つやのあるフキ」が「ツヤブキ」→「ツワブキ」に転じたという説と、フキに比べて葉が厚いので「厚葉フキ」、そこから「あ」がとれて「ツバブキ」→「ツワブキ」になったという説があります。
「石蕗」の字をあてることからも、フキに比べて「硬いぞ!)という漢字が伝わってきます。

「山陰の小京都」と呼ばれる城下町、島根県津和野町の地名は、ツワブキの野、から来ているのだそうです。津和野の地名は日本全国に他にもありますが、おそらく同じ語源でしょう。

春にキク科を彷彿とさせる黄色い花を咲かせます。(最近は秋に咲いていたりしますけどね)
花や若葉は天ぷらでいただけます。
フキの茎を甘辛く黒くなるまで煮詰めた「キャラブキ」は、フキではなく、本来ツワブキを美味しくいただくための調理法でした。アクが強いので、木灰か重曹で煮て、一晩水にさらしてから味付けします。
料理には、いい食材をつかった調理と、そのままでは食べられないものをいかに食べるか、を考えた調理の2つがありますね。前者は、修行を積んだ職人さんの技。これはぜひ、居住まいを正して対価をはらって楽しみたいものです。後者は、日々の暮らしのお料理といえるでしょう。身近なものをよく観察、吟味して、食材として扱う、食べにくいものをいかにすれば食べられるかを考える・・・私の染色もこのようなアプローチでありたいと思っいます。

10月頃の根茎を干して刻んだもの生薬では橐吾(たくご)といいます。煎じて服用すると、健胃、食あたり、下痢に効果。葉は橐吾葉(たくごよう)といい、強い抗菌作用があり、葉をよく揉む、または火で炙るなどして、打撲、できもの、切り傷、湿疹(しっしん)に直接つけて使います。
和漢三才図絵には「豆和(つわ)」の名で「葉は魚毒を解する。河豚魚の毒にあたった場合は、生で食べるとしばしば効験がある。また、馬の飼料にしてもよく、薊(あざみ)・葛(くず)の葉に劣らない。」の記述が見つかります。

見るからに強いアクを持っていそうな印象は、修羅場をいくつもくぐって渋みと色気を磨いたオジサマの貫禄。それを反映してか、鉄媒染で渋みと包容力のある美しい黒が染まりました。ゲキシブ、万歳。

花言葉は「よみがえる愛」「謙遜」「先を見通す能力」「謙譲」。
11/16・11/20・12/17の誕生花。俳諧では冬の季語。

◎参考サイト / 文献◎

http://ja.wikipedia.org/wiki/ツワブキ
http://www.e-yakusou.com/
http://www.hana300.com/
http://ejje.weblio.jp/
・「季節の野草・山草図鑑」高村忠彦/監修 日本文芸社
・「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著 家の光協会
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第94巻
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館 ・「よくわかる山菜大図鑑」今井國勝・今井万岐子/著 永岡書店

(C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

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2019/01/30

ムクロジ・やさしい気持ちの柳茶色

Mukuroji03 Mukuroji06

【学名】  Sapindus mukorossi Gaertn.
【英名】  Soapberry
【別名】  ツブ ツブノキ モクレンジ
【生薬名】 延命皮(えんめいひ=皮)
【科】     ムクロジ科

 

東北以南の本州、九州、四国、沖縄に分布。庭木や公園樹としてもよく植えられています。学名の「Sapindus」は、sapo indicus=インドの石鹸、の意味。英語ではまさに「石鹸の実」です。
ムクロジは、夏に青いまあるい実をつけますが、この実にはサポニンが多く含まれ、インドでは昔から石鹸として使っていました。
日本でも「エゴの実」同様、洗濯に使われてきました。インドネシアでも、バティックを洗うのに現在でも用いられています。
江戸時代の百科事典「和漢三才図会」にも、「子(実)の皮を煎汁にし、これで衣を洗うと垢がよくとれる。また水に漬けて管で吹くと泡が膨れるので遊戯にする。俗に奢盆(しゃぼん)という。」とあります。
テレビの時代劇で、子どもがシャボン玉遊びをしているシーンをみるにつけ、「石鹸がないのに、どうやってたんだ?!」と不思議に思っていたのですが、なーるほど、なるほど。

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秋になるとこの実は黄色くなり、さらに透き通ってシワが寄ってくると、中の球体の黒い種子を取ることができます。 和漢三才図会には、その種子は炒って食べられるという記述があります。お正月に遊ぶ羽つきの羽の頭に用いられているのも、この種子です。昔はこれで念珠も作っていたそうですよ。

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(写真中央出典) (写真右出典)

子どもの守り神である地蔵菩薩を本尊とする鎌倉の宝戒寺は、白萩が有名で、別名「萩の寺」として知られていますが、実は境内に見事なムクロジの大木があることでも有名です。
ムクロジは「無患子」とつづり、その種子を持っていると「子が患わない」といわれています。宝戒寺には、このムクロジの種を自分で選んで袋に詰めるお守りがあり、たいへん人気があります。

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実の皮を干して乾燥させたものを生薬で「延命皮」といいます。昔は、強壮、去痰薬として用いられていましたが、実に含まれるムクロジサポニンに、溶血作用があり、誤食すると胃腸障害や下痢を発症することが知られて、現在は用いられていません。

また和漢三才図会には「伝えによれば、この木で器物を作りそれを用いていると鬼魅(きみ=鬼や魑魅魍魎)を圧服させることができる。それで俗に鬼見愁(きけんしゅう)という。」さらに、「鬼を封じるのにムクロジで作った棒で叩いた神巫(かんなぎ)がいた」という記述も見当たります。 面白い。機会がったらなんか作ってみたいです。

夏の終わりに、宝戒寺さんにお願いして青い実を少し頂いてきました。染めてみたところ、どの媒染でもやわらかな色合いで、銅媒染の柳茶色(緑味の砂色)が特に美しいです。

鎌倉では宝戒寺のほかに、源氏山にある葛原岡神社にもムクロジの大木があります。

秋の季語。

◎参考サイト / 文献◎

http://ja.wikipedia.org/wiki/ムクロジ
http://www.e-yakusou.com/
http://nenjyu.com/?pid=3540011
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「和漢三才図絵第83巻」寺島良安 / 著  
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店

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アーティチョーク・トゲトゲ攻撃の利休鼠

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(写真左・中央 : 髙木素子氏)

【学名】  Cynara scolymus L.
【英名】  Artichoke, Globe artichoke
【別名】    チョウセンアザミ(朝鮮薊)
【科】     キク科

学名の「Cynara(キナラ)」は、ギリシャ語の「cyno(犬)」に由来。花のまわりのとげが、犬の歯に似ていることからとか。たしかに、怖いぐらいの刺々しい様相です。

チョウセンアザミ(朝鮮薊)が別名ですが、朝鮮原産ではなく、地中海沿岸地原産。江戸時代中期にオランダ経由で渡来し、栽培された記録が残ります。が、広まることはありませんでした。おっかなかったんでしょう、きっと(笑)。

つぼみ(花托と総包の多肉部)を食用とします。欧米では古くから食されており、古代ローマ時代には既に塩ゆでにして食べられていたといいます。近年、日本でもイタリア料理店などでメニューによく見かけるようになりました。アーティチョークのサラダ、美味しいですよね。

シナリン((Cynarine)という生理活性物質が発見されてからは、薬用への応用も注目されています。肝臓や胆のうの機能を高める、血中コレステロール値を下げる、抗リューマチ効果などのあることがわかっています。

また、欧米では葉を染料に用いることも知られています。

鎌倉市関谷で無農薬の畑をつくっている、ご存知、髙木素子師匠がこのアーティチョークをつくっていらして、花が終わった枯れた花托と、新鮮な葉をくださいました。いやいや、この花托、犬の歯を通り越して、古代の拷問器具のようですよ。これをパチンコで投げたら立派な武器ですよ。素手で触れませんよ!

煮出してみると、豆を煮るときのような香りがし、濃いうぐいす色の染液に。葉はとくに染料として優秀な様子。アルミ媒染で鮮やかな黄色、銅媒染でうぐいす色、鉄で美しい黒緑鈍色利休鼠
ヨーロッパで染料として知られただけあって、ウールの発色が特にいいです。

花言葉は「独立独歩」「傷つく心」。・・・ふむ、妙に納得。

◎参考サイト/ 文献◎

http://ja.wikipedia.org/wiki/アーティチョーク
http://www.flower-photo.info/products/detail.php?product_id=371
http://www.hana300.com/
http://yasashi.info/a_00029.htm
https://ja.wikipedia.org/wiki/シナリン
http://www.pfaf.org
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館

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2019/01/29

エキナセア・ハリネズミは良薬なり

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【学名】  Echinacea purpurea
【別名】     ムラサキバレンギク、ムラサキセイヨウギク
【英語名】 Purple Coneflower, Hedge Coneflower, Black Sampson
【科】      キク科

北米原産。学名のEchinacea(エキナセア)は、ギリシャ語の「echinos(はりねずみ)」が語源。花心のトゲトゲした様子から。

ヨーロッパでは、古くから循環器系、呼吸器系、 リンパ系の解毒に最も効果のある薬草として認識されています。
また、北アメリカのネイティブ・アメリカンたちの間でも、副腎皮質ホルモンに似た働きや抗菌作用、免疫の強化が知られていて外傷や火傷、虫刺され、蛇の噛み傷の治療などで一般的に使われる薬草であったといわれています。インドのアーユルヴェーダでも使われてきました。

その民間療法における広い効用の多くは、科学的にも証明されています。ドイツ薬草学会(German Commission E Monographs)では、風邪、発熱、口内炎や喉頭炎、外傷の治療に効果があることを認めているといいます。効き目が強いだけに副作用もあり、経口摂取ではまず見られませんが、稀にアレルギー反応を引き起こすこともあるので、注意が必要とのこと。

株分けで増やしやすいのがうれしいです。鎌倉でも最近あちこちのお宅のお庭に植わっているのを見かけます。8月に花が終わったあと、9月ぐらいに行うとよいそうです。薬も作ってみたいですねぇ。

ハーツイーズさんに、エキナセアをたくさんいただきましたので染めてみることに。煮出すと、キク科特有の甘みのない芳香が漂います。
薬効を反映してか否か、どの媒染でも大変堅牢な色を染め上げました。
アルミで強いトパーズイエロー、銅で鶯色、カーキー色。鉄では透明感のある濃い黒緑

花言葉は、「優しさ」「深い愛」。8月20日の誕生花。

http://www.hana300.com
http://ja.wikipedia.org/wiki/ムラサキバレンギク
http://www.teych.com/
http://www.pfaf.org

(C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

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2019/01/24

ヤツデ・虫封じの朽茶色

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【学名】 Fatsia japonica
【英名】 Japanese Aralia
【別名】 ベンジョグサ(便所草)、天狗の羽団扇
【生薬名】ハッカクキンバン(八角金盤)
【科】  ウコギ科

学名のFatsiaは日本語の「八手(はっしゅ)」の発音が語源だそうです。
日本語の「八」には単に「多数」の意味があって、名前はヤツデ(八つ手)ですが、葉は数えてみたら7つとか9つとかに分かれているものが多いですね。

他に花が少ない秋から冬に長期間花をつけることで、昆虫たちを自分に一手に呼び寄せ、確実に受粉し繁殖するという策士。生き残るために、いろいろ考えているのね・・・。

葉の形が天狗の団扇を連想させて、家の敷地内に植えると魔除けになるという迷信もあります。工房の庭にはあちこちにヤツデの株があるのですが、これまで無事にやって来られたのはヤツデの魔力のお蔭かもしれません。
そういえば、加古里子さんの人気絵本「だるまちゃんとてんぐちゃん」にも、てんぐちゃんの団扇がうらやましいだるまちゃんが、ヤツでの葉っぱを見つけて大喜びする場面がありますね。このドヤ顔がたまりません。

Darumachan  (加古里子/著 福音館書店「だるまちゃんとてんぐちゃん」より)

乾燥させた葉は八角金盤という生薬。鎮咳、去痰には、乾燥した葉を煎じ服用するか、うがいをするとよい、また、リューマチ・疼痛、腰痛、あせもなどには乾燥した葉を入浴剤にするとよい、などの記述が見当たります。 ただし、服用については、濃度が高いと毒にもなるので素人は用いないほうがよいでしょう。

実際、別名ベンジョグサは、葉に多く含まれるサポニンが毒として働くので、生葉を刻んでトイレの便槽にいれ、蛆(ウジ)封じに用いたことに由来しています。ちなみに、臭い消しになるドクダミも栄えあるベンジョグサの称号を与えられています。

初夏に新芽を次々だし、ツヤツヤとよく伸びます。時々剪定をかねて染めますが、アルミで柔らかな黄色、銅で渋い茶色、鉄で海松茶から黒緑。

毒の本性を押し隠し、穏やかな色を提供し、魔力でみなに福を呼びつつ、陰で虫殺し、そして策を弄して生き抜く。
お主、なかなか、したたか者よのう。

花言葉は「分別」「親しみ」「健康」「おだやか」。
12/27日誕生花。

◎参考サイト/文献◎

http://had0.big.ous.ac.jp/index.html
http://www.e-yakusou.com/
http://ja.wikipedia.org/wiki/ヤツデ
http://www.hana300.com/yatude.html
http://www.hanakotoba.name/
http://www.colordic.org/w/
http://ogak2.exblog.jp/page/2/
http://plant-name.seesaa.net/
・「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著 家の光協会

 (C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

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アーモンド・神の男根の辛子色

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【学名】  Amygdalus dulcis
【和名】    ヘントウ(扁桃)、あめんどう
【生薬名】 ハタンキョウ(巴旦杏)
【科】     バラ科

学名のPrunus(プラナス)は、ラテン古名のplum(すもも)が語源。
中央アジア原産。スモモ、アンズは近種ですが、両者と違い、アーモンドは果肉があまり発達しません。

ギリシャ神話に面白い記述をみつけました。
寝ている間に流れ出たゼウスの精液が岩山を伝って大地が受胎する。生まれたのが両性具有の神アグディスティス。これを恐れたオリュンポスの神々がアグディスティスを去勢し(ええっ?!)、切り取った男根を投げ捨てたところからアーモンドの木が生える(ひょえーっ!)。
木は育ち、やがて実をつけ、その実をサンガリオス川の娘(ニンフ)ナーナが拾って胸に納めたところ、実は消えて、ナーナは身ごもり、産み落としたのが植物の成長と復活を司る神アティスである。(アティスはその後、松の木に身を変える)・・・。

20190124_213441 (アティス神像  ルーブル美術館蔵)

ギリシャの神様たち、なかなかエグいこと。

江戸時代の百科事典「和漢三才図会」には「あめんどう」の名で、本草綱目を引いて風聞として「回回国(新疆ウィグル自治区)に産する。いまは関西(中国河南省の函谷関より西)の諸地方にもある。樹は杏に似ていて葉は小さく、実も尖って小さく肉は薄い。核はウメの核に似て、からは薄く仁は甘美である。茶に入れて食べるが、味は榛子(はしばみの実)のようである。」という記述が見当たります。
別名の巴旦杏(はたんきょう)がジャカルタ近くのスマトラの国名バタンに由来すること、(江戸で)出回っているものは、ペルシャ産のものがオランダ船によってもたらされたものであることなども書かれています。ちなみに「あめんどう」はポルトガル語が語源だそうです。

いつもながら、和漢三才図会に記されている記述には驚かされます。江戸のいち町医者であった寺島良安の、知識欲、観察力には脱帽です。鎖国によって一切の情報を遮断されていたかに見えて、なんの、細かい外国の名前も、事情も、そこに産する物のことも、じつによく掴んでいます。情報の海でアップアップしているわたしたちより、学びたい気持ちが強かったみたいですね。

生薬では巴旦杏(種子)の名で「滋養、利尿に効果あり」という記述が「和漢薬」にあります。

山梨産のアーモンドの木の剪定枝をいただきました。
煮出してみると、ほんのりと杏仁豆腐の匂いがします。やっぱり仲間なんですね。絹よりウールの発色がよく、アルミで芥子色、銅で草色鶯色、鉄で強い濡羽色

花言葉は、「希望」「優しい愛情」「真実の愛」「無分別」「愚かさ」。
・・・「無分別」は、ゼウスたち、ギリシャ神たちのことかしら。
3月14日の誕生花。

◎参考サイト / 文献◎
http://www.hana300.com
http://www.e-yakusou.com
http://ja.wikipedia.org/wiki/アーモンド
http://www.hana300.com/tuta00.html
http://hanakotoba-labo.com
https://lovegreen.net/languageofflower/
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著  平凡社
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社
・「世界植物神話」篠田知和基 / 著  八坂書房

(C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

 

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