鎌倉染色彩時記(染)

2020/01/22

バタフライピー・瑠璃色の恋

 Butterflypea04 Butterflypea01 Butterflypea03

【学名】  Clitoria ternatea L.
【和名】    チョウマメ(蝶豆) 
【別名】  藍胡蝶(中国)、アンチャン(タイ)
【科】     マメ科 

昨年のカジュ祭。フードコートに出店をお願いした、鎌倉クルアノックのユキコさんは、例年通り、タイを中心にした様々なアジアごはんを独特のアレンジでたくさん出してくださいました。その中に、ひときわ目を引く瑠璃色の飲み物が!
「バタフライピーというお豆の、花びらのお茶なんですよ。東南アジアでは日常的に飲まれているんです。」

そ、染めてみたい・・・・っ!

そんな気持ちを見抜かれてか(笑)、ユキコさん、貴重な花びらのお茶を少し分けてくださいました。(感謝!! (T T)//)

南アジア原産。原産地では多年草ですが、日本では、冬の寒さで枯れてしまうため、一年草として扱います。
日本には、江戸時代・嘉永年間に入ってきたと言われていますが、和漢三才図会には記述は見つかりませんでした。

花には、青色色素「デルフィニディン」が含まれており、搾り汁を、菓子などの染料として使用したり、お茶にして飲んだり、さらには、黒髪の艶出し、白髪染めに使用したりすることで知られています。
搾り汁にライムやレモンをいれると紫色やピンク色などに変化します(!)。

根は、少し毒性を含むので注意。
現在は、日本でも園芸品種として人気があるほか、竹富島ではハーブとして栽培も行われています。

花の部分は、ブルベリー、ビルベリーなどと同じ抗酸化物質ポリフェノールの一種「アントシアニン」が多く含まれ、抗酸化作用による美容茶として、台湾などでは、女性に特に人気があります。
そのほか、血行促進し、冷え、眼精疲労の改善、血液中の血栓の解消、身体のむくみを取り除く効果なども期待できます。

ユキコさんにいただいた乾燥したお花。青や赤の染料には、熱を加えると色素が壊れてしまうものも多いのですが、「お茶にするときはガンガン煮出していますよ。」とユキコさんが言っていたので、通常の手順で煮出してみました。
20分も煮出すと、たいへん深い、それでいて、透明感のある青い液を得ました。まるで、正倉院に収められているペルシャ硝子の瑠璃色杯のようです。

どの媒染でもその透明感は維持しましたが、ウールや木綿には残念ながら青は染まりませんでした。(利休鼠麹塵山鳩色など)
が、絹にはその青の片鱗を留めることができました。
アルミ媒染がやや紫がかった藤鼠、どう媒染で桔梗鼠、鉄媒染で霞色

花言葉は「小さな恋」。


http://ja.wikipedia.org/wiki/チョウマメ
https://www.taiwanchakobo.jp/
https://harb-tea.com/what-is-butterfly-pea/
https://comedicplus.com/
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 3」 北隆館


 

(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房  禁転載

| | コメント (0)

2019/12/23

コスモス・突き抜けて黄海松茶色

  Cosmos    写真

【学名】  Cosmos Cav., Cosmos Cav.
【英名】  Cosmos 
【別名】  アキザクラ、オオハルシャギク
【科】   キク科 

メキシコ原産。ヨーロッパには18世紀後半にスペインを経由して広まったといわれています。
メキシコでは標高1600m以上の地域に自生するそうです。

明治12年に東京美術学校(東京芸大)の講師として赴任したラグーザが、イタリアから種を持ち込んだのが日本に渡来した最初とされますが、幕末説、明治29年説なども。
いずれにしても明治終わりには、日本全国で広まっていたと考えられます。

学名の属名cosmosはギリシャ語で「秩序」「調和」「美」「装飾」などの意味があります。調和のとれた花の様子が命名の背景なのでしょう。「宇宙」の語源となったのも、このあたりの意味からか。いや、宇宙のほうが先ですね。

日が短くなると花芽をつける短日植物なので、かつては夏にタネをまき、秋に花を楽しむものでした。
しかし、近年は、それほど日の長さに影響されずに開花する早生品種が主流になり、春にタネをまいて夏から開花を楽しむケースが増えているそうです。
ただし、秋にならないと開花しない晩生品種を早い時期にタネまきすると、開花する秋までに草丈が高くなりすぎるので、8月に入ってからまきましょう(NHK趣味の園芸先生談)。

花が食用になることは、あまり知られていない模様。食用菊のように生でサラダに散らすほか、ゆでた花びらを絞ってゼリーをつくる、スピリット系の酒に混ぜてカクテルにする、ジャムにする、などの記述が見つかります。これは楽しそうです!

多くの歌人、俳人が好んで題材としています。歌謡曲にも名曲がありますね。

コスモスや風に吹かれた明らかに  (高浜虚子)

コスモスの夜の花びら冷えわたり  (中村汀女)

心中をせんとなけるや雨の日に白きコスモス紅きコスモス                     
                                                         (与謝野晶子)   

筋金入り登山ガールの教室の生徒さんが、わざわざ白山近辺にたくさん咲いていたという、コスモスを、秋口に届けてくださいました。
残念ながら、少し日が経って、傷み始めてしまったのですが、それでもアルミで黄朽葉色 (きくちばいろ)、銅で青朽葉 (あおくちば)、鉄で黄海松茶 (きみるちゃ)

俳諧では秋の季語。                 
花言葉は、「調和」「乙女の純真」(全般)。
「優美」「美麗」(白)。「乙女の愛情」(赤)。「乙女の純潔」(ピンク)。
「野生の美しさ 」(黄)。 ※キバナコスモスは別種「恋の終わり」(茶)。
9/27の誕生花。

<<特別付録・関東エリアのコスモスの名所>>
鬼怒グリーンパーク   【栃木県】
吹上コスモス畑   【埼玉県】
あけぼの山農業公園 【千葉県】
昭和記念公園    【東京都】
くりはま花の国  【神奈川県】
山中湖 花の都公園   【山梨県】

◎参考サイト /文献

http://www.e-yakusou.com/
http://ja.wikipedia.org/wiki/コスモス
https://lovegreen.net
https://www.jalan.net
https://www.shuminoengei.jp
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「食べられる野生植物大図鑑」 橋本郁三 / 著 柏書房

 (C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房  禁転載

 

| | コメント (0)

2019/10/21

玉楠(タブノキ)・ハマとペリーと路考茶色

Tamakuau01 Tamakusu05

【学名】  Machilus thunbergii
【別名】  イヌグス, タマグス, ナンタブ  
【生薬名】 楠(なん) 
【科】     クスノキ科 

本州から沖縄、朝鮮半島南部、中国に分布する常緑高木。
神社などに鎮守木として植えられることも多いです。

艶のある細長い葉は、裏が白っぽいのが特徴。夏に黄色の小花をつけ、その後に着く小さな丸い実は秋には黒紫になります。
和漢三才図会には、「船舶に多く使われる」という記述があり、実際、タンニン質を多く含むことから水に強いことが知られていたのでしょう。

名前の由来は、朝鮮語で丸木舟を意味するtong-baiが訛った、霊が宿る木とされていたことから、「霊(たま)の木」と呼ばれ、それがしだいに訛った、など諸説あります。

八丈島でつくられる織物「黄八丈」は黄色のものが有名ですが、江戸時代は鳶色や黒のものもありました。その鳶色や黒の染料としても、タブノキは用いられていたらしいです。水に強い特性を生かして漁網を染めるのにも使われました。

和漢三才図会にはほかに「肌理(きめ)が細かく錯縦(たてまじり)の文章(もよう)が多いので「樟」といい、彫刻するのによい」という記述も見当たります。

生薬では樹皮を天日干しして粉にしたものを「楠(なん)」といいます。これを塩と水で練ったものを塗ると、脚のひきつれや水腫を治すといわれています。またこの粉を水で練ったものを線香の材料としたり、もち粉と混ぜて食用にしたりしたそうです。

横浜開港資料館には「玉楠の木」と呼ばれる文化財指定のタブノキが中庭に保存されています。
1859(安政6)年、横浜は開港場となりました。ペリーが上陸した場面を随行画家ヴィルヘルム・ハイネが描いた絵には、この玉楠の木が描かれているのです。
Tamakusu03

浮世絵や写真にも残っています。(横浜開港資料館HPより)
Tamakusuphoto04   Tamakusuphoto05


その後火災にあいながらも、明治期はイギリス領事館敷地内で、その後も震災や戦争をくぐり抜け、歴史の生き証人として、現在も元気にしています。
この話を耳にして以来ずっと、この木を染めてみたいなぁぁと思っておりました。この9月、思い切ってお電話したところ、ご厚意で、玉楠の木の枝葉を拾わせていただける幸運を得ました。(さすがに切るのはちょっと・・・ということで。)

だいぶ雨風にさらされていた枝葉だったようで、色は薄めでしたが、アルミで白つるばみ、銅で亜麻色から鶯茶、鉄の路考茶が美色。  
生葉、生枝ならば、鳶八丈や黒八丈の色も十分出たに違いありません。

花言葉は「威厳」「高潔」。9/25の誕生樹。


◎参考サイト / 文献
http://www.hana300.com/
http://www.e-yakusou.com/
http://ja.wikipedia.org/wiki/タブノキ・http://www.kaikou.city.yokohama.jp/guide/tamakusu.html
https://blog.goo.ne.jp/utsumiseikanosegaredesu/e/6dc8bd722b5b8a130608566828968602

・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社
・「和漢三才図絵」 第82巻 寺島良安 / 著

 

| | コメント (0)

2019/09/18

セイヨウニンジンボク・アブラハムの香油は藍媚茶

Seyoninjinboku01 Seyoninjinboku_t0-2 写真右 撮影 : 玉木ゆう子

【学名】   Vitex agnus-castus   ※Vitex cannabifolia(ニンジンボク)
【英名】   Ghaste tree, Chasteberry, Abraham's balm, Monk’s pepper
【別名】   イタリアニンジンボク、なまえの木
【生薬名】  牡荊(ぼけい) 
【科】     シソ科 (クマツヅラ科) 

南ヨーロッパ、西アジア原産。
学名のVitexはラテン語の「vieo=結ぶ」の意味で、この植物でかごを編んだことに由来するといいます。agnusは「神の子羊」、castusは「汚れない」「信仰深い」の意味。

英語名に「アブラハムの香油」とあるところからも、西欧では古い時代から香料、薬、香辛料に用いてきた歴史が伺えます。コショウの代用品として使われたことがMonk’s pepperの由来でしょうか。

日本には江戸時代に中国からニンジンボクが伝わってから、各地で自生するようになりました。
和漢三才図会には、ニンジンボクの木の枝で刑杖(棒で背中や臀部を打つ体罰につかう棒)を作ったという記述があります。硬さがちょうどいいとか? 叩くといい匂いがして罪が清められたとか??  どんな棒か見てみたいですねぇ。そしてセイヨウニンジンボクは明治時代に渡来しました。これで明治政府が体罰用の棒を作ったということはなさそう(笑)。

イギリスのサイトによれば、古くから高い薬効が認められ、近年ではその効能の多くが科学的にも証明されているそうです。中でも特に女性ホルモンの働きのバランスを整える効能で知られています。ドイツでは月経前症候群 (PMS) の症状の治療薬として正式に認可されています。 また民間では堕胎薬として用いられていた歴史もあるとか。

中医学ではニンジンボクは総称して「牡荊」といわれ、茎葉、根、実、いずれも用います。婦人病、不眠、に効果。経絡を開く作用があるとされます。和漢三才図会には「牡荊子(ぼけいし=実)は骨間の寒熱を除き、胃の気をよく通す。 咳を止め、気を下す。炒り焦がして粉末にし飲服すれば、心痛および婦人のこしけを治す。」とあります。

6月にみちくさ部長ハーブ王子に引率していただき、北鎌倉を散策した時、個人宅のお庭に植えられたセイヨウニンジンボクがきれいな紫の花を咲かせているを見つけました。ハーブ王子のお話では、セイヨウニンジンボクは、古代エジプトでミイラをつくるときに防腐剤として使われたということです。お茶にして飲んだら、老けないかしらん。

香料に用いられるだけあり、貰い受けた枝葉を煮出すと、キク科の植物に近い芳香の中に、華やかな甘さのある香りが立ち込めました。うーん、どこかで嗅いだ香りなんだけど、思い出せない・・・。漢方な感じは間違いなくするのですが。
黒黒しい染液となり、どれも渋みときつみの利いた堅牢な色合い。
アルミで菜種油色から鶯色、銅で鶯茶、鉄で藍媚茶。花の咲く前であれば、もうひと色明るくなるものと思われます。
花言葉は、「思慕」 「純愛」 「才能」 。7月22日の誕生花。

◎参考サイト /文献

http://ja.wikipedia.org/wiki/セイヨウニンジンボク
http://ja.wikipedia.org/wiki/ニンジンボク
http://www.zoezoe.biz/
http://search.eisai.co.jp
http://www.pfaf.org
https://www.language-of-flowers.com
http://gkzplant2.ec-net.jp/
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 2」 北隆館
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 第84巻

 

 (C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房  禁転載

 

 

 

 

 

 

 

| | コメント (0)

2019/09/17

バジル・偉大なる青白つるばみ

Basil (写真出典)

【学名】  Ocimum basilicum L.(スイートバジル) 
      Ocimum tenuiflorum(ホーリーバジル)
【英名】  Bazil
【別名】  メボウキ、カミメボウキ(ホーリーバジル)
【生薬名】 羅勒(らろく)
【科】   シソ科 

インド原産で、アジア南部、中東などに分布する多年草。ですが日本では越冬できないため一年草として扱われるのが一般的です。

学名のOcimumはギリシャ語の「okimon(香りを楽しむ)」が語源、basilicumは同じくギリシャ語のbasilikos (王室の) が語源です。「香り高き王族」といったところでしょうか。そんな由来からか、ギリシャにはバシレイオス(Basileios)という男性名が多く存在します。歴史上の偉人にもその名は見られ、たとえば、ギリシャ正教の教父で日本では「大バシリウス(バシレイオス)」の名で親しまれている聖人は、英語圏ではSt.Basil the Great と言われています。この大バシリウスさん(カトリック教徒では聖バジリオ)、4世紀にカッパドキア(現トルコ内)に実在した神学者で、三位一体論を確立しただけでなく、ハンセン病患者を含む病人の救済(当時は考えられないこと!)、貧民、孤児の救済などの福祉事業に大きく貢献したことで知られています。

キリスト復活ののち、イエスの墓のまわりにバジルが植えられたという伝説もあるそうで、ギリシャでは、キリストが磔になったゴルゴダの丘に生えていたバジルをハレナ女帝(コンスタンティヌス1世の母太后・聖ヘレナのことか?)が、ギリシャに持ち帰ったとされています。そこから食用、薬になったとなれば、名前に「王」の意味を持つもの納得ですね。ギリシャ正教会のなかには、今でも聖水を調合するのにバジルを使い、さらに聖壇をバジルで飾っているところもあるそうです。

インド、ネパール地方では、ホーリーバジルは聖なるハーブ “ツラシ” として知られ、アーユルヴェーダ医学では重要な薬草として扱われ、宗教的にはヴィシュヌ神、クリシュナ神、シヴァ神に捧げられる供物にもなるそうです。
ホーリーバジルはタイ料理にも欠かせませんよね。

日本には中国経由で江戸時代に入ってきました。葉より、黒い種を薬として重用したようです。種を目の中に入れると、水分を吸って蛙の卵のように寒天状に膨れて目のゴミを拭い去ったことから、「目の箒(ほうき)」の意味でメボウキの和名が付けられたそうです。この種を特に生薬では「羅勒子(らろくし)」と呼びます。

和漢三才図会には「3月頃植えるとよい。魚のアラ汁、米のとぎ汁、溝の泥水などを肥料にすると香りがでてよいが、糞尿をやるのはよくない。乾いた種子を用いて目のかすみ、塵が目に入ったものを治す。3〜5粒を目の中に入れると、湿り膨れて塵と一緒に出てくる。目はちょっとの塵が入ってもころころするのにこの種子なら何の妨げにもならないのはひとつの不思議である。」という記述がみつかります。現在ではバジルシードと呼ばれアジアンスイーツに用いられることも多いです。

地中海料理では葉を用いたジェノベーゼソース(バジルペースト)が知られています。カジュの畑でも毎年植えていて、バジルペーストをつくるのが夏の何よりの楽しみです。

葉は生食または乾燥したものをお茶として服用すると、抗鬱、殺菌、鎮痙、解熱、食欲増進、制吐、副腎皮質刺激、去痰発熱性疾患(風邪、インフルエンザ)、食欲不振、嘔吐、腹痛、胃腸炎、偏頭痛、不眠、倦怠、疲労に効能。外用ではニキビ、嗅覚欠損、虫刺され、ヘビの咬傷、皮膚感染症に効くとされています。日本では虫に食われやすいバジルは、トマトのそばに植えると虫食いになりません。

収穫後の夏の終わりに、畑に残った茎と根を煮出してみました。どの色もすべてを終えた命の末期を思わせる静かな色合いで、アルミで蒸栗色(むしぐりいろ)、銅で鶸茶色(ひわちゃいろ)、そして鉄で出た青白橡色(あおしろつるばみいろ)が実にクール。

夏真っ盛りの時期に葉ごとに出せば、もっと強い色合いになったことでしょう。

花言葉は「好意」「好感」「神聖 」「高貴」「良い望み」「強壮」
「憎しみ」「 何という幸運」 。
1/25 6/24 7/22 10/15の誕生花。


参考文献 / サイト

http://ja.wikipedia.org/wiki/バジル
http://ja.wikipedia.org/wiki/メボウキ
https://www.hana300.com
http://www2u.biglobe.ne.jp/~simone/more/pan/basil.htm
https://idun.exblog.jp/2280064/
https://www.takeda.co.jp/kyoto/area/plantno49.html
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 第99巻

 

| | コメント (0)

2019/09/12

ジュズダマ・ロザリオは璃寛茶

Juzudama01Jobs-tears (写真右→出典)

【学名】  Coix lacryma-jobi
【英名】  Job's tears
【別名】  ズズゴ、トウムギ(唐麦)、カワジュズ
【生薬名】 川穀(せんこく)/川穀根(せんこくこん) 
【科】     イネ科 

インドなどの熱帯アジア原産。水辺に生息する一年草です。
日本では稲作以前に食用としていて、稲作の伝来とともに栽培されなくなり野生化したという説があります。縄文人の主食の一つ、ということでしょうか。もともと自生していたものを縄文人が栽培していたのかもしれませんね。

学名のlacrymaはラテン語で『涙」を意味し、jobiは旧約聖書のヨブを指しています。それが英語名にも反映されていて、ジュズダマは欧米では「ヨブの涙』と呼ばれています。
ヨブ記は、神に信仰を試され数々の苦難に合い、それを乗り越えて神に祝福されるヨブの物語。このヨブさん、試練に合うたびにわんわん泣いて、最終的に「よく耐えた」と神様に褒めてもらって幸せになり、またまた号泣したという涙まみれの男。その涙、涙のヨブの物語を、涙型のジュズダマの実に連想したのでしょうか。
<<ヨブ記16章20節>>
わたしの友はわたしをあざける、しかしわたしの目は神に向かって涙を注ぐ。


そんなわけで、ヨーロッパの修道院では、この「ヨブの涙」でロザリオをつくるそうですよ。インドで貧しい人々の終末医療に身を捧げたマザー・テレサの愛用のロザリオも、ヨブの涙だったそうです。

でも、もともとジュズダマはヨーロッパにはなかったはず・・・はて。

日本を含めた東アジア各地では、このジュズダマをつないで子どもたちが首飾りや腕輪をつくる伝統的遊びがあります。これを布教のためにアジアにやってきた修道士たちが見て、涙型のジュズダマに「ヨブの涙」連想してロザリオに用い始めたのではないか・・・と推察しますが、いかがでしょう。
日本では、その名もジュズダマなので、仏教の念珠にあるかしらと探してみましたが、ムクロジはありますが、ジュズダマ製のものは見つかりませんでした。子供の遊びで終わっているようです。あまりに身近にたくさんあるものは、ありがたみを逆に感じないのかもしれませんね。

ちなみに、lacryma(ラクリマ)で思い出しましたが、ご存知ONE PIECEのドレスローザ編でヴィオラが繰り出す必殺技は「イエロ ラグリマ、目くじら!」。(で、目からクジラの形をした涙を出して、敵をやっつけちゃう) Lágrimaはスペイン語の「涙」。ラテン語圏、似ています。Hierroはラテン語でもスペイン語でも「鉄の」の意味。 鋼鉄の涙攻撃だったのか。
すみません、脱線しました。
Hierro_lacryma

ヨクイニン(薏苡仁)の名で知られるハトムギは近種。和漢三才図会には「薏苡には二種類あって、一種は殻が薄くて米が多く(ハトムギ)、一種は殻が厚く硬くて米は少なくて念珠にするとよい(ジュズダマ)」という記述が見つかります。

種子を採取日干しにして乾燥させたものを、生薬で川穀(せんこく)、また秋に根を掘り上げて、水洗い、日干しにしたものを、川穀根(せんこくこん)といいます。煎じて服用するとリウマチ、神経痛、肩こりに効果。健胃、解熱、利尿、解毒の効果があります。
慢性胃腸病、かいよう、下痢、リューマチ、神経痛、水腫、こしけ、イボとりや美肌保全にも高い効果を発揮するハトムギには及びませんが、ジュズダマを殻ごと砕いて代用にする、という記述も見当たります。

常磐にお住まいのYさんのお宅で、今年は一際ジュズダマがよく茂っているとお聞きし、まだ緑色の実がたわわについている茎葉を少し分けていただきました。
煮出すと、トウモロコシやエダマメを煮ているようなほっこりした香りが漂い、液はきれいな黄色に。
アルミで柔らかな淡黄色、鉄で海松色(みるいろ)、銅で得た力強い璃寛茶 (りかんちゃ)が特筆すべき美色。

花言葉は「祈り」「恩恵」「成し遂げられる思い」。
秋の季語。10/10・10/11・11/9の誕生花。


参考サイト / 文献

http://www.hana300.com/
http://www.e-yakusou.com/
http://ja.wikipedia.org/wiki/ジュズダマ
http://www.hanakotoba.name/
https://rosary-francesca.com/note/catholic/jobs-tears/
https://pfaf.org
・「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著 家の光協会
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢三才図絵」第103巻 寺島良安 / 著


 

| | コメント (0)

2019/08/25

ミント・呪いは美しき岩井茶色

Spearmint01 (スペアミント)

【学名】  Mentha spicata L.(スペアミント)
        Mentha x piperita L. (ペパーミント=セイヨウハッカ)
      Mentha canadensis L. var. piperascens,
          Mentha arvensis var.piperascens (和ハッカ)
      Mentha japonica(ヒメハッカ)
【英名】  Mint
【別名】  オランダハッカ(スペアミント)、チリメンハッカ(スペアミント)
【生薬名】 薄荷(はくか=和ハッカ)薄荷葉(はっかよう)
【科】    シソ科

古くからハーブとして用いられているミント。葉の小さいペパーミント、葉が大きく縮れているスペアミントなどいろいろな種類があります。
スペアミントはペパーミントよりよりもハーブとして用いられた歴史は古いそうです。
聖書でハッカとされている植物はスペアミントの一種ともされるナガバハッカ(Mentha longifolia)とされています。

学名の「Mentha(メンタ)」は、ギリシア神話に登場し、呪いによりミントに姿を変えたメンテ(Menthe)の名に由来。

<<ギリシャ神話・メンテの逸話>>
冥界の王ハーデースは、ニンフのメンテの美しさに心を奪われる。それを知った妻のペルセポネーは「お前などくだらない雑草になってしまえ」とメンテに呪いをかけてしまう。それ以来この草は「ミント」と呼ばれ、ハーデースの神殿の庭で咲き誇り続けた。地上でも芳香を放ち、人々に自分の居場所を知らせるのだという。

日本には在来種である和ハッカがあります。スペアミントは江戸時代にオランダから伝わったため、オランダハッカと呼ばれていました。

和ハッカについて和漢三才図会には「薄荷は猫の酒である」という面白い記述が見つかります。猫が食べると酔うのでしょうか・・・?試したらまずいでしょうね・・・。

生薬では薄荷葉(はっかよう)。中枢抑制、血管拡張などの効果があり、芳香性健胃、かぜの熱、頭痛、めまい、消化不良、歯痛などに効能。スペアミントでも同様の効能が期待できます。

メントールの含有量は和ハッカが一番多いと言われ、「農業全書」には、和ハッカの栽培の記述があります。
文化14年(1817年)には、岡山で盛んに栽培されたとされ、その後、広島、山形、北海道などと全国で栽培されて、昭和の始めには、世界のハッカの生産量のほとんどは、メントールを多く含む日本産だったといいます(!)
その後、合成メントールが開発され、日本産の天然メントールの輸出の必要が無くなり、主力輸出品目ではなくなりました。残念ですね。来年の畑ではぜひ和ハッカの栽培に挑戦したいと思います。

スペアミントは、メントールの含有量は他のミントに比べ少ないですが、チューインガムの生産のため、今でもアメリカで大量に栽培されています。

鎌倉の野原でも、昨今スペアミントをよく見かけます。たいへん繁殖力旺盛で、夏の間は散歩のついでに摘んで、よくサンティーなどを作ったりしていましたが、今まで染めたことはありませんでしたので、この夏、初めて煮出してみました。すっきりとした涼しい香りが漂って(染場は暑かったですけどね・・・)、濃いうぐいす色の液になりました。

アルミ媒染でカナリヤ色、銅で市紅茶(しこうちゃ)、鉄で岩井茶。どれも透明感があり、堅牢です。

花言葉はミント全般では「美徳」「効能」 。スペアミントでは「あたたかな感情」。
3/16、7/21、12/21の誕生花。

◎参考サイト/文献◎

http://ja.wikipedia.org/wiki/スペアミント
http://ja.wikipedia.org/wiki/ニホンハッカ
http://ja.wikipedia.org/wiki/ペパーミント
http://www.e-yakusou.com
https://hananokotoba.com
http://www.hana300.com
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 2」 北隆館
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 3」 北隆館
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第93巻
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社

(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房  禁転載

 

| | コメント (0)

2019/07/20

カジノキ・押しも押されぬカミサマ色

Kaji02 Kaji03

【学名】  Broussonetia papyrifera    
【英名】  Spearmint
【別名】  ノロカジメ、アマタ、イヌタ
【生薬名】 楮実(ちょじつ)、楮桃、穀実(こうじつ)
【科】     クワ科

学名の「papyrifera」は、「紙をもった」の意。実際コウゾの仲間で、古い時代においては、ヒメコウゾとの区別が余り認識されておらず、現在のコウゾはヒメコウゾとカジノキの雑種といわれています。

また、江戸時代にシーボルトもこの両者を混同してヨーロッパに報告したために、今日のヒメコウゾの学名が「Broussonetia kazinoki」となってしまっているそうです。

古代より、神道では神聖な木とされ、諏訪神社の家紋にも用いられています。
Kaji09(鎌倉市玉縄にある諏訪神社のお正月祭事にて)

平安期には七夕行事において、カジノキの葉っぱ7枚に願い事を書く習慣がありました。これが現在、笹に短冊を飾る風習のもととなっています。
紙が高級品であった平安期、この大きな葉は、お習字の練習に使われていたんだそうです。短冊を飾るのは、文字の上達を願うという意味もあるそうです。

鎌倉鶴岡八幡宮の七夕祭事では、カジの葉っぱをかたどった短冊に願い事を書くことができると聞き、7月7日に、どれどれ、とでかけてみました。あ、ホントだ。
Kaji04

せっかくなので、一つ求めてお願い事を書いてきました。
ピンクと緑2枚で一組のカジの葉短冊は、一組ずつ、撚っていない麻の繊維でくくられています。
舞殿の周りに設けられた、お納めする結び処には、本物の梶の葉もくくってあります。
Kaji07 Kaji06

舞殿の脇に、梶の木があって、実がついていました。
ちょうど、神事に使われるのでしょう、神官さんたちが葉をとっておられました。
Kaji01

ちなみに、七夕飾りの「吹き流し」は、織姫が機織りに使う糸を表していて、機織り、裁縫などがうまくなりますように、という願いが込められているそうです。
Kaji05

和漢三才図会には「楮(こうぞ)」の項目に「穀(こう)と楮(ちょ)は同一種で枝葉もよく似ており、はっきりと区別することはできない」とあります。おそらく、ヒメコウゾとカジノキではないかと思います。さらに「皮をはぎ、搗いて煮て紙に造る。またつむぎ練って布につくる」とも。

生薬としても用いられていたようで、楮実・楮桃の名で「精力萎縮・水腫を治す。気を益し、肌を充実させ、目を明らかにする。長らく服用すると飢えず老いず、筋骨を壮健にして虚労を補う。」とあります。使えるな、カジノキ。

八幡宮の木から試染用に葉っぱをいただくのは無理そうだわね・・・。こりゃやっぱりどこかで調達してこなきゃ・・・とつぶやいてみたら、なんと、お庭に植わっているという大和市の方が、わざわざ送ってくださいました。(感謝!!)

どうやら雌の木。枝葉を煎じたところ、生薬の効能を反映するような濃い液となり、どの媒染でも、冴えわたった強い色を得ました。
すず媒染で鮮やかな山吹色、銅で鶯茶、鉄では冴え冴えした緑味の黒

コウゾの花言葉は「過去の思い出」 。カジノキも、紙の材料となり記録を留めたという点で、同じ花言葉と考えよいのでは。コウゾの季語は仲夏ですが、「梶の葉」では秋。

◎参考サイト / 文献◎
http://ja.wikipedia.org/wiki/カジノキ
https://hananokotoba.com
http://www.hana300.com
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 2」 北隆館
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第84巻
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店

 (C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房  禁転載

| | コメント (0)

2019/03/18

ユズ・お肌すべすべのカナリヤ色

Yuzu01

【学名】   Citrus junos
【英名】   yuzu
【別名】   ユ、ユウ、ユノス
【科】    ミカン科

中国揚子江上流の原産。
ホンユズは、奈良時代にはすでに渡来しており、平安時代には栽培していた記録が残っています。
対してハナユズは、日本原産であるといわれますが、定かではありません。

古名「ユノス」は、果汁を酢の代わりに用いたことから「柚の酸(ゆのす)」といわれたことに由来するそうです。これがそのまま、学名となりました。現在の「ユズ」も「柚酸」からきています。

和漢三才図会には、「柚の実は食を消化し、酒毒を解し、妊婦で食欲のないのを治す。柚の皮は気を下し、隔(胸部)を快くし、痰をなくし、憤懣(ふんまん)の気を散じさせる。」とあります。確かに、ユズの芳香には、気持ちを落ち着ける効果があるように思います。オレンジのような甘さはなく、レモンほど強い酸味は感じさせない、まさしく、和のすっきり系トップノート。

果実には、ビタミンC、クエン酸、酒石酸を含み、果皮には、ピネン精油、シトラール、リモーネンを含みます。果肉、果汁を肌につけてこすると、ひび、あかぎれ、しもやけなどの肌荒れを改善。 冬至に柚子風呂をたくのは、風邪予防、血行を促進して、神経痛や冷え性を改善、などの他、この、肌荒れ対策の意味もあるようです。リウマチには、種を黒焼きにしたものに熱湯を注いで飲むと良い、という記述も見当たります。種のぬめりに肌荒れを防ぐ薬効が特に多いといわれます。

<<ユズの種の化粧水>>※ご使用前にパッチテストしてください。
◆材料◆
・ゆずの種(洗ってないもの、ぬめりを取らないことが大切!)
・ゆずの種の3〜10倍量の焼酎(35度)
◆作り方◆
しっかり蓋のできる容れ物にゆずの種と焼酎を入れる。ときどきゆすって混ぜながら、冷蔵庫に入れて1週間以上漬け込み、液体がトロッとしてきたら出来上がり。
冷蔵庫で1ヵ月くらい保存できる。
これに好みの分量でグリセリンを足して使う。ただし、柑橘系の化粧水は紫外線によるシミの原因になりやすいので、夜、就寝前などに使用すること。

冬の日本料理にも欠かせないアイテム。お吸い物にユズの皮がちょっと刻んであるだけで、どうしてあんなに華やぐのでしょう。柚子胡椒、バンザイ! 柚子味噌、バンザイ! 
来年はぜひ、ゆべし(柚餅子)に挑戦したいと思います。

成長が遅いことでも知られ、「桃栗3年、柿8年、ユズの大馬鹿18年」などといわれます。大馬鹿はひどいですが、実際、栽培にあたっては、種子から育てる実生栽培では、結実まで10数年かかってしまうため、結実までの期間を短縮するため、カラタチへの接ぎ木によって数年で収穫可能にすることが多いそうです。そういえば、ユズの枝もカラタチに負けないぐらいの鋭いトゲがあります。

剪定したユズの枝葉をいただいたので、煮出したところ、芳香を放ちながら、濃い黄色の液となりました。スズでカナリヤ色、銅で璃寛茶 (りかんちゃ)、鉄でうぐいす色から麹塵色

花言葉は「健康美」「汚れなき人」「恋のため息」。
5/21、12/31の誕生花。冬の季語。

◎参考サイト / 文献◎

https://ja.wikipedia.org/wiki/ユズ
http://www.e-yakusou.com/
http://hananokotoba.com/
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「薬草の自然療法」 東城百合子/著 池田書店
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第87巻
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店

(C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

| | コメント (0)

2019/03/03

リュウゼツラン・燃え尽きて白橡(しろつるばみ)

Ryuzetsuran02 Ryuzetsuran01

【学名】  Agave L.(リュウゼツラン属),
      Agave americana var. marginata(アオノリュウゼツラン)
【別名】    マンネンラン, マゲイ(maguey)
【英語名】 Agave, Century plant
【科】     リュウゼツラン科

メキシコ原産。日本には、江戸時代の天保年間(1830〜44)に斑入りの種類が渡来しました。
その後、明治になって原種である葉に斑のないアオノリュウゼツランが渡来。

学名のagaveはラテン語で「高貴な」の意味。確かに、"エリザベス一世"みたいな、近寄りがたい空気感をまとっています。

アステカ文明以来、メキシコの先住民の間では、リュウゼツランの葉から繊維をとって衣服としていました。木綿以前の"原始布"なのだそうです。日本でも、木綿が普及する17世紀以前の繊維は大麻、苧麻、葛づるなどから取る草繊維が衣服を支えていました。似ていますね。

Ryuzetsuran03 (写真出典)

葉の皮(ミショテ)は、紙として用いた歴史もあるそうです。

数十年に一度しか花が咲かず、咲くとその株は枯れてしまうことが知られています。
リュウゼツランは、デンプン質が豊富で、「種を粉にひいたものはスープにとろみをつけるのに使ったり、他の粉と混ぜてパンにすることもできる。」という記述も見当たります。

そしてすごいのはここ!
その何十年に一度の開花期には、蓄えていたデンプン質を糖に変えるのだそうですよ!
もともと熱い乾燥した気候の植物ですから、その厳しい環境で花を咲かせるというのは、まさに命がけの大仕事なんですねぇ。そして、白く燃え尽きる・・・ジョーっっ!!

その糖分たっぷりの茎からは、サトウキビのように甘味料がとれまして、これをアガベシロップといいます。花芯もたいへん甘く、栄養価が高いそうです。また、花の茎はアスパラガスのように料理できるとも! やってみたーい!

この糖質を用いて作る蒸留酒を総称して「メスカル」といい、その中でもメキシコで作られる特に上等な蒸留酒が、有名な「テキーラ」です。

中央アメリカでは古くから、リュウゼツランの葉汁は湿布薬などに用いられてきました。服用すれば下痢、赤痢を癒やし、利尿効果や便通を良くする効果がある、という記述も見当たります。

2018年夏。雪ノ下の横浜国大附属の校庭のフェンス沿いあったリュウゼツラン。突如、10mほどのトウがにょきにょきと立ち、黄色い花が咲きました!
咲いているときは、通り掛かる人たちがみんな写メっていました。

冬になるとそのまま立ち枯れ、花茎の様子は、よく手入れされたマツのようでした。
数十年に一度のことなので、学校にお願いして、その枯れかけた株から葉を一枚いただきました。

「アロエのおばけ」ぐらいの構えでなめていたら、とんでもなかった。
葉の形状を龍の舌に見立てただけあり、古い葉は、刃物も容易に寄せつけないほどの硬さ!!
まるでかつお節。

なんとか、切り出しましたが、見ると、竹のような繊維の集合体でした。

戦前までは、サポニンが多いリュウゼツランの葉は、洗剤代わりに使われたこともあったそうです。(いやいや、すばらしく有用な植物ですね)
サポニンの多い植物は鉄媒染で紫が染まることが多いのですが、こちらの株は、命の火が尽きかけていたせいか、染液は黒黒としていましたが、アルミで白橡(しろつるばみ)色、銅で桑染 (くわぞめ)色、鉄で黄唐茶(きがらちゃ)
どれも総じて薄い染め上がり。大仕事を終えて、まさに戦いのリングで白く燃え尽きたような色合いでした。

花言葉は「繊細」「気高い貴婦人」。

◎参考サイト / 文献◎

https://ja.wikipedia.org/wiki/リュウゼツラン属
http://www.pfaf.org
https://horti.jp
https://tabimap.net/mex/?p=400
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房

(C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

| | コメント (0)

より以前の記事一覧