鎌倉染色彩時記(染)

2023/01/26

ブナノキ・目覚める縄文DNAの唐茶色

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(写真出典 :   )


【学名】   Fagus crenata
【英名】   Japanese Beech 
【別名】   白橅(しろぶな)、 ソバグリ、ソバグルミ
【科】      ブナ科 

日本の温帯林を代表する落葉広葉樹。
北海道の道南の渡島半島を北限に、本州、四国、九州の南は鹿児島県まで分布します。

青森県津軽平野から秋田県能代にかけての白神山地は、最大級のブナの原生林としてよく知られ、1993年に日本で初めてユネスコの世界遺産に登録されました。

「橅」の字を当てるのは俗用。
腐りやすく役に立たないという意味で「木では無い」とされた・・・ってずいぶんな。

和漢三才図会にも「花はウツギの花ににて小さく白色。美とは最も縁遠い。柔らかで脆く溶剤とすることはできない。紀州の黒江(和歌山県海南市)にて杓子などを作っているだけである。最下級品」とさんざんな書かれよう・・・。

が、実際は、材質が堅く(?)緻密であるらしく、家具・曲木細工・パルプ材などに用いられているそうですよ。どういうこっちゃ。
燃焼に強いために、吹きガラスの木型に用いられることも。鬼つよぢゃありませんか。

そうそう、以前うちで上映会をした映画「奥会津の木地師」では、会津塗り用の生地椀を山の民の人々がブナで削っている様子が紹介されていましたよ! (この映画、必見です! 1000年の凄技!) 「木では無い」なんて、とんでもないわ。

古くは屠られた動物の骨や皮などをその枝にかけて供養する供儀の木とされいたらしい。また葉ずれの音から未来を占ったり、芽の出し方で景気や天候を占う地域もあったとか。同様の話は西欧にもあり、古代ローマの歴史家タキトゥスの「ゲルマニア」には、古代ゲルマン民族の風習として、ブナの枝を切って占いに使う話が紹介されています。

デンマークの国歌(市民国歌)には、ブナの木がうたわれています。

麗しき国がある
磯の香り満つバルト海の岸辺に
ブナの木が誇らしげに枝を広げる
丘や谷に風が優しく吹き降りる
古(いにしえ)の人々はデンマークと呼んだ
女神フレイアが住まうところ  

※フレイア・・・北欧神話に登場する愛と美の女神

別名のソバグリやソバグルミは、ブナの実がソバの実に似ている、胚乳がナマ食でき味がくるみに似ている、などに由来します。

ブナの原生林・・・日本古来の森の代名詞といってよいのでは、というくらい、個人的に心の深いところをくすぐられます。なんというか、自分の中にふかーく眠っている縄文のDNAがムズムズするのです。
西行さんは「花(桜)のもとにて春死なん」と言いましたが、私は秋、紅葉したブナの葉っぱを浴びながら秋に死にたいと思っています。


枯葉と枝では江戸茶色唐茶色海松(みる)色。実のカラでは黄朽葉色鶯茶海松色など。

山崎青樹氏によれば、新鮮な葉を煮出すと、鮮やかな朱色が染まるそうで、まさに縄文の赤だな、とその文献に載っている写真を見て思いました。いずれ機会があればぜひ、染めてみたいと思っています。


木言葉は「繁栄」、花言葉は「独立」、「勇気」。


◎参考サイト / 文献

http://ja.wikipedia.org/wiki/ブナ
http://www.e-yakusou.com/
http://morinokakera.jp/

・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・「続・草木染め 染料植物図鑑」 山崎青樹/ 著 美術出版社
・「和漢三才図絵」第87巻 寺島良安 / 著

 

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2023/01/09

キウイ・やるな、サル桃! な柿茶

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【学名】  Actinidia chinensis Actinidia arguta(サルナシ)他 変種多数
【別名】  オニサルナシ、シナサルナシ、サルモモ
【生薬名】 獼猴桃(びこうとう)
【科】     マタタビ科 

学名のActinidia(アクティニディア)は、マタタビ属を示し、ギリシャ語の「aktis(放射線)」が語源。
雌花の柱頭(雌しべの先端の花粉を受ける部分)が放射状に並ぶさまから。(図を参照) 雌雄異株。


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日本で流通するものの90%がニュージーランド産で、「キウイ」の名も、同国の国鳥に姿が似ていることに由来していることは周知ですね。

だから私は原産地もNZなのだと勝手に思っていて、昨今、日本でも本格的に生産に乗り出してきている様を横目に見ながら「すごいよね、日本の農家は。NZのものはNZに任せておけばいいのに、作っちゃうんだからなぁ」なんてこれまた勝手に感心したりしておりました。

ところが調べてみれば、原産はなんと中国。
しかも、現在、生産量の世界1位はイタリアで、2位が中国。ニュージーランドは3位なんだそうですよ。

江戸時代の百科事典「和漢三才図会」にも「サルモモ」の名で記載されていました!

「山谷に自する。高さ2,3丈(3〜9m)。枝は柔らかで多くは木に付いて生育する。葉はまるく、毛がある。身の形は梨のようで色は桃のようである。わかいのは極めて酸っぱく、10月に爛熟して、色が淡緑になると味は甘美で、食べるとよい。木皮は紙に作ることができる」

とあり、古くから日本にも自生していたことが伺えます。紙も作れるんだ!
今のNZのものは、もともとあった中国のActinidia chinensisから様々に品種改良を繰り返したものが定着しているようです。

知らなかった・・・鎌倉でもちらほらとキウイ棚を見かけますが、日本で育てるの、実は向いていたんですね。

10月ころ、果実が7分程度熟したころに採取して、5ミリくらいの輪切りにして、天日で乾燥させたものを生薬で、獼猴桃(びこうとう・か、書けんよ、この漢字!)といいます。

風邪、扁桃腺(へんとうせん)などの高熱、糖尿病、黄疸(おうだん)、むくみに効能。また利尿や熱を下げて口の渇きを止める作用も。

剪定したツル状の枝をいただきましたので煮出してみました。
染液はほんのりと桃色になって、アルミで赤香(あかこう)、銅で柿茶柿渋色、鉄で煤色(すすいろ)となりました。
量が多ければ、より赤みの強い色も染まると思います。


花言葉は「ひょうきん」「生命力」「豊富」。


◎参考サイト / 文献

http://ja.wikipedia.org/wiki/キウイフルーツ
https://greensnap.jp
http://www.e-yakusou.com/
https://www.hana300.com
・「和漢三才図絵」第90巻 寺島良安 / 著

 

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2022/12/18

ベゴニア・ブラジル美人は薄紅色


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【学名】   Begonia semperflorens (= ベゴニア・センパフローレンス)
【和名】   シキザキ(四季咲き)ベゴニア    
 【科】   シュウカイドウ科 

ブラジル原産。明治初期に渡来て、今ではすっかり日本のお花。「となりのみよちゃん」的な風情が、昭和な日本のお庭を彩ってまいりましたね。
・木立ち性
・根茎性
・球根性
と、実に種類が多く、「ベゴニア」はそれらの総称です。

日本では、一年中花をつける木立ち性のセンパフローレンスの仲間が園芸として広く出回っています。
(和名の「四季咲き」は一年中花をつける様子から)

センパフローレンスは、葉挿し、水挿しで容易に増やすことが可能ですが、球根性のものは温室管理などが必要。
木立ち性の中のレックスベゴニアはインド・ベトナム原産で葉に美しい模様があります。

日本には古くから、同じ仲間のシュウカイドウがあり、風情がたしかによく似ています。
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和漢三才図会にはその花姿を賞して「なよなよと柔軟で、綺麗に化粧した美人をみるようである」という記述が見つかります。
ベゴニアには、なよなよした印象は、ないな・・・そこがブラジル産か。うん、なんか、花陰にサンバのリズムが聞こえてきます。
・・・それも浅草カーニバルの。

夏の終わりに工房の花壇に植えたセンパフローレンスが徒長したので、選定し、試しに煮出してみました。

まったく期待していなかったのですが、なんと、美しいワインレッドの染液となってびっくり仰天!

媒染の金属の違いによる色の違いがほとんどなく、絹が古代色でいう虹色、濃染処理した木綿は灰桜色。そしてウールが一番発色がよく、しっかりした薄紅色に。
4ヶ月経った今でも色は変わらないですが、ウール以外、日光堅牢度にやや難ありでしょうか。

それでも、植物染色でこのような紅色は、スオウやベニバナなど、特別な染料でしたかなかなかお目にかかれないので、ちょっと興奮しました。
うまく花壇のベゴニアが冬を越してくれたら、また染めてみたいと思います。

ベゴニア全般の花言葉は「親切」「幸せな日々」「片思い」「愛の告白」。赤い花は「公平」。 
9/28の誕生花。


◎参考サイト/文献

http://www.hana300.com
https://www.shuminoengei.jp/m-pc/a-page_p_detail/target_plant_code-217
https://rennai-meigen.com/begoniahanakotoba/#i-4
https://shiny-garden.com/post-2689/
https://ja.wikipedia.org/wiki/ベゴニア・センパフローレンス
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館

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2022/09/24

ケヤキ・美は強し、な黄金色

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【学名】  Zelkova serrata Makino
【英名】  Japanese zelkova
【別名】  槻(つき) 
【科】    ニレ科 

朝鮮半島、中国、台湾と日本に分布し、日本では本州、四国、九州に分布する落葉高木。

暖地では丘陵部から山地、寒冷地では平地まで自生します。特に関東には多くみられ、武蔵野を代表する高木だそうです。(武蔵野はムラサキグサも有名ですね。)

古い日本語の形容詞「けやけき」。尊い、美しい、優れた、といった意味があるそうですが、樹形の美しさ、秋に黄色から赤に変ずる紅葉の美しさから「けやけき木」と呼ばれていたものが「ケヤキ」に転じたと言われています。

別名の「つき」は「強い木」から。
木に勢いがあり、巨木となりやすく、また1000年を超えるものもあることから古くから神聖視され、「日本書紀」には飛鳥寺のケヤキの木の下で重要ごとが執り行われたという記述もあります。

材が硬く、水に強いこともあって、昔から建築材として用いられてきました。
奈良の唐招提寺、京都の東西本願寺、清水寺の舞台、皇居桜田門もケヤキ製だそうです。
天然記念物となっている銘木も多いですね。 「高槻」などの地名も、大きなケヤキのある場所、ということかもしれません。

漆塗りの木地、家具などにもよく用いられます。

和漢三才図会によれば、中国で「欅」はクルミ科カンポウフウをさします。こちらも材が良質なことで知られ、葉はアマ茶となります。 
同書には①真槻 ②槻欅  ③石欅の3つのケヤキが紹介されています。

「槻欅(つきけやき)は材としては良質ではないが、「槻弓」の言葉がある通り、弓を作るのによいらしい。石欅(秋ニレ)は、材が一番硬い。」などの記述が見つかります。
この時代の分類の基準は、現代の植物学とは異なるので、今の「ケヤキ」がどれをさすのかを判断するのはちょっと難しいです。が、いずれにしても、姿が美しく、強い木、ということで間違いないでしょう。(ごーいんな括りですみません・・・)

その神聖さ、用途の広さから、無駄遣いを戒めるためか、ケヤキにまつわる俗信が各地に伝わります。
・ケヤキが一斉に芽ぶかぬ年は、晩霜がある(広島、群馬など)
・ケヤキの薪を3年焚くと目が潰れる(長野)

「強い木」は、硬く、雨に強いことを意味しますが、総じてそうした木はタンニン質を多く含むため、染料として優秀なものが多いです。

ありがたいことに、工房には仲間たちから「これ、使える?」といって、折々いろんなものが届きます。
水曜日の染めの教室では、そんな貴重な頂き物、小田原の木工所から届いた欅(けやき)のけずりカスを煮出しました。

ケヤキも「強い木」の例に漏れず、どの媒染でも、絹、ウール、綿麻のいずれも押し出しの良い堅牢な色を染め上げました。
アルミでは神々しいほどの黄金色、銅で黄色味の濃茶、鉄で濡れそぼる藻の色

花言葉は「幸運」「健康」「長寿」。12月21日の誕生花。


◎参考サイト 文献

http://www.hana300.com/
https://ja.wikipedia.org/wiki/ケヤキ
https://greensnap.jp/article/8622

・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房

 

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2022/09/12

マルバルコウソウ・かわいいけど仙斎茶

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【学名】  Quamoclit angulata Bojer, Ipomoea coccinea L.
【英名】  Red Morning Glory、Redstar, Mexican Morning Glory
【別名】  ルコウアサガオ
【生薬名】 
【科】   ヒルガオ科 

南米原産のつる性一年草。
幕末に観賞用で持ち込まれたものが日本各地で自生するようになりました。

学名のQuamoclitは、ギリシャ語の「kuamos(マメ)」+「klitos(低い)」の意で、マメに似た蔓性の植物を表します。

葉が櫛状になった同類のルコウソウ(縷紅草 Ipomoea quamoclit)は、さらに古くに持ち込まれたようで、和漢三才図会にも記載されています。
鉢植え、垣根などに仕立てるなど、園芸用として人気。、やはり、現在では各地で自生。

つるを伸ばして、他のものに、左巻きに絡み付いて、3m程度に伸びます。葉は互生、長い柄があり、心形で無毛、先端はピッと尖っています。

夏から秋に、葉腋から柄を出して、先端にロート状の朱紅色の小花を数個つけます。
工房にほど近い空き地の金網フェンスにこのマルバルコウソウが絡み付いていて、夏の終わりに赤い点々が遠目にもくっきりと目に飛び込んで来ます。サルスベリとか、ザクロとか、ノウゼンカズラとか、そしてこのマルバルコウソウも、夏に咲く花なんと力強いことでしょう!特にこのマルバルコウソウは鬱蒼とした濃い緑の中に、きりりとした紅色の星形の花が飛ぶ様子が、たいそう可憐です。


ルコウソウ、マルバルコウソウともに 民間療法では痔の薬、解熱剤として知られています。
夏に全草、根を採取して、水洗いして刻み、天日で乾燥させたものを煎じて服用するとよいそうです。

つると葉を煮出してみました。アルミで白つるばみ、銅でオリーブグリーン、鉄では緑味のグレーから仙斎茶。花の咲く前なら、緑にもっと冴えがあるかもしれません。可憐な様子に反して、かなり渋いラインナップ。

ルコウソウ全般の花言葉は、「おせっかいな人」「私は忙しい」「常に愛らしい」「世話好き」。
8/10・8/11の誕生花。

http://www.e-yakusou.com/
http://ja.wikipedia.org/wiki/マルバルコウ
http://www.memidex.com/
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「色の手帖」小学館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 第96巻

 

 (C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房  禁転載

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2022/08/26

藍の生葉染め

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8月の染め教室。その2。

藍の生葉染め。

今年も裏庭の畑の一角に、藍のタネを蒔きまして、無事、虫に食われることなく育ちました。
いつもは収穫した葉は乾燥させて、還元剤と一緒に煮出す方法で染めていたのですが、今年は生葉で染めました。

ちょー簡単。

刻んだ生葉を水と一緒にミキサーに入れて濾します。
その汁に浸けるだけ。媒染も不要です。
気をつけるのは、汁が酸化する前に手際よく染色することぐらい。

絞り上げて空気中で酸化させるとだんだん青くなってきますが、それでは十分でない場合は、オキシドールをいれた水に入れると一気に青くなります。

残念ながらあまり堅牢度はよくありませんが、その清涼感あふれる色合いをしばらく楽しむには十分ですね。

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2022/08/24

豆汁でござる。

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8月の染め教室。今日は盛りだくさんの内容でした。

その1。

いつもは基本的に浸染を行なっていますが、「絞り染以外にもっと布に模様をつけてみよう」ということで、顔料をつかった手描き、簡単な型染め、版押しに取り組みました。

顔料とは岩絵の具、つまり、鉱物や貝などを粉にしたものです。
日本画ではこれを膠(にかわ)に溶いて使いますが、染色の世界では豆汁(ごじる=豆乳)をバインダーとして使います。

沖縄の紅型がこれです。
「染める」というより「ペイントする」という感覚ですね。

前の晩から水につけておいた大豆を水と一緒にミキサーにかけて、豆汁をつくりました。

 

 

 

これに「にがり」を入れればお豆腐ができます💕
で、濾したカスは「おから」です。手絞りのおからは旨味が残っていて美味しいのです💕
さっそく夕飯に。


余ったDMのハガキで型を彫ったり、おしゃれな穴あけパンチで型抜きしたりして版をつくり、刷毛で刷り込んだり。生徒さんがインドネシアで特注したバティックの型で版押ししたり・・・今日は思い思いに実験しました。
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いつもの浸染と組み合わせて、少しずつ作品にしてゆきたいと思います。

嗚呼、おから、美味だった。

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2022/08/18

イソギク・海辺の涙は支子色

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【学名】  Chrysanthemum pacificum, Dendranthema pacificum
【英名】  Chrysanthemum pacificum
【別名】  イワギク(岩菊)  
【科】   キク科 

関東、東海地方、伊豆諸島の海岸の崖に生える多年草。日本固有種です。園芸種としても人気で、栽培もされています。10〜11月に小菊のような黄色い花が集まって咲くのが、かわいいです。

何年か前の夏に、ルート134号線沿いの稲村の切り通し付近に、染色用のヨモギを取りに行ったところ、なんか、ヨモギの群生の中にちょっとみなれない一群がいて、調べてみたら、このイソギクでした。

学名の「Chrysanthemum」は、英語で「菊」を表す言葉ですが、もともとラテン語で、「chrysos(黄金色)+anthemon(花)」が語源。「pacificum」 は「太平洋の」の意。

イソギクにまつわるある民話があります。

静岡県伊東市城ヶ崎海岸の、門脇の吊橋の山側にある崖と崖の間の狭い入り江(浜)を「半四郎落し」という。
昔々、城ヶ崎海岸門脇岬に近い富戸村に、半四郎とおよしと仲のよい夫婦が住んでいた。
ある日、半四郎はひとり海へ「トジ」(しっくい壁に使う海草)を採りに出かけた。その日は潮も引き波も静かで半四郎は背負い籠いっぱいのトジを採ることができた。
帰途についたが途中、崖の上でしばらく腰を下ろして休んでから、「さて、帰ろうか」と、腰を伸ばした瞬間、背中のトジの入った背負い籠に引かれ「あっ」という間に崖下の海に転がり落ちてしまった。
村人から半四郎が亡くなったことを聞いたおよしは、それはそれは悲しみ、毎日のように半四郎が亡くなった崖の上に立っては涙を流す日が続いた。
以来、城ヶ崎一帯の磯には、毎年秋になると風に飛び散ったおよしの涙にも似た黄色く可憐なイソギクの花が咲くようになり、半四郎が亡くなったところを「半四郎落し」と呼ぶようになったという。


134号線沿いで摘んだとき、キク科独特の強い芳香が漂い、煮出すとさらに香りました。どの媒染でも大変堅牢な押し出しの良い色を染め上げました。
アルミで支子色(くちなしいろ)、銅で桑茶色、鉄で濃い海松色(みるいろ)。                 

花言葉は、「清楚な美しさ」「感謝」「静かな喜び」「大切に思う」。
10/10,11/17の誕生花。

◎参考サイト / 文献
http://www.e-yakusou.com/
http://ja.wikipedia.org/wiki/イソギク
https://minhana.net/wiki/イソギク
http://www.weblio.jp/
http://www.language-of-flowers.com/hana/se-434/

 

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2022/08/05

アオギリ・鳳凰のすみかは山鳩色


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【学名】  Firmiana platanifolia (L.f.) Schott et Endl,
      Firmiana simplex (L.) W.F.Wight
【英名】  Chinese parasol tree, Phoenix tree
【別名】  梧桐(ごとう)、蒼梧(そうご)、碧梧(へきご)、ケナシアオギリ
【生薬名】 梧桐子(ごとうし=実) 梧桐葉(ごとうよう=葉)
【科】   アオギリ科

中国南部、東南アジア原産の落葉広葉高木。沖縄に自生するほか、日本へは奈良時代に渡来し、広く各地に植えられました。
本州、四国、九州にも分布し、伊豆半島や紀伊半島などの暖地に野生化した状態でみられることもありますが、塩害や、大気汚染にもよく耐えるので、街路樹や庭木などにして植えられているものが多いです。
近年は温暖化の影響か、鎌倉周辺でも実生のアオギリを時々見かますね。

キリ科のキリを「白桐」と呼ぶのに対し、大きな葉が桐に似て、幹が蒼いことからこの名があります。
7月中旬に黄色い花をつけ、秋にグリンピースのような実をつけます。さく果の一辺に種がツブツブとくっついているのがちょっと不思議です。
20181002kosugi_13 (写真出典)

葉と実が薬用となることが知られています。葉は、春~夏まで採取して、細かく刻んで天日で乾燥して、ミキ サーで粉末にして保存。種子は、10~11月に熟した果実を採取してたたいて種子を集めて天日で乾燥させる。血圧降下、動脈硬化予防には、葉の粉末に熱湯を入れて、1日3回食後に飲用。
腹痛・胃痛には、乾燥した種子10グラム水0.6リットルを煎じて1日3回に分けて服用すると、即効で症状が改善するといいます。飲み続けると健胃の効果あり! 炒ってつぶしたものを含むと口内炎や咳止めにも。

また、種子を潰して白髪に塗ると毛が黒くなるとも。・・・まじで?! 

材は柔らかく細工しやすいので、昔から家具、楽器、下駄などをつくったそうです。和漢三才図会にも「山間に生えたもので楽器をつくる」の記述が見当たります。
そういえば、中国の「古琴」は伝統的にアオギリで作られることで知られていますね。

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故宮博物院蔵 の古琴・「大聖遺音」(唐朝肅宗元年(756年) )


びっくりなのは和漢三才図会のこれ。
「梧桐は月日の正閏を知るという。葉は十二生え、一辺に六葉ある。下から数えて一葉を一月とし、上は十二月に至る。閏のある年は十三葉生え、小さな葉を閏とする」という遁甲術の書の一説を紹介しています。
これはすごい! カレンダー・ツリーですか! 今度じっくり観察してみることにしましょう。閏年は13枚・・・絶対だな、アオギリ!

中国の故事では、アオギリは鳳凰が棲むとされています。このことを受けて、日本の花札に「桐に鳳凰」の一枚がありますが、ここに描かれているのはアオギリではなく「桐」。いつの間にか入れ替わってしまったんですね。

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毎年、自宅の庭の片隅に夏になるとぼぼーんと大きな葉を広げてすくすく育つ実生のアオギリがありまして、煮出してみました。青黒い液からは、
アルミで榛色(はしばみいろ)、銅で肥後煤竹色(ひごすすたけいろ)、鉄で山鳩色が得られました。


花言葉は「秘めた意思」「秘めた恋」「逞しい」。9月3日の誕生花


◎参考サイト / 文献

https://ja.wikipedia.org/wiki/アオギリ
http://www.e-yakusou.com
http://www.hana300.com
http://yamasakuran.seesaa.net/article/484834948.html
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・「草木染め 染料植物図鑑」 山崎青樹/ 著 美術出版社
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 

 
(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房  禁転載

 

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2022/07/28

ヤマボウシ・僧兵は璃寛茶色

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                   ※実の写真出典



【学名】  Cornus kousa , Benthamidia japonica,
      Cynoxylon kousa Nakai 
【英名】  Kousa Dogwood, Japanese Flowering Dogwood
【別名】  ヤマグワ, イツキ, カラグワ

【科】   ミズキ科 

本州、四国、九州及び朝鮮半島、中国に分布。学名の「kousa」は、 昔の箱根の方言でヤマボウシを「クサ」と呼んだことに由来するそうです。「Cornus(コーナス)」は、ラテン語の「cornu(角)」が語源。材質が堅いことから。
ヤマボウシ(山法師)の名は、淡黄緑色の丸い蕾(つぼみ)を、比叡山の僧兵の頭に見立てて、白い4枚の総苞片を、頭巾に見立てたところから。

・・・なるほど。
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(鎌倉もののふ隊 名物「もののふツアー」で弁慶に扮した参加者)



ただ、シーボルトは「山帽子」と思っていたらしく、シーボルトの「日本植物誌」には、「山の帽子という名が示す通り、高地を原産とする。」という記述が見当たります。
(シーボルト先生、けっこうこの手の間違い、やらかしてるのよねぇ・・・。)

秋に赤く熟した実は、ビタミンやカロチン、アントシアニンなどを含み、滋養強壮や疲労回復などの効能があるといわれています。果肉がやわらかくマンゴーのような甘さがあるそうです。果皮も熟したものはとても甘く、シャリシャリして砂糖粒のような食感があるとか。食べてみたいなあ。写真で見る限り、確かにちょっと、トロピカルフルーツの雰囲気を醸し出しています。果乾燥させてから利用すると、下痢や腹痛にも効くそうです。やるじゃん、弁慶さん。

ジャムや果実酒としても楽しめます。

<<果実酒の参考レシピ>>

● ホワイトリカー 実の3倍の量
● 氷砂糖 ホワイトリカー1Lに対して100g
● レモン 1/4個3ヶ月ぐらいで実を取り出し、布でこして寝かせておく。


ちょうど花盛りの時期に、北鎌倉のとあるお宅から枝葉を貰い受け、煮出してみました。
1時間ほどで、大変濃い液となり、どの媒染でもとても堅牢で透明感のある冴えた色を染め上げました。アルミで強い芥子色、鉄ではくっきりした濡羽色(ぬればいろ)。銅媒染の璃寛茶色が特に美しいです。

花言葉は、「友情」。 
6月15日の誕生花。
夏の季語。


◎参考サイト /文献

http://ja.wikipedia.org/wiki/ヤマボウシ
http://www.e-yakusou.com/
http://www.hana300.com
・http://100kajiten.net/
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「シーボルト日本植物誌 <<本文覚書篇>>」
  大場秀章 / 監修・解説 瀬倉正克 / 訳 八坂書房

 

 (C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房  禁転載

 

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