鎌倉染色彩時記(染)

2024/04/07

ヒメオドリコソウ・したたかものの翡翠色

Himeodoriko03 

【学名】  Lamium purpureum  
【英名】  Red Deadnettle, Purple Deadnettle
【別名】  サンガイグサ(三階草)
【生薬名】 
【科】   シソ科 

鎌倉の野原は、今、どこを見てもヒメちゃん、ヒメちゃん、ヒメちゃん!
初夏の到来をおおいに歌い上げています。

学名のpurpureum は 「紫色の」、 Lamium(ラミウム)は、ギリシャ語の「laipos(のど)」が語源で、 葉の筒が長くてのど状に見えることに由来する、との説があります。

明治時代に日本に帰化した、ヨーロッパ原産の越年草。

ヒメオドリコソウの種子には、冠毛や翼があるわけではなくて、風による散布はあまり期待できません。その代わり、アリの好む「エライオソーム (Elaiosome)」(オレイン酸などの脂肪酸、グルタミン酸などのアミノ酸、ショ糖などの糖からなる化学物質)という付属体があって、これを食料とするアリによって運ばれるといいます。

お土産を用意して仕事してもらうという!
これを特に「アリ散布植物」といい、この他に同じシソ科のホトケノザや、スミレ、カタクリ、カタバミ、ムラサキケマン、フクジュソウなど、約200種類ほどあるといわれます。植物たちの生存戦略には驚かされることばかりですね。

英語名のDeadnettleは、花のない時期の葉の風情がイラクサ(nettle)に似ていることに由来します。

鎌倉では、3月頃からあちこちに煙ったピンク色の花をつけたヒメオドリコソウの群生がみられますが、これを「ホトケノザ」と思っている方、かなりいらっしゃる模様。かくいう私もそうでした。
ホトケノザはよく似ていますが別物でこちら。

Hotoke02

で、厄介なのは、春の七草の「ホトケノザ」はまた別物というところ。
こちらは本名「コオニタビラコ」さまとおっしゃいます。
Koonitabirako(wikiより)

なんでこんなに名前が交錯したんでしょうね。


さて、カラスの遠藤と並んで、春の大切な染料であるヒメちゃん。
煮出すと、とてもホコリくさい(土臭い)ニオイがします。
そして、中性水でも、アルカリ水でも、また、どの媒染でもうつくしい翡翠色、深緑色などが得られるのです!
Himeodoriko_sample02

ヨーロッパでは発汗、止血に薬効ありと言われていますが、一般的には毒草の部類なのでご注意を。

 

花言葉は「愛嬌」。


◎参考サイト/ 文献

http://ja.wikipedia.org/wiki/ヒメオドリコソウ
http://www.hana300.com/
http://www.e-yakusou.com/
http://www.arthurleej.com/a-deadnettle.html
http://www2n.biglobe.ne.jp/~WWESBJ/medicine.htm
http://www.tcp-ip.or.jp/~jswc3242/mamechishiki/mame46eraiosoomu.html
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 3」 北隆館
・「季節の野草・山草図鑑」高村忠彦/監修  日本文芸社

 
(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房  禁転載

 

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2024/04/06

ウルシ・縄文パワーのオレンジ色


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【学名】  Toxicodendron vernicifluum
【英名】  lacquer tree、Chinese lacquer、Japanese lacquer-tree、varnish tree
【生薬名】 漆(しつ) 
【科】     ウルシ科 

中国、ヒマラヤ原産の落葉高木。 

原産は中国ですが、塗料として「漆」が使われたのは、中国が殷・周時代(紀元前17世紀〜)だったのに対し、日本ではすでに縄文前期(1万2000年〜)の鳥浜貝塚(福井県)から漆塗りの器や櫛が出土しており、活用は日本が発祥と言えるようです。そのためか、陶磁器を俗にChinaというように、漆器のことは英語でJapanといいますよね。

絵画に漆が使われた最も古い例は、法隆寺の「玉虫厨子」とされています。
漆器が一般に普及したのは13世紀以降で、江戸時代になって、各藩の殖産政策によってそれぞれ特色のある漆器の伝統生まれました。

学名のvernicifluumは、「ワニス(ニス)を生ずる」の意。樹液に触れると激しくかぶれを生じますが、なんと、乾かした漆は生薬だそうです。

和漢三才図会には「虫を殺し血のめぐりをよくする。いつまでもなおらぬ凝結の瘀血(血の結滞)を破り動かす。乾漆を焼き、その煙を吸うと、針や薬を用いることのできない喉の痺れを治す」などの記述が見つかります。

「和漢薬」には、実が下血に効くとも。

そしてそして、和漢三才図会にはさらに、「漆は蟹を得ると水となる。蟹は漆をみると乾燥しない」というオドロキの記述が!
「漆にかぶれた人は杉木湯、紫蘇湯、漆姑草湯、蟹湯を浴びるとよい」とも。

ほんとかいな!

これを読んだ漆職人の方、蟹が本当に効くのか、ぜひ教えてください。

材は、耐湿性があり、黄色で、箱や挽き物細工にするのに適しています。

木工作家の友人が、漆材の端材をくれました。
全体的に黄色い木材で、煮出すと美しい濃い黄色の染液となりました。そして、長く煮出すと徐々に赤みが加わるという!

媒染による色味の違いがはっきりしており、どの色もたいへん堅牢。
アルミ媒染で黄支子(きくちなし)色、長く煮出した液では蜜柑色。銅で黄褐色(おうかっしょく)、鉄では黄味の強い黒緑

力強い! 縄文文化の野太さを思わせる強い色!
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花言葉は「「頭脳明晰」と「賢明」。
11月25日の誕生花。


◎参考サイト / 文献

http://www.hana300.com/
https://www.city.toyama.toyama.jp/
https://ja.wikipedia.org/wiki/ウルシ
https://ja.wikipedia.org/wiki/漆
https://wakahaku.pref.fukui.lg.jp/

・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社

 

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2024/03/30

オオイヌノフグリ・名前負けの金糸雀色

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【学名】  Veronica persica Poir.
【英名】  Field Speedwell, Green field speedwell, Iran Speedwell
【別名】  星の瞳, 天人唐草
【生薬名】 腎子草(じしそう) 
【科】     ゴマノハグサ科 

冬が遠のき空気がぬるんでくると、そこここにポチポチと青い星のようなこの草が春をつげます。

ヨーロッパ原産の越年草。
現在はアジア,南北アメリカ,オセアニア,アフリカに広く分布します。

日本には明治時代に渡来。路傍や畑の畦道など、特に湿ったところで多く見られます。

実が犬の陰嚢に似ているという在来種の「イヌノフグリ」にくらべ、花が大きいことからこの名がついたんだとか。
だけど、こちらの実は犬の陰嚢には全く似ていない! 他にもみたてるものはあったでしょーよ、かわいそうに。

イヌノフグリの命名者は牧野富太郎とする記述が見当たりますが、江戸時代の植物辞典「草木図説(そうもくずせつ)」にはすでにその名が記載されているようです。ご他聞にもれず、現在はオオイヌノフグリに追いやられ絶滅危惧種となっています。

フランスでは「ペルシャの聖人」、イギリスでは「小鳥の瞳」、中国では「地錦」・・・と美しい長与えられているのに比べるとほんと、気の毒ですが、日本でも「星の瞳」「天人唐草」といった別名もあります。よかったよかった。

学名のVeronicaは、聖女ベロニカから。聖女ベロニカは、十字架を背負って歩かされるイエスキリストの額の汗を、自らの白いベールを差し出して拭ったといわれ、その後、ベロニカのベールにはキリストの顔が映し出されたと言われます。この逸話は、さまざまに絵画の題材にもなっています。
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これを受けてか、ヨーロッパではオオイヌノフグリにはキリストの顔が映るという伝説があるそうですよ。

生薬名は「腎子草」。民間療法として全草を、解毒や腎臓病に用いることが知られています。
ヨーロッパでは古くから、全草を煎じたものが、月経困難症や出血に効くとされています。

なかなか試し染に十分な量を得られなかったのですが、やっと大きな群生を見つけて煮出してみました。
あまり濃い液にはなりませんでしたが、媒染後は透明感のある冴えた色がつきました。
アルミで金糸雀(かなりや)色、銅で璃寛茶(りかんちゃ)。鉄で黒くなるかと思いましたが、銅媒染とあまり差はなく、少し赤みがかった程度。

名前のインパクトに比べると、どの色も肩透かしなくらい清々しい色合いです。聖女ベロニカのお力か?


花言葉は、聖女ベロニカにちなんで「信頼」「忠実」「清らか」。
2月11日の誕生花。春の季語。


◎参考サイト / 文献

http://www.hana300.com/
http://www.e-yakusou.com/
https://www.nies.go.jp/
http://ja.wikipedia.org/wiki/オオイヌノフグリ
http://www.amami.or.jp/
https://pfaf.org/
https://www.kahaku.go.jp/
https://greensnap.co.jp/

・「季節の野草・山草図鑑」高村忠彦/監修  日本文芸社
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房

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2024/02/06

ソバ・縄文の琥珀色

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写真提供 : 堀口裕子

【学名】  Fagopyrum esculentum
【英名】    Buckwheat
【別名】  クロムギ、ススジクサ
【科】   タデ科

学名のFagopyrumはラテン名の「Fagus(ブナ)」とギリシャ名の「pyros(小麦、穀物)」の合成語。 
三つの角を持つ実がブナの実に似ていることから。esculentumは「食用の」の意味。

和名の由来は「稜(そば=角)」(実に3つの角がある)、畑の側(そば)に植えられる、など諸説。

長く中央アジア原産と考えられていましたが、近年の研究で、中国南部の雲南省であると言う説が有力だそうです。
日本には縄文時代には渡来していたと考えられます。(縄文の遺跡から側の花粉や実が見つかっている)。

なるほど、原産が中央アジアであればもっと遅くに日本に入ってきたでしょうね。雲南なら近いし。

文献に出てくるのは「続日本記」(722)が最も古く、元正天皇(680〜748年)が救荒作物としてソバを栽培するよう詔を出したことが記されています。

現在のような「そばきり」ができたのは江戸時代初頭。
それまではいわゆる河漏(かろう=ところてんのように押し出した麺)や、そばがきとして食することが多かったようです。

そういえば、ブータンの東部ではやはりソバを栽培していて、この、ところてん式「河漏」を作る道具を民家で見せてもらったことがあります。
探したけど自分で撮った写真がなかったので、ブータン研究所より拝借いたします。
Unnamed(写真出典)


和漢三才図会には「粉に挽いたものを煎餅にしてにんにくを配して食べる」などの記述も見あたります。
また「気を降し腸胃を寛げるので、気が盛んなもの、湿熱のものによい。脾胃の虚寒の人がこれを食べると元気が抜けてしまってヒゲ、マユが落ちる」とも。ちょっとびっくり。でも昔のお医者さんって、患者さんの体質をよく吟味して、食べ物や薬を扱っていたんですね。

生薬としては全草、趣旨を乾燥させて用います。毛細血管の浸透性をよくするルチンを多量に含有するため、高血圧症の予防にお茶として服用するとよいです。
調理された蕎麦自身にはルチンがあまり含まれないため、蕎麦湯を飲む習慣が生まれたのですね。

厚木でソバを育てている教室の生徒さんから、収穫後の乾燥した茎と葉をいただきましたので、煮出してみました。
ほっこりした香りに包まれて、液は美しいウィスキー色に。
アルミで飴色黄金(こがね)色、銅で琥珀色、鉄で海松茶(みるちゃ)色

どの色も大地の気を吸い上げたような力強さがあり、なんとなく、縄文の風景が透けて見えるようでした。

「新蕎麦」や「蕎麦の花」で秋の季語。
「蕎麦刈る」で冬の季語。
花言葉は「懐かしい思い出」「喜びも悲しみもあなたを救う」。
9/24の誕生花。


◎参考サイト / 文献

http://www.e-yakusou.com/
http://ja.wikipedia.org/wiki/ソバ
https://www.jugemusha.com/
https://kizamu.com/

・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 第103巻

 

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2023/10/08

ワルナスビ・悪ぶっても優男

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【学名】  Solanum carolinense
【英名】  Apple of Sodom, Devil's tomato, Carolina horsenettle
【別名】  オニナスビ, ノハラナスビ
【科】     ナス科 

 

北米南東部(カロライナ周辺)の原産。

1906年(明治39年)に千葉県成田市の※御料牧場で牧野富太郎により発見され、「ワルナスビ」と命名されました。
以後、全国の荒地、道端、空き地などに自生するように。

学名のSolanum(ソラナム)は、ラテン古名の「solamen(安静)」が語源。
この属の植物に、鎮痛作用を持つものがあることから。

地下茎で増え、枝分かれして旺盛に繁茂します。
花は、ナスやジャガイモの花に似て、秋には球形の果実が橙黄色に熟します。黄色いプチトマトみたいです。

が、しかーし。
葉、茎、根、実、すべてにソラニンを含み、有毒。
家畜が食べると場合によっては中毒死することがあるので要注意! 子供などがトマトなどと勘違いして口にしてしまう危険性も高い!

その毒性をうまく生かし、欧米では薬用利用してきたという記述も見当たります。
それによると、実と根は、鎮痛、収れん、媚薬(!)、利尿、また、てんかんや喘息の治療に用いたそうですよ。
葉を乾燥させたものでうがい、またはお茶として服用することで喉の痛みに効くとも。

いずれにしても現代では用いられていません。安易な服用はしないほうがいいですね。

近所に、スペアミントが自生している野原があって、お散歩がてら取りに行ったら・・・あれ、全然ない。
そのかわりに、ジャガイモ畑になった!!・・・ん? ちょっとちがうか?
そう、よくみると、花はジャガイモそっくりでしたが、全身ドッゲットゲの別人!

その群生の様子はまさに漫画「クローズ」の世界ですよ。
にーさんたち、怖いよ!
試し染めするために採取しようにも、棘が痛くて一苦労。素手では無理でした。

実はまだついていなかったですが、英語名「ソドムのりんご」「悪魔のトマト」はよく言ったと思います。
牧野先生の「ワルナスビ」もなかなかのネーミング。でもちょっと、こちらのほうが可愛いワルの感じですね。

いくらワルを気取っても心はナイーブなのが、思春期のワル。出た色はそんなことを思わせます。
煮出してみますと、その棘で武装した表向きとは裏腹に、どれもたいへんにやさしい色合いでした。
ちょっと拍子抜け。

アルミで女郎花(おみなえし)色、銅や鉄で海松(みる)色、すずでは夏虫色

花言葉は「悪戯」。

※御料牧場・・・宮内庁下総御料牧場(くないちょうしもふさごりょうぼくじょう)。1969年(昭和44年)まで千葉県成田市に存在していた。江戸時代は軍馬や農馬の飼育がされていたが、明治からはウールの需要が増えたことから国内産羊毛の生産のため、政府の運営するめん羊牧場となった。

http://www.hana300.com/
http://www.e-yakusou.com/
http://ja.wikipedia.org/wiki/ワルナスビ
https://pfaf.org

・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 2」 北隆館

 

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2023/09/24

アレチヌスビトハギ・怪盗ルパンの鴇浅葱

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【学名】  Desmodium paniculatum
【英名】  Panicled Tick-Trefoil
【科】     マメ科 

北アメリカ原産の、比較的新しい帰化植物。
とくに関東以西に多く見られます。
多年生ですが、地域によっては冬に枯死するため、1年草とされる場合もあるようです。

(日本古来種の「ヌスビトハギ」の仲間は、近年研究が進み、従来の「ヌスビトハギ属」とは別属とされ、Hylodesmum H.Ohashi & R.R.Mill が属として新設され、新しい「ヌスビトハギ属」とされています。)

和名アレチヌスビトハギは、「荒れ地盗人萩」の意。
1940年に本種を大阪府で採集した、岡山県の植物研究家の吉野善介によって命名されました。

やっと涼しくなってきたので、久しぶりに近所を「植物調べ散歩」してみましたところ、二階堂川の縁に、わっさりと茂ったアレチヌスビトハギの一軍を発見しました。
秋に細かな葉っぱを茂らせ、その先に薄紫の小花を咲かせる様は、たしかに「萩」の風情に重なります。
古来種のヌスビトハギに比べると、華やかな印象。同じ「盗人」でもあちらは「鼠小僧」の感じですが、こちらは「怪盗ルパン」といったところでしょうか。

マメ科独特のサヤのある実をつけますが、そのサヤが特徴的なやまぎり型になっています。
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そのサヤに、先の曲がったカギ型の微毛が生えていて、これが体につくと容易にとれない原因。いろーんな来訪者にくっついて、広範囲にタネを運んでもらう・・・だけでなく、この神出鬼没で華麗な大泥棒にはアレロパシー作用もあって、ものすごい勢いで勢力を拡大していきます。アメリカの押しの強さに、負けるな日本の鼠小僧!!

ヌスビトハギの豆は食用になるらしいですが、(といっても小さいので集めるのがやっかいだし、滅多なことでは食べないようですが)、アレチ_の方はそれに関する記述が見当たりません。もう少しサヤが太ってきたら、試食してみますか。

アレロパシーだの、カギ状の毛のあるタネだの、そういう癖のある輩は、染料として優秀な場合が多い。
期待を裏切らず、煮出すと少量でも濃い染液となりました。
アルミ媒染で飴色、銅で濃い目の芝翫茶(しかんちゃ)、鉄でゲキ渋の魅力炸裂の千歳茶(せんさいちゃ)

そして、そして!
あまった染液をしばらく置いておいたら、なんと真っ赤になっていました!
「おお!」あわてて錫(すず)媒染で試染してみたところ、美しい鴇浅葱(ときあさぎ)が染まりました。

怪盗ルパン、やってくれます。

花言葉は、「略奪愛」「内気」「思案」。


◎参考サイト

http://ja.wikipedia.org/wiki/アレチヌスビトハギ
https://matsue-hana.com/
https://hananoiwaya.jp/
https://aska-net.
https://www.shigei.or.jp/
https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/81520.html

 

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2023/08/21

ウメノキゴケ・権力者の赤紫

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【学名】  Parmotrema tinctorum(Despr. ex Nyl.)Hale
【英名】    Apricot Moss
【科】   地衣類・ウメノキゴケ科

東北地方以南、沖縄までの低地、太平洋沿岸の温帯から亜熱帯の比較的明るい場所の樹幹や枝、石垣などによくみられる地衣類です。

全体で直径20cmにもなる大形の葉状地衣。表面は乾いた状態では灰白色ですが、湿った状態では緑色が増します。青緑のきくらげ、みたいです。周辺部は波状をなし、かたまりの真ん中に細かい粒状の針のようなもの(裂芽)を密生することが特徴です。

「地衣類は菌類の仲間で、藻類と共生して地衣体という特別な構造を作っています。地衣体を構成する菌類は、藻類が作る光合成産物を栄養として利用するとともに、藻類を乾燥や紫外線から守っている。」という説明をみつけましたが、なんか、地衣類って、ダークで怪しいですよね。そう、ダークであやしいヤツは、時にすごーい仕事をやってのけてくれるのです。

一般には、ウメ、マツ、サクラ、カキなどの古木につくことが多いのですが、高山の岩場やコンクリート上など厳しい環境の中でも生きていくことができるというツワモノです。
排気ガスには弱いので都市中心部には少なく、大気汚染の指標とされています。
つまり、ウメノキゴケがたくさん見られるところは空気がきれい、ということですね。

国宝「紅白梅図屏風」(尾形光琳)はじめ、日本画の中の松の古木の幹には,白っぽいあるいは緑っぽい丸いコケが描かれているものが少なくありません。絵画の中でこのように地衣類が描かれることは世界的には珍しく,日本独特のもの、といってよいそうですよ。
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建築の彫刻でも,例えば日光東照宮の三猿の周りにウメノキゴケが文様化されたとみられるものが描かれています。
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同じウメノキゴケ科のエイランタイ(依蘭台)の花言葉は「健康」 「母性愛」。
うーん、ちょっとイメージわかないですけど、地衣類が豊かに繁茂する土地は、もののけ姫の森のような滋味豊かな心象はありますね。
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西欧各地の地衣類をつかった染色の歴史は遠く、古代にはじまると伝えられています。
古代フェニキア人は,最も高貴な身分を象徴する紫色の王衣や聖職者の衣服を染めるために貝紫を用いたことは有名ですが,その貝染めには膨大な量の巻貝を必要としたので,下染めとして地衣による紫が利用されたそうです。 やがて12世紀以降,貝染の染色技術が消滅した後は,地衣による紫色だけが高貴な位の象徴として用いられたといわれています。

梅の古木などからウメノキゴケを採取し、ゴミを丁寧に取り除いた乾燥させたものをアンモニアで発酵させて、鮮紅色から紫色を染めます。
こんな地味な「日陰者」から、このような世にも鮮やかな色が得られることには、ただただ驚くばかりです。
最初に発見した人に、どうやって思いついたのか、訊いてみたかったです。

得がたい色は、すなわち時の権力者の色。そんな歴史にも思いが及びます。
Img_3222


◎参考サイト / 文献
http://ja.wikipedia.org/wiki/ウメノキゴケ
https://www.chiba-muse.or.jp/

https://biodiversity.pref.fukuoka.lg.jp/
https://hanakotoba-note.com/
https://lichenjapan.jp/?page_id=631

・「ウールの植物染色」 寺村 祐子/著 文化出版局


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2023/08/18

コマツヨイグサ・風呂上がりの黒緑

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【学名】  Oenothera laciniata
【英名】    Cutleaf Eveningprimrose
【別名】  キレハマツヨイグサ(切れ葉待宵草)
【科】   アカバナ科


北米原産。日本では本州〜琉球に分布します。乾いた砂地に好んでよく生えます。

茎は斜上するか地面に伏し、1本立ちするか枝を分け、開出毛があり、高さ50cmほどになります。
葉っぱには切れ込みあり。花期は4〜11月。

アレチマツヨイグサアカバナユウゲショウなどの仲間で、夏の夕方から開花します。
花言葉は「物言わぬ恋」 「ほのかな恋」 「浴後の美人」 「入浴後の乙女」 「魔法」 「移ろいやすさ」と、共通するのは、ほんのりした色気、というところでしょうか。

たしかに、開花した花は、はじめは黄色。花がしぼむほどに赤みを増し、最後は朱色に、と変化するところが魅力的。その様は、花言葉にもある通り、「浴後の美人」を連想させます。

若苗は、柔らかく茹でて、おひたし、和えもの、炒めものにすると美味しいです。花や蕾は、酢を入れた熱湯で茹でて、酢のものに。そのほか、天ぷらなど。薬効としては健胃、整腸、下痢止め。

煮出してみると、すっきりした黄色い染液になり、アルミ媒染で女郎花(おみなえし)色、銅で青丹(あおに)色、そして鉄媒染では夏の夜空を思わせる冴えた黒緑

11/21の誕生花。


◎参考サイト / 文献

https://matsue-hana.com/hana/komatuyoigusa.html
https://botanica-media.jp/
https://www.hana300.com
https://hananoiwaya.jp/
https://www.language-of-flowers.com/
https://naturalism-2003.com/

 

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2023/08/15

カニクサ・蟹もびっくりの草色


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【学 名】  Lygodium japonicum (Thumb.) Sw.
【別 名】  シャミセンヅル,ツルシノブ,ナガバカニクサ
【生薬名】    カイキンシャ(海金砂)=胞子 キンシャトウ(金砂藤)=ツル、葉
【科】    カニクサ科  (フサシダ科)


東アジア原産。
特に、日本、中国、朝鮮半島、台湾などの地域で自生するシダ植物で、学名にjaponicumとあることからも、日本に古くからあったことがわかります。和漢三才図会にも名前が見られるので、江戸時代にはすでに意図的に栽培されていたこともうかがえます。

学名「Lygodium japonicum」は、ギリシャ語の「lygodes(柔らかい)」と「japonicum(日本の)」が組み合わさったもので、「日本原産の柔らかい葉を持つ植物」という意味。和名の「カニクサ」は、葉の形状がカニの足に似ている、このツルで子どもがカニを釣って遊んだ、など諸説。

その後、19世紀にアメリカやヨーロッパにも伝わりまして、現在では、世界各地の温帯や熱帯地域で自生 / 栽培されていますが、一部地域では
外的侵入外来種として問題視されているようです。クズと一緒ですね。

カニクサはシダ植物としては珍しいツル性ですが、ツルのように見える部分は実際は「長く伸びた一枚の葉」だそうです。

夏になると、工房や自宅の庭にも、モゾリモゾリとあらわれて、他の雑草を巻き込みながらちょっとしたナワバリを築きます。
このツルがなかなか手強くて、素手では切れないことも。その強さから、絶対に外来種だと思い込んでいたのですが、おお、日本産。外的侵入外来種? かまわん、ゆけーい! 世界で戦ってこい!

それぐらい強いツルだから、カニを釣り上げる時もカニのハサミに負けないのか?・・・などと妄想が広がりますね。

胞子は漢方では海金砂(かいきんしゃ)といい、淋病、膀胱結石の治療に用います。また全草を、消炎解毒、肺炎、急性胃腸炎、黄疸などに用いる、の記述も。

若葉は食用にもできるそうです。

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夏に茂るカニクサのツルをくるくると巻いてリースにするとよい、と教室の生徒さんに教えていただきました。乾燥しても色を保ち、長く楽しめます。

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煮出してみたところ、アルカリ抽出ではなかったにも関わらず、染液がきれいなみどり色になったのにはびっくり。それをそのまま糸に移し、アルミ媒染若菜色で、銅で少し渋くなりうぐいす色、そして鉄媒染の草色が特筆すべき美色。


花言葉は「誠実」「魅力」「魔法」。11/21の誕生花。

◎参考サイト / 文献

http://ja.wikipedia.org/wiki/カニクサ
https://terra-rium.com/ja/wiki/lygodium_japonicum
https://hananoiwaya.jp/
https://www.medicalherb.or.jp/

・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 3」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢三才図絵」第98巻 寺島良安 / 著

  協力 : 林 由美子

 (C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房  禁転載

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2023/07/09

ハキダメギク・鶴の輝きの黒緑

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【学名】  
・Galinsoga quadriradiata
・Galinsoga parviflora Cav.
・Galinsoga ciliata

【英名】
・Shaggy Soldier
・Hairy Galinsoga
・Peruvian Daisy

【科】   キク科


熱帯アメリカ原産の1年草の帰化植物。
6~11月の間、小さい白い頭花を長く咲かせつづけます。

明治時代初期に渡来したと言われ、現在では関東地方以西の日本中の住宅地や道端、野原や山などに広く自生しています。
草丈は10cm〜50cmほどで横に這うように成長し、繁殖力が強いゆえ「道端外来浸食種」とも呼ばれ、厄介な雑草扱いされることも。

強い帰化植物は、嫌われる運命なのですね。目立ちすぎる転校生がいじめにあうのと一緒です・・・。
あ、私は嫌っていませんよ、嫌ってません、嫌ってませんって。たとえ帰化植物が固定種を駆逐しようと、植物に罪はない、罪はないよ・・・うっ。

学名の「ciliata」は、ゾウリムシ,ラッパムシ,ツリガネムシ など「繊毛虫類」の意味ももちます。
この場合は「縁毛のある」という意味。茎や葉に毛が生えていることを表しています。
これが英語名の「 Shaggy Soldier(毛深い兵士)」につながっているのですね。にしても、毛深い兵士って・・・。

和名は、大正時代に植物学者の牧野富太郎氏が、世田谷の経堂(きょうどう)の掃きだめでこの花を見つけ、「掃きだめ菊」と名づけたのだそうです。
「掃き溜め」は、江戸時代からある、町内に設けられたゴミを吐き溜めて置くところをさします。そう、「掃き溜めに鶴」はここから来ています。「その場所にふさわしくない、優れたものが現れる」の意味ですね。
牧野先生、もうちょっと可愛い名前つけてあげればよかったのに、と一瞬思ったのですが、「掃き溜めに鶴」を思えば、愛のあるネーミングと言えるでしょうか。

実際、チッ素分の多いごみ捨て場や、空き地、道ばたなどによく生えるため、それを観察した牧野先生、さすがです。

葉は、きれいに洗ってさっと茹でれば食用としても利用できます。
沸騰したお湯で2分〜3分ほど茹でて、鮮やかな緑色になったら醤油やかつおぶしをかけると美味とか。

工房の近くに群生を見つけたので、煮出してみました。湯気にはキク科特有の辛口の芳香が漂います。
色もキク科特有の冴えた色合い。
アルミで鶸色(ひわいろ)、銅で鶯色(うぐいすいろ)、鉄の黒緑が特に美色。どれも強い! 

花言葉は「不屈の精神」「豊富」「努力」。
11/21の誕生花。


◎参考サイト / 文献

http://ja.wikipedia.org/wiki/ハキダメギク
https://botanica-media.jp/
https://www.hana300.com
https://hananoiwaya.jp/

・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 3」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房

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