鎌倉・染色彩時記(染)

2018/07/21

ヤマハゼ・ミツバチの友は漆黒

Yamahaze03 Yamahaze01

【学名】  Toxicodendron sylvestre (Siebold et Zucc.) Kuntze,
      Rhus sylvestris Siebold et Zucc.   
【別名】  ハニシ、ハジ
【生薬名】 木蝋(もくろう)   =ハゼノキの実の蝋
【科】    ウルシ科

大古から日本に自生する落葉木。古名「ハニシ」は、樹皮で染色をしたことから「埴にしめ」と呼ばれたの が転じました。(樹皮で染めた茶褐色は、「黄櫨色(はじいろ)」といわれます。) 後に、ハニシ、ハジが転じてハゼとなったと伝えられています。「ハゼノキ」というのもありますが、これは、室町時代に琉球より伝わった別種です。

以前はハゼノキ=ヤマハゼでしたが、現在では、ハゼノキはリュウキュウハゼで、ヤマハゼとは区別されます。ヤマハゼは、ハゼノキと違い、花、葉、枝の両面に毛が生えています。ハゼノキは沖縄、九州、近畿 などの暖地に特に多く、ヤマハゼは、関東以南の各地に見られます。

古事記の中の、ニニギノミコトの「天孫降臨」のエピソードの中に、筑紫に降り立ったニニギノミコトを 出迎え、露払いを務めたアメノオシヒノミコト(天忍日命)、アマツクメノミコト(天津久米命)の二柱が、 波士弓(はじゆみ)というヤマハゼで作られた特別の弓を持っていたという記述があります。

ハゼノキやヤマハゼの実は、木蝋の原料となり、ろうそくの他、蜜蝋の代わりとして、軟膏、坐剤、光沢剤 などに用いられてきました。止血や腫れ物の解毒には、根の皮を乾燥させたものを煎じて、その汁で幹部を洗うとよいとされています。木蝋はうぐいす色のきれいな蝋で、パラフィンに比べると柔らかく粘りがあり、染め物ではろうけつ染めに用います。ヒビの入り具合にパラフィンより表情が出ます。

樹皮を染色に用いたことが名前の由来ですが、黄色い心材を用いた黄色の染色も知られており、これを下染 めにして、蘇芳(すおう)で赤をかけたオレンジ色をとくに「黄櫨染(こうろぜん)」と呼びます。

ヤマウルシほどではありませんが、人によっては、触るとかぶれの症状が出るので注意が必要。

5月の末に、カジュ祭でもおなじみの養蜂家・飯倉剛氏のお仕事場を見学させていただきました。
場所は小網代の森近くの空き地。
小網代の森は、三浦半島の南端部に残された、相模湾に面した約70haの森。森の中央にある谷に沿って流れる浦の川の集水域として、森林、湿地、干潟及び海までが連続して残されている、関東地方で唯一の自然環境と言われます。(ウィキ引用)
ボランティアによって遊歩道が整備されていて、バランスの良い植生や様々な小動物の様子を見ることができます。

そこに自生するヤマハゼは5月に花を満開にし(たいそう地味な花ですが)、飯倉さんのミツバチたちには、カラスザンショウと並んで、この時期の大切な蜜源の一つになっているといいます。

その花盛りのヤマハゼの枝葉を少しいただき、(注: 森の外の空き地にあったもの)煮出してみたところ、大変堅牢な色を得ました。 
アルミで濃い辛子色、銅で鶯茶、鉄では見事な漆黒。

花言葉は「頭脳明晰」。

参考サイト/文献

http://ja.wikipedia.org/wiki/ヤマハゼ
http://gkzplant2.ec-net.jp/index.html
http://www.e-yakusou.com/
http://www.geocities.jp/greensv88/jumoku-zz-yamahaze.htm
http://www2.city.kurashiki.okayama.jp/musnat/plant/bungakusakuhin/kojiki.htm
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 2」 北隆館

| | コメント (0)

2017/10/23

ケンポナシ・お酒もびっくりの伽羅色

Kenponashi1 Kemponashi ←シーボルトのスケッチ
写真出典
   

【学名】   Hovenia dulcis Thunb.
【英名】   Japanese raisin tree, Chinese raisin tree
【別名】  シテンポナシ(手棒梨)、ケイキョシ(鶏距子)、モクサンゴ(木珊瑚)
【生薬名】  枳椇(キグ)
【科】   クロウメモドキ科

 

日本では北海道から九州まで、さらに朝鮮半島、中国に分布。
学名のHovenia は、オランダ人宣教師の名にちなみます。
またdulcisは、ラテン語で「甘みのある」の意。

初夏に白い小花が集まって咲き、花が終わると赤みを帯びた実がつきます。この実が干しブドウのようであることが、英語名の由来らしいですね。
この干しブドウ状の実をつける枝先が、指のような膨れる。これを、ハンセン病におかされて曲がった指に似ているとみて、その曲がった指をテンボウ、テンポなどと呼んだことから、テンボノナシ→テンボナシ→ケンポナシになったという説があります。
実よりむしろこの枝先(果柄)が食用となるところがおもしろいっ!

シーボルトも「日本植物誌(フローラ・ジャポニカ)」に大変精巧なスケッチとともに詳しく書いています。
「遠目にはヨーロッパの西洋梨にそっくり-(中略)-花が散ると、花序の枝が肥厚し、やがて肉厚になる。これを食べることができるが、甘く良い香りがして、イナゴマメの風味か、ベルガモットの風味によく似ている。-(中略)-(煎じたものを)酒に酔わないよう飲んでおく予防薬として大変評判がよい」などの記述。

実際、秋に多肉質の果柄を集めて日干しにして乾燥させたものを生薬で「枳椇(キグ) 」といい、煎じて服用すると二日酔いに効くことが知られています。

和漢三才図会にも「ケンポノナシ」の名で興味深い記述が見つかります。
「実(※恐らく肥大した枝先を含む)は渇きを止め、煩(心臓部の熱気で苦しい状態)を除き、隔(横隔膜?)上の熱を取り去る。五臓を潤し大小便の通じをよくする。効能は蜂蜜と同じ。枝葉を煎じてつくった膏(あぶら)も同様。よく酒毒を解する。」とあります。
さらに衝撃的なのは、「もしこの木を柱にすると、その室の中の酒はすべて味が薄くなる。この木の 一片をあやまって酒甕(さかつぼ)の中に落とすと、酒は水に変化してしまう。」って、ほんとですかいっ!

夏に、市内の方から剪定した枝葉をいただく幸運を得ました。煮出してみたところ、華やかな甘酸っぱい香りが広がりました。たしかにベルガモットを彷彿とさせます。

柔らかな朱鷺色の染液となり、アルミ媒染でその色をほぼとどめて伽羅色 (きゃらいろ)から枇杷茶(びわちゃ)、銅で枇杷茶 、朽葉色(くちばいろ)、鉄で空五倍子色 (うつぶしいろ)、海松色(みるいろ)。

秋の季語。

参考サイト / 文献

http://ja.wikipedia.org/wiki/ケンポナシ
http://www.e-yakusou.com/
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 2」 北隆館
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第88巻
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社
・「シーボルト日本植物誌 <本文覚書篇>」八坂書房

(C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

| | コメント (0)

2017/08/03

鎌倉染色彩時記・訂正箇所一覧

2015年に出版いたしました「鎌倉染色彩時記」に多数の間違いが見つかりました。

これはひとえに作者の確認不足によるものです。ご購入いただきました方々には、心よりお詫び申し上げ、ここに訂正させていただきます。

   たなか牧子

【 誤字・誤植 】

・P10 目次の下段53番  以外と  → 意外と
・P13   目次の上段193番  4. 煤染について → 媒染について
・P136「キンモクセイ」、P137「ヒガンバナ」の色見本に媒染の名前が欠落しております。それぞれ右から「アルミ」「銅」「鉄」です。
・P174 ユーカリの記述 5段落目 アポリジニ → アボリジニ
・P193 ◎綿の精錬 5行目末尾の文字が消えています。正しくは「もの」。
・P204の薬酒材料名 2段目  アンズアンズ → アンズ

【 内容の誤り 】

・P138 ザクロの科 ミソハギ科 → ザクロ科
・さくいん タンポポ  P22 → P16
・さくいん ハルジオン P16 → P22
・【重要】P197 藍の乾燥葉による染め方レシピの中で、使用する炭酸ソーダとハイドロサルファイトの量が液量の10%となっていますが、1%の誤りです。また、手順の番号が微妙にずれています。順番に作業を行えば間違いは起こりませんが、含んでお読みください。

【 本作・イラストレーターについて 】

本作でイラストを担当してくれたイラストレーターの名前が欠落しています。
エッセイ、染め方レシピのページに素晴らしいイラストを提供してくれたのは「はまぐり涼子」(吉澤涼子)さんです。
◎はまぐり涼子
天才的に画力に加え、飛び抜けた文章力も持ち合わせるイラストレーター、ルポライター。
鋭い観察力で日常の何気ない出来事から大切なエッセンスを抜き出す、天性のフットワークのよさを活かして国内外をまめまめしく旅をして、優しい視点で切り取る、などを得意とする。
作品はHPFBで見ることができる。
シネスイッチ銀座映画絵日記、カジュ・アート・スペースの会報誌カジュ通信でもコラムを担当。
鎌倉市在住。

| | コメント (0)

2017/06/06

ササゲ・恥じらいははじめだけの薄黄色

Sasage02 Sasage01

【学名】  Vigna catiang Endl. var. sinensis King  Vigna unguiculata
【英名】  Cowpea,  Black-eyed pea(白色ササゲ),  Asparagus bean
【別名】  大角豆(たいかくず=ささげ)、ミタビ、 ササンキ(アイヌ語)
【生薬名】  豇豆(とうず)
【科】   マメ科

中央アフリカ原産のものが、中国を経由して9世紀に渡来。
ツル性のものと、ツルのない直立するものがあります。

「大角豆」の字を当てるのは、豆の端が少し角ばっていることから。
「ササゲ」という名前の由来については、細いサヤを小さな牙に見立てて「細々牙」とした、あるいは、若いサヤが、物を「捧(ささげ)る」かのように上を向いているから、など諸説。

欧米では、食用ではなく、主に土壌改良のために栽培されていて、英語名cowpeaは恐らくここからきているのでしょう。

日本で生産されている豆はほとんどが赤色ですが、輸入豆には「ブラックアイ」と呼ばれる白色で臍の周辺部分だけ黒いものや、褐色、黒色のものもあります。(沖縄で作られている「黒小豆」は、実は黒色のささげ。)

関東では、赤飯にはアズキの代わりにササゲを用いることが多いです。これは、アズキが、煮たときに皮が破れやすいため、「腹切れ」→「切腹」という連想を生み、武家の間で嫌われて、煮ても皮が破れないササゲの方を用いるようになったからだそうです。

和漢三才図会には「腎を補い、胃を健やかにし、営・衛(いずれも東洋医学独特の考えによる、脾・胃で消化された栄養物質)を整え、頻尿や下痢をとめる」とあります。また「汁に煮て飲むと、鼠莾(そぼう=ハシリドコロ Scopolia japonica Maxim.強力な毒草)の毒を解する」とも。

一昨年、裏庭の畑に植えて、ひと夏、たくさんの豆を楽しみました。はじめのうち、モノを捧げているような健気な姿の豆も、次第に下を向き、それはそれは堂々と、ふてぶてしく、長々とぶら下がります。こう言っては何ですが、恥じらう乙女が月日を重ねて、押しも押されぬ無敵のおバタリアンになっていく様を見るようでございます。ちなみに豆の味はバツグン。

その、畑に植えた「つるありささげ」を、収穫後に全草を煮出してみました。マメ科独特の甘い香り。アルミで明るい黄色、銅で明るい草色(ウールは翡翠色)、鉄で海松(みる)色、麹塵色。 花言葉は、「恥じらい」。 花は晩夏の季語、実で秋の季語。

参考サイト / 文献

http://ja.wikipedia.org/wiki/ササゲ
http://www.mame.or.jp
http://gkzplant2.ec-net.jp
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 第104巻
・「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著 家の光協会
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社

| | コメント (0)

2017/06/04

トウモロコシ・世界のキーワードは蒸栗色

Tomorokoshi01

【学名】  Zea mays L.
【英名】  Corn, Maize
【別名】  トウキビ、コウライキビ、サツマキビ、ナンバン
【生薬名】 玉蜀黍(ぎょくしょくしょ)
      南蛮毛(なんばんもう=ヒゲ)
      玉蜀桼蕊(ぎょくしょくきずい=ヒゲ)
【科】    イネ科 

世界三大穀物(小麦、米、トウモロコシ)のひとつ。熱帯アメリカ原産。コロンブスがアメリカ大陸を発見した際、カリブ人が栽培していたトウモロコシを持ち帰ったことでヨーロッパに伝わりました。
日本には1579年にポルトガルから長崎にもたらされました。

トウモロコシの粒の数は、1本に約600~700個あるそうです。また、ヒゲの数は粒の数と一致するそうですよ。

トウモロコシのヒゲは古くから知られた漢方薬で、利尿、腎機能の改善、むくみ、黄疸、肝炎、胆のう炎、胆血石、糖尿病の改善などで、薬理試験でもすぐれた利尿作用、血圧降下、末梢血管拡張作用が確認されています。また毛を発酵させたものには、顕著な血糖降下作用が認められています。

トウモロコシ油(トウモロコシの胚芽からとった油)は、リノール酸が約60%含まれ血圧降下、高血圧の予防や軟膏の基剤、注射薬の溶剤に使用されています。

和漢三才図会にも「古(むかし)は我が国にはなかった。蛮船が持ってきた。顆々(つぶつぶ)がむらがりあつまり、(中略)黃白色で焼き炒って食べる。白い花の形にはぜさけて、はぜたもち米の状(さま)に似ている」と 、ポップコーンのように食べていた様子が書かれています。また、根や葉を煎じて服用し尿路結石を治すという記述も見当たります。

19世紀半ば、肉質の硬かったロングホーンに代わって、肉質の柔らかいアンガスという肉牛が普及しました。
しかし、その肉質を柔らかくするには、それまで牛の餌だった「草」に代わって、トウモロコシやダイズなどの「穀類」を大量に与えなければならないのだそうです。

1997年のデータですが、その年生産されたトウモロコシは6億トン。そのうちのなんと4億トンが家畜飼料になっていました。(今は生産量、飼料ともにもっと多いことでしょう)
当時の世界人口はおよそ58億(2015年現在で73億強!!)、そのうち8億が飢えで苦しんでいると言われていました。もし、家畜に回されているトウモロコシのわずか10%を食用に回すことができれば、この飢えの問題を解決できたそうです。

飼料だけでなく、トウモロコシはバイオ燃料の原料にも使われていて、飼料問題と合わせて、早急な代替え案が必要だと思います。食べられない人がいるのに、柔らかい牛肉でもないもんだ。

肉、硬くもいいぢゃないですかねぇ。日本には様々な「発酵の知恵」があるのです。いくらだってお肉を柔らかくする調理法はありますわ。

裏庭の畑に飢えた4株のトウモロコシ。収穫が終わった茎葉を煮出してみました。アルミで蒸栗色(むしぐりいろ)、銅で根岸色(ねぎしいろ)や鶯色、鉄で利休鼠

花言葉は、「洗練」「デリカシー」「財宝」「豊富」「同意」。
8月4日、8月7日の誕生花。

参考サイト / 文献

http://ja.wikipedia.org/wiki/トウモロコシ
http://www.hana300.com/
http://www.hanakotoba.name/
http://www.language-of-flowers.com/
http://www.e-yakusou.com/
・NHKスペシャル 世紀を越えて  豊かさの限界  第1集 「一頭の牛が食卓を変えた」
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第103巻
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社

| | コメント (0)

シラン・アジアンビューティーな草色

Shiran01

【学名】  Bletilla striata Rchb.fil
【英名】  Hyacinth orchid
【別名】  ベニラン、ケイラン
【生薬名】  白及(びゃくきゅう)
【科】      ラン科

学名の「striata 」はラテン語で 「縞模様」の意味。葉に筋が立っている様子からでしょうか。「Bletilla」(ブレティラ)は、スペインの薬剤師の名前から。

ラン科の多年草。観賞用に栽培されてきましたが、関東以西には自生もみられます。ただし、近年では自生種は近年危惧種となっています。
春から葉が出始め、茎が立ち、初夏に東洋蘭独特の可憐な赤紫色の花をつけます。香りはあまりないですね。栽培種には白や黄色の花をつけるものもあるそうです。地下には少し偏平な形をした仮鱗茎があって、1年ごとに1球づつ増えていきます。 ちょっと油断していると、自宅の庭で、しずかーに勢力を広げています。

鱗茎(りんけい・白きゅう)を8~11月頃に掘り採り、茎、ひげ根を除き、水洗いした後、蒸して(または熱湯をかける)から外皮をはいで、天日で乾燥させたものを生薬で白芨(びゃくきゅう)と呼びます。噛むとやや苦い味がするんだそうです。
粘液質が多く皮膚や粘膜を保護する作用があり、保護により痛みを止めたり、腫れを治したりします。また、内外出血にも止血作用があり、喀血、止血、鼻血、胃、腸の穿孔にも用いられるそうです。外用には、火傷には粉末を油、あかぎれには水で練って塗るとよいとか。おお、領土拡大勢力を少し抑える意味でも、試しにちょっと根を掘ってみますか!

これみよがしな派手さはないものの、東洋蘭のきりりとした美しい容姿に、隠れた高い効能・・・このアジア美人、なかなかやりおる。

花盛りのときに全草を採取して煮出してみました。特筆すべきはアルミ媒染のウールの鮮やかな黄色。銅媒染で草色、鉄で柔らかな柳茶木蘭色

花言葉は、「あなたを忘れない」「お互い忘れないように」「美しい姿」「変わらぬ愛」「薄れゆく愛」。
夏の季語。 5月6日の誕生花。 

参考サイト / 文献

http://ja.wikipedia.org/wiki/シラン
http://www.e-yakusou.com/
http://www.hana300.com/
http://www.hanakotoba.name/
https://lovegreen.net/languageofflower
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第93巻
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房

(C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

| | コメント (0)

2017/06/03

コデマリ・ラインダンスは璃寛茶(りかんちゃ)

Kodemari01

【学名】  Spiraea cantoniensis Lour.
【英名】  Reeves spirea
【別名】  スズカケ、シツカケ 
【科】     バラ科

学名の「Spiraea」は 「 シモツケ属」、ギリシャ語で螺旋」「輪」を意味するそうです。「cantoniensis」は「中国広東地方の」の意味で、その名の通り、中国原産の帰化植物です。

別名の「スズカケ」は、花が連なるようにつながっている様子から。あ、これが「スズカケノキ」になると、プラタナスですね。こちらは実が鈴なりに成るから・・・かな?

江戸時代からは、観賞用に栽培されるようになりました。弓なりにしなる枝ぶりの美しさから、生け花の花材としても人気です。

鎌倉界隈では、桜の開花のころ、枝にその名のごとく、小さな手毬のように白い花が枝いっぱいつきます。美しい眉のようにしなった枝は、まるで、SKDのラインダンス! 可憐です。あくまで可憐です。

花盛りのときに全草を採取して煮出してみました。とても濃い液となり、どの媒染でも堅牢な色あい。アルミ色で芥子色山吹茶。銅で璃寛茶鶯茶、鉄で銅より一味青みの色を染め上げました。

花言葉は、「優雅」「品位」「友情」。春の季語。 4月24日の誕生花。

参考サイト / 文献

http://ja.wikipedia.org/wiki/コデマリ
http://www.hana300.com/
http://www.hanakotoba.name/
http://www.weblio.jp/cat/dictionary/nkgmj
https://lovegreen.net/languageofflower
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第84巻
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房

(C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

| | コメント (0)

2017/05/06

ヤブニンジン・気満ち満ちたる若草色

Yabuninjin02 Yabuninjin01


【学名】  Osmorhiza aristata
      Osmorhiza aristata Rydb. var. montana Makino
      (ミヤマヤブニンジン)
【英名】  sweet chervil
【別名】  ナガジラミ(長虱) ササハソラシ
【生薬名】   藳本(こうほん)
【科】     セリ科

学名のOsmorhizaは、ギリシャ語の「osme(香気)+ rhiza(根)」が語源。
日本、朝鮮、ロシア、中国に分布。

和名は、葉がニンジンに似ていることから。実際、自宅の裏庭に見つけたときは、ほんとうにニンジンが生えてきたのかとぬか喜びしてしまったほど、葉っぱがニンジンに似ています。5,6月に白い小花をつけます。花には両性花と雄花があって、花の後、線香花火のように広がって実を結びます。
鎌倉では、同じ仲間のヤブジラミ、セントウソウ、セリとともに、湿気の多いところによく自生しているのが見られます。

若い葉はおひたし、天ぷらなどで食べられますが、花が咲く前だと、毒草のケマンソウが葉がよく似ているので、採取には注意が必要です。

春の開花時期に根茎を掘って、水洗いして陰干しにして乾燥させたものを、生薬名で藳本(こうほん)と呼びます。腰痛、腹痛、頭痛などの鎮痛には、1日量5~10グラム、水0.4リットルを半量まで煎じて毎食後3回に分けて服用するとよいそうです。

「和漢三才図会」には「藳本」の名で根を薬として使う記述があり、「昇る太陽(の気)。足の太陽経の風薬である。気は雄壮。寒気が太陽経に鬱積して頭痛のするときには必用の薬である。頭頂部痛はこれでないと頭痛を除くことができない。」とあります。頭痛については絶大な信頼を得た薬のようですね。頭痛持ちの私、早速、根を採取して干しました! じっくり自分で生体実験します。

Yabuninjin_ne

そういえば、去年のお正月にマージナルキッチンにご飯を食べに行った時、佐藤裕加さんが本格的な秋田スタイルのきりたんぽをごちそうしてくれて、「秋田ではセリを必ず根っこをつけて入れるんですよ。」と教えてくれましたっけ。

Kiritampo

セリ科の植物の根には、何か特別なものがあることを、昔の人は経験で知っていたのですね。

「和漢三才図会」には根は紫とありましたが、採取したものはみな白かったですね。もう少しあとになったら紫がかるのかな?

花が咲き始めた全草を採取して煮出したところ、たいへん強い黄緑色の液となり、アルミで強い若草色、銅で透明感のあるウグイス色、鉄で、海松色から仙斎茶。(ニンジンの葉の染色結果に似る。)
どれも初夏の瑞々しい気の満ちた強い色合いで、見ているだけで元気が出てきます。

花言葉は「喜び」。2/9の誕生花。

参考サイト / 文献

http://ja.wikipedia.org/wiki/ ヤブニンジン
http://www.e-yakusou.com/
http://chills-lab.com/flower/
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 第93巻
・「季節の野草・山草図鑑」高村忠彦/監修  日本文芸社

 

| | コメント (0)

2017/02/09

ダイズ・神通力の抹茶色

Edamame01

【学名】  Glycine max Merrill
【英名】  Soy bean, Soya bean, Japanese pea
【別名】  マメ、アキマメ、コマナ、エダマメ
【生薬名】 香鼓(こうし=黒大豆)
【科】   マメ科

中国原産。
古くから栽培されており、「五穀」に数えられています。
◆「五穀」
◎稲・麦・粟・大豆・小豆(『古事記』)
◎稲・麦・粟・稗・豆(『日本書紀』)

ヨーロッパには18世紀、アメリカには19世紀初頭に伝わったとかで、あら、かなり最近なんですね。
そういえば、戦後すぐに、日本の醤油メーカーがアメリカで醤油を売り出そうとした時、「腐っているから許可できない」「バグ・ジュース(虫の汁)か?」などの言いがかりをつけられたといいます。
それを、身体に害のない成分であることを科学的に証明した論文を作成し、バーベキューをしている家庭にセールスマンが乗り込んで、実際に使ってみせたりと、まさに血と汗と涙の努力でマーケットに参入を果たしたのだそうです。
しかし、バグ・ジュースって・・・。知らないものに対する憎悪の念、怖いですね。
ワンピースのルフィみたいに、新しいものに出会うたびに、目を星にして「すっんげーっ、おもしれーっ」とわくわくしてみる寛容でポジティブな心は、いつも持っていたいものでございます。

Luffiy

戦後日本人の、この凄まじいまでの生きる力は、「生き残ってしまってすまない」という気持ちが根底にあるような気がしてなりません。この醤油の例に限らず、その自責の念が、今日の日本の基礎を作ったのではないかと、時々思います。

マメ科はツル性のものが多い中で、茎が直立するところからエダマメの別名が。
学名の「Glycine」は糖原性アミノ酸を指します。もとはギリシャ語の「glycys(甘い)」が語源。

書物に最初に登場するのは古事記で、スサノオノミコトがオオゲツヒメを殺めたところ、その遺体の、頭に蚕、目に稲、耳に粟、鼻に小豆、陰部に麦、尻に豆(大豆)が生まれたというエピソードが見られます。(すっんげーっ、おもしれーっ)

和漢三才図会には、現代ではそれぞれ区別されるマメが、総称してダイズとして扱われており、「黒・白・黄・褐・蒼・斑といった数々の色のものがある。黒いものは薬に入れてよく、また味噌や納豆に作る とよい。黄のものは豆腐に作るとよく、また油を搾って醤(ひしお=醤油)を造る、その他のものは炒って食べるぐらいである」という記述があります。
味噌は本来、黒豆で作られていたことが興味深いですねー。よーし、今年の味噌は黒豆で仕込むぞ!

節分の豆撒きでダイズを用いるのは、ダイズに鬼や悪霊を払うことができる聖なる力があるとされるため。マメを焼いてその年の吉凶を占う風習もあったそうです。
漁師が出漁の際にダイズをもっていくのも、海難などの災厄を払うためとされます。

漢方では特に黒大豆(黒豆)を用いる。完熟した黒大豆を発酵させて干したものを香鼓(こうし)といいます。他の生薬と配合して消炎、消化、健胃に用います。また炒った黒大豆をすりつぶしたものを酒につけたものを「豆淋酒(ずりんしゅ)」といい、冷え性、低血圧症に効果があるとされています。

昨年の夏は、在来種の種(たね)の普及活動をしている友人から、へっころ谷(ここのほうとうは、自家製のダイズで仕込んだ味噌が使われているのです)のダイズを手に入れたので、カジュの庭で育てました。作付面積がイマイチなので、余りたくさんはできませんでしたが、それでも700グラムほどのダイズが収穫できました。

収穫の終わった大豆の茎と葉を煮出してみたところ、アルミで白つるばみからクリーム色、 銅で抹茶色から柳茶色、鉄で海松色麹塵色

花言葉は、「親睦」。 秋の季語。

参考サイト/ 文献

http://ja.wikipedia.org/wiki/ダイズ
https://ja.wikipedia.org/wiki/五穀
http://members.jcom.home.ne.jp/tink/
・NHK番組「プロジェクトx 醤油 アメリカ市場を開拓せよ」

・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「色の手帖」小学館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 第104巻
・「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著 家の光協会

 

| | コメント (0)

2017/02/05

アスナロ・打倒ヒノキの珊瑚色

Aomorihiba01

【学名】  Thujopsis dolabrata (Thunb. Ex L.f.) Sieb. & Zucc. (アスナロ)
      Thujopsis dolabrata var. hondae(ヒノキアスナロ=アオモリヒバ)
【英名】  Dolabrata, Hiba
【別名】  ヒバ, アテ, アスヒ
【生薬名】 羅漢柏(らかんはく=葉)  ※誤用が定着?
【科】   ヒノキ科 


本州から九州の山地に自生。日本特産種。
学名のThujopsisは「Thuja(樹脂を出すある常緑植物の古名)」+「opsis(似た)」の意。dolabrata は「斧の形をした」の意。

平安時代からアスナロの和名は、「明日は檜になろう」からきているという通説がありますね。和漢三才図会にも、ヒノキの項目の中に「阿須檜(あすひ)」の名前で、「檜の一種」と紹介されていますが「木芯はマキに似ている。器につくるが脂がでて佳くない。これは檜とただ一夜の差(ちがい)があるためであろう か。」とあります。

ところが、この俗説、実は誤りという説もあるのです。古名「アスヒ」は「アテヒ」が転じたもので、「アテ」には「高貴な、貴い」という意味があるといいます。あらら?

子鹿のバンビの作詞者・坂口淳氏の書いた童謡「あすなろのうた」。これで現代におけるアスナロの立ち位置は決定づけられた感がありますね。

「あすなろのうた」

あすなろ あすなろ あすはなろう

おやまの だれにも まけぬほど 

ふもとの むらでも みえるほど

おおきな ひのきに あすはなろう

あすなろ あすなろ あすはなろう

あめにも かぜにも まけないで

ぐんと そらまで とどくほど

おおきな ひのきに あすはなろう

あすなろ あすなろ あすはなろう

とうげを こえる ひとたちの

ひるは ひかげに なるような

おおきな ひのきに あすはなろう

この歌には「子供たちには、いかなる境遇に生まれ育とうとも檜をめざしてほしい」という願いがあるとかないとか・・・。

大きなお世話である。

アスナロがアスナロであることを、喜んで生きて何が悪い。人様に他のものを目指せなど言われる筋合いではない。なんたって、「高貴な檜」なのだ。ほっといて欲しい。

抗菌・殺菌作用で知られるヒノキチオールという成分は、実はヒノキにはほとんど含まれていません。

1936年(昭和11年)、台湾に自生する「タイワンヒノキ」の精油から、当時の台湾帝国大学に赴任していた日本人科学者・野副教授が、世界で最初に発見したヒノキチオール。
日本列島で、ヒノキチオールを含む主な樹木は、なんと、アオモリヒバ(ヒノキアスナロ)、エゾヒバ、ネズコの3種類。 どーよ、ヒノキ。

ヒノキチオールには、殺菌力、抗菌力のほか、皮膚の傷の収斂(しゅうれん)作用”や細胞の増強作用もあることも明らかになり、最近ではこれに着目した、養毛剤や基礎化粧品なども開発され、主に「医薬部外品」を中心に活躍の場が広がっているといいます。1989年(平成元年)から「食品添加物」としての使用も法律で認められました。

昭和20年代には、精油が肺結核の治療にも効果があることが証明されたそうです。生薬ではこの精油は「羅漢柏」の名で今でも「和漢薬」に掲載されています。
しかしながら、その後、戦後アメリカから大量輸入されたストレプトマイシンなどの安価な抗生物質が出回ったため、遅効性、高価である、などの理由でヒノキチオールは医療の現場から消えました。
現代では抗生物質の弊害もいろいろ取り沙汰されていますから、また、医薬品として見直される日が来るかもしれませんね。

タイワンヒノキやアオモリヒバといったアスナロの仲間は、耐水性や耐久性に非常に富んでいるため、 特に、神社仏閣の建立や再建、補修に使われてきました。

特にヒノキチオールを多量に含むアオモリヒバは、腐りにくくシロアリに強いことから、東北地方の歴史建造物に多く使われており、「中尊寺金色堂」もアオモリヒバで建てられているそうです。
ふーん、ヒノキじゃないんだ、ヒノキじゃ。

というわけで、アオモリヒバは、かつては津軽藩の貴重な財源であったとか。「ヒバ一本、首ひとつ」と言われるほど、藩による徹底した管理がされていたそうそうですよ。津軽では、江戸後期になるまで、建築材として庶民がヒバ(アスナロ)を使うことは禁じられていたといいますから、ほんと、徹底しています。

耐久性を活用した身近な例には、「鉄道の枕木」もありまして、長くクリノキが使われていたことは知られていますが、実は、日本で最初にできた地下鉄「銀座線(渋谷~浅草)」の枕木には、アスナロが使われたのだそうです。

参ったか、ヒノキ!  誰もが君になりたいわけではない。アスナロ、万歳!

友人が箱いっぱい送ってくれたアオモリヒバの葉と枝を煮出してみました。おおっ、ヒノキチオール満喫! そして染め上がった色は、鉄で海松(みる)色、抹茶色、銅で媚茶色、そして、アルミで出たのは、宍色(ししいろ)、珊瑚色と呼んでいい、きれいなパウダーピンク! 長年ヒノキと比べられて、さぞや歪んだ性格になったかと思いきや、こんな可憐な色を出してくれて・・・。涙
残念ながら、日が経つに連れ、少し黄色味がかってきましたが、いい香りとともに、とても幸せな気持ちにさせてくれました。

花言葉は、「永遠の憧れ」「変わらない友情」「不滅」「不死」。

 

参考サイト / 文献

http://ja.wikipedia.org/wiki/アスナロ
https://ja.wikipedia.org/wiki/ヒノキ
http://hanakotoba-labo.com/
http://www.kobayashi.co.jp/

・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「色の手帖」小学館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 第82巻
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社

| | コメント (0)

より以前の記事一覧