鎌倉染色彩時記(染)

2019/01/20

スギ・日本人の心の友は枇杷茶色

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【学名】  Cryptomeria japonica D.Don
【英名】  Japanese Cedar
【別名】  イソキ、 サボク(沙木)
【生薬名】 サン(杉)
【科】     スギ科

昨今、春先になると、この名を聞くと「気が重くなる」、「恐怖を感じる」などの"症状"が、日本全土に見られますが(笑)、この木ほど、わたしたち日本人と縁の深い木もございますまい。

日本特産の常緑高木。漢名で「倭木(わぎ)」というところからも、日本に古くからある木であることがわかります。
和名の由来は、すくすくと成長する木、スグ(直)、スナオキ(直木)、ススミノキ(進みの木)が転じたなど諸説あり。

日本の文化とは、それはそれは深い関わりがあります。軽く、木目が美しいことから、建築材として幅広く使われてきました。桂離宮の柱も北山杉。樹皮は、屋根や外壁を葺いたりするのに用いられます。材木、皮ともに、水に強く、乾きやすい性質が、高温多湿の日本の気候にあっているのですね。

その他、様々な生活雑貨も作られてきました。中でも、日本酒の仕込み樽にはスギは不可欠だそうです。酒樽ってスギだったんですね。
それ故か、新酒の季節には、それを知らせるために酒屋には蒼い杉の葉でつくったくす玉(すぎ玉)が軒に飾られます。
Sugidama (写真出典)

枝葉や樹脂は生薬としても様々に用いられてきました。樹脂には皮膚や粘膜を保護や消炎作用があります。 また、葉には精油を含有していて、血液循環、疼痛などに有効とされています。

ひび、あかぎれなどに、樹脂を薬用アルコールに溶かして、1日2~3回患部につけるとよいそうです。 肩こり、筋肉痛には、樹脂を和紙などに塗り患部に塗布、乾いたらお湯でぬらしてはがします。
葉は、捻挫、挫傷したときに、煎じた液で洗浄します。

和漢三才図会には、杉の皮の灰を卵の白身で練ったものを塗るとやけどや切り傷に効くという記述があります。

二階堂、覚園寺奥のレインボーステイの裏庭で、杉を伐採したというので、枝葉を貰い受けました。
裏庭では杉の香りが満ち、切った杉の幾つかに六文字が切られています。これがうわさのスウェーデントーチですね!
スウェーデンやフィンランドなどで、昔から使われている料理用の焚き火の道具。正式には「スウェーディッシュトーチSwedish Torch」というそうです。切り込みの中央に枝葉などで着火すると、杉はよく燃えるといいますが、レインボーのまきこさんが試してみたら、あまりの火力で鍋やフライパンを乗せるどころではなかったそうです。うーん、自由研究の蟲がうずきますなぁ。やってみたい、スウェーデントーチのお料理。
Sugi04

花粉症の元凶になって以来、とかく悪者扱いのスギですが、杉林に身を置くと、その針葉樹独特の香りに包まれて、浮ついたキモチがすぅっと落ち着いてきて、なんとも心地よいです。
杉材には、竹に共通する、直線的な美しさ、深いのに重くないスパッとした潔い印象があって、そこが日本の美意識にあっていたからこそ、古来からずっと愛されてきたのでしょう。いえ、スギがその美意識を育てたのかもしれません。

現代でスギ花粉が問題なのは、昭和40年代に、照葉樹の原生林を切り開き、お金になるスギを次々と植えたこと、その後、輸入の材木に押されてそのスギが使われなくなり、放置されてしまったことに原因があるといいます。人間(特に日本人の)の勝手に翻弄された木といえるでしょうね。
森のいいバランスが回復することを願ってやみません。私にはそのためになにができるかしら。

煮出すと、林と同じスッキリした芳香につつまれ、アルミで柑子色(こうじいろ)、銅で路考茶(ろこうちゃ)から枇杷茶(びわちゃ)、鉄で空五倍子色(うつぶしいろ)。

俳諧では、花は春の、実は秋の季語。
花言葉は「堅固」「雄大 」。杉の葉の花言葉は「あなたのために生きる」。9/30の誕生花。

◎参考サイト / 文献◎
http://ja.wikipedia.org/wiki/スギ
http://www.hana300.com/
http://www.e-yakusou.com/
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著  第82巻
・「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著 家の光協会
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社

       

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2019/01/18

ローズマリー・忘れじの憲法黒茶

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【学名】   Rosmarinus officinalis L.
【別名】   マンネンロウ、マンルソウ
【生薬名】  迷迭香(そうてつこう)
【科】    シソ科

南ヨーロッパ原産。学名のRosmarinusは、ラテン語で「海のしずく」を意味するそうです。ヨーロッパでは、教会、死者、生者を悪魔から守る神秘的な力を持つといわれ、また「記憶」や「友情」を意味します。

草ではなく、低木の類。立木性、匍匐(ほふく)性=垂れ下がったり、横に広がったりするタイプ、半匍匐性の3種類があります。開花期は4〜6月。匍匐性のものによく紫の小花を見かけます。

キリスト教以前のヨーロッパで、祝典や結婚式、葬儀に用いられたとされ、「変わらぬ愛」や 「貞節」の象徴とされたそうです。その生育はキリストの生涯を象徴し、多くの伝説で聖母マリアと結びついています。で、名前も「マリアのバラ」といわけですね。和名のマンネンロウはこの「マリアのバラ」がなまったものという説があります。

生薬名は「迷迭香(=精油)」。古くヨーロッパでは、民間で堕胎に用いたという記述も見当たります。
今日アロマテラピーの世界では、ローズマリーの精油は、健胃、黄疸の治癒、口臭の除去、記憶力をよくし、鬱を抑えて気分を高揚させるとされています。
また、血行を良くして消化機能を高めることで新陳代謝をよくする、抗酸化作用で肌の老化を防ぐなどの効能から「若返りのハーブ」とも言われているそうです。その繁殖力といい、香りや効能といい、神がかった強さを秘めた植物といえるでしょうね。

この花からとった蜂蜜は最上品とされ、南フランスの特産とされているそうですが、どんな味がするのでしょうね。ウスターソースの添香料のひとつでもあります。

いただいた小さな立木性のローズマリーの苗が、知らぬ間に仕事場の庭で大きく育ちました。(怖いぐらい)
葉は、刻んでパンに練り込んだり、煮込み料理に用いたり、焼酎につけてチンキを作ったりして楽しんでいます。確かに、肉料理に用いると、あとの胃もたれが軽減される感じがします。

3月に、刈り込んだ際、茎(枝)と葉を煮出してみました。頭が冴え冴えするような芳香が漂って、とても心地よいです。
染液は濃い茶色となり、鉄媒染より、銅媒染の方が濃い色になるという珍しい結果となりました。(普通は逆)

アルミで桑染色(くわぞめいろ)から黃橡(きつるばみ)、鉄で山鳩色
そして、銅媒染で染めたウールがその秘めた(秘めてないね)魔力を写して、大変強い憲法黒茶(けんぽうくろちゃ)。に。
この色名は、日本国憲法には関係なくて、室町時代から戦国時代にかけて活躍した剣術家の吉岡直綱(号が憲法)が広めた色だから、と言われています。

花言葉は「追憶」「思い出」「記憶」「貞節」「変わらぬ愛」「誠実」「親切」「私を思って」「静かな力強さ」「あなたは私を蘇らせる」

◎参考サイト / 文献◎
http://ja.wikipedia.org/wiki/ローズマリー
https://interior-book.jp/102028
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 2」 北隆館
・「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著 家の光協会
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社

 

(C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

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2019/01/17

ワサビ・つーんと効きます翡翠色

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【学名】   Wasabia japonica Matsum.
【英名】   Japanese horse-radish, tuftid stone leek, wasabi
【別名】   ヒノ、ワサビナ、チャルカルペ(アイヌ語)
【科】    アブラナ科

 

日本特産の植物。九州、四国、本州の山間の涼しい谷川の浅瀬に生える、また、水のきれいなところで栽培される多年草草木(そうほん)です。

栽培の歴史は定かではありませんが、古くは「延喜式」に若狭、越前、丹後、但馬、因幡、飛騨の諸国から宮廷に献上された記述が残っています。近年では、伊豆の天城山、安倍川流域、長野の安曇野などが産地として有名です。

そういえば、89年にブータンを旅したとき、中央ブータンの古都パロで、JICAの指導で日本の野菜を育てている農園をみました。そこにはワサビも。ヒマラヤの雪解け水に抱かれたワサビ、辛そうですね。インドに輸出されていると聞きましたが、はて、インドのお料理にワサビはどんなふうに使われているのでしょう。

和漢三才図会には「二月(現三月下旬)に種をまくが、宿根(ふるね)を植えるのが最もよい。葉が蕗(フキ)か葵(アオイ)の葉に似ている。それで俗に山葵という。(中略)根の肉は浅緑色で香気があり、味は辛辣である。これをおろして煎り酒とまぜ、刺し身、膾(なます)を食べると最も佳い。蕎麦切を食べるときも欠かす ことはできない。」とあり、魚の毒消し、そばの毒消し、また、出血性大腸炎に有効であるという記述が見当たります。美味しく食べる=安全に食べる、の江戸の知恵、さすが。

幕末に編纂された「草木六部耕種法」に、イネの一反分の収益が一両二分であったのに対し、ワサビは十五両であったという記述があり、大変高価なものであったことが伺えます。

薬効は主に根にあり、おろし金ですりおろして香辛料として用いると、芳香健胃、食欲増進、防腐、殺菌効果。
外用として、リューマチや神経痛には、生の根茎ををすりおろして小麦をつなぎとし、布にうすくのばして患部に貼って10分くらいで取り去るとよいとされます。

ワサビの辛味と香りは、すりおろした時に細胞破壊で酵素が作られることにより発生するので、すりおろし方によって辛味が違ってきます。葉のついたほうから円を描くように、すりおろすのがよいそうです。

同じアブラナ科ワサビ属のユリワサビは、ワサビに似た小ぶりな多年草での根が同様に使えます。葉は生のままサラダなどにして食べる、さっと茹でておひたし、酢の物、粕漬け、漬物などに。

ワサビの茎をつかった「わさび漬け」。目がないのですよ、コレ。作れたらいいのになぁ、と思っていたら、掛田商店さんが、春先に短期間出るワサビの茎と酒粕をカジュのイベントで売ってくれまして、その時、レシピを教えていただきました。

<<わさび漬け>>
A.  わさびの茎 100g、   塩 10g
B.  酒粕 100g、 酒50cc、 出汁 50cc
-------------------------------------------------------
1. Aを合わせて、まな板の上で茎によく塩を擦り込み、もんで、一晩寝かせる。
2. 出た水を捨てて、茎を2cmmに刻む。
3. Bをすり鉢出会わせてなめらかになるまでよく当たる。
4. そこに刻んだ茎を入れてよく混ぜ、密閉容器に入れて冷蔵庫で寝かせる。3〜4日後から食べ頃。

昨春の彼岸の入りに、伊豆にお住まいのTさんから「ワサビの収穫が終わって、葉っぱと茎がたくさんあるのですが、いりますか」という夢のようなメールが来ました。「はい! いただきますっ!」と速攻でお返事したところ、これまた速攻でたくさんのワサビの茎葉が届きました!

葉を煮出してみたところ、たちどころにワサビの香りが立ち込め、染液は澄み切った青みの黄色になりました。アルミで緑味の淡黄色、すずでカナリア・イエロー、銅でオリーブグリン、鉄で鶯茶。・・・これなら、アルカリ抽出できれいな緑が出るかもしれないと思い、そちらも試染。
読みどおり、銅で鮮やかな翡翠色、鉄でも草色。どの色にも、透明感と、ある種の緊張感が漂います。

あ、のこった茎は、わさび漬けにしたのは言うまでもありません。周囲の方々のモノ、チエ、キモチの恵みに心からの感謝を。

花言葉は「実用」「目覚め」「うれし涙」。春の季語。

◎参考サイト / 文献◎
http://ja.wikipedia.org/wiki/ワサビ
http://www.hanakotoba.name
http://www.e-yakusou.com/
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著 家の光協会
・「和漢三才図絵」第99巻 寺島良安 / 著

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2019/01/16

カラスザンショウ・初夏のレモンシフォン

Karasusansho02 Karasuzansho01

【学名】  Zanthoxylum ailanthoides Siebold & Zucc, Fagara ailanthoides
【別名】  アコウザンショウ、ボーダラ、イヌダラ、コメダラ、ゲタギ(下駄木)、
      オオザンショウ
【英語名】 Japanese Prickly-ash
【科】      ミカン科

日本在来種。(耳に心地よい言葉ですねー。外国勢に負けるな、在来!)
北海道以外の日本各地、沖縄、台湾、フィリピンなどに分布。

大変多くの異名があり、他の植物との混同も多く見られます。その中のヤマザンショウは、カラスザンショウを指す地域もありますが、ナナカマドの別名としても通っているので、ちょっとややこしい。また、タラノキにも外見が似ており、それにちなんだ別名も多く存在するというから、かなりややこしい。

沿海地から山地によく生えます。河原、崩壊地、伐採跡地などに、初めに生える「パイオニア植物」 。実生でも苗がよく育ち、10m以上の大木に成長します。枝や樹皮に鋭いトゲがあります。

材は下駄、箱、細工物、玩具などに利用されます。サンショウと同じく、すりこぎにも。

清涼感のある独特の風味の蜂蜜がとれるので、蜜源植物としても貴重な存在です。カラスアゲハ、ミヤマカラスアゲハ、モンキアゲハ、ナミアゲハ、クロアゲハなどの蝶の食草。ただ、実にはサンショウと違いアルカロイドが含まれるので人間が用いる場合は注意が必要ですね。植物名の冒頭に「イヌ」や「カラス」が付く場合、本家ほど役に立たん、という蔑んだ意味が含まれますが、それはあくまで人間側の勝手。カラスザンショウの花にブンブンたかっているミツバチたちを見て、「みんな平等だよなぁ。」とつくづく思ってしまいました。そこからとれた蜂蜜を私たちは食べているのだし。

5月下旬、小網代の森近くに巣箱を置く養蜂家・飯倉剛氏に、ミツバチたちの様子を見せてもらいました。ちょうどこの時期花が満開のカラスザンショウやヤマハゼに、ミツバチたちがせっせと「出勤」していました。健気だ。

小網代の森には、見事な大木のカラスザンショウが多数生息しています。枝葉を煮出すと、山椒に丁字が入り混じったような、独特の香りが立ち込め、透明感のある琥珀色の染液になりました。そう、ちょうどこの頃採れる飯倉さんの蜂蜜の色です。

アルミでレモンシフォン色、銅で璃寛茶、鉄で少し青みの墨色

奇妙なことに、科は違うものの、別名で混同されるナナカマド(バラ科)の染色の結果によく似ています。

◎参考サイト / 文献
http://ja.wikipedia.org/wiki/カラスザンショウ
http://www.jugemusha.com/jumoku-zz-karasuzanshou.htm
http://www.geocities.jp/greensv88/jumoku-zz-yamahaze.htm
http://www2.city.kurashiki.okayama.jp/musnat/plant/bungakusakuhin/kojiki.htm
http://www.tasc.or.jp/~pipedan/other/syokubutu/syokubutu/syokubutu%20all%208%20(617).html
http://had0.big.ous.ac.jp/
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店

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2019/01/15

ベニバスモモ・恐怖をとりさる玉子色

Benibasumomo (写真出典)

【学名】  Prunus cerasifera var. atropurpurea
【英名】  Purple cherry plum, Myrobalan Plum,
      Newport Cherry Plum, Pissard Plum
【科】   バラ科

西南アジア原産。
学名のcerasifera は「サクランボのある」、atropurpurea は「 暗紫色の」、Prunus(プラナス)は、ラテン古名の「plum(すもも)」が語源といわれます。

花はヤマザクラによく似ていますが、花期はカワヅザクラと同じくかなり早いようです。

花は全体に薄紅色、花の中心部分は濃いピンク色になっています。葉っぱの色は 、花が咲いているときも、また、花が終わったあとも暗赤色を保ちます。この葉の色が、妙に染織家の心をざわつかせますなぁ。

実はスモモに似ますが、やや小ぶり。イギリスのサイトでは、実を生、またはジャムにしてパイを作るとよいとあります。

自然の力をうまく使って、心や感情のバランスを取り戻すための自然療法「ホメオパシー」において使われる、花のエネルギーを転写した水「バッチフラワーレメディ(Bach Flower Remedies)」。(アロマオイルとは違うんですね)
整えたい感情によって用いる花のお水が違うそうなんですが、このベニバスモモのエネルギーを移したお水を用いると、落ち込みや恐怖心を改善する効果がある、とイギリスのサイトにありました。確かに、ウメ・モモ・サクラは見ているだけでホッとします。うーん、そう考えると、季節季節に咲くお花たちに心を寄せて暮らすというのは、心も体も整うということですね。

バラ科のウメ、モモ、サクラ、アンズなどは、枝葉がよい染料になりますが、季節、天気、地質などで色が転びやすいところがあります。

6月の終わりに保土ヶ谷の友人から貰い受けた枝葉を煮出すと、ウメ、モモ、サクラ、アンズと同じ甘酸っぱい香りが漂いました。花がヤマザクラ(ピンクが染まる!)に似て、葉が赤いことから、ピンク系の色が出るかと思ったのですが、結果はむしろソメイヨシノに似て黄色系。
春に染めれば、もう少し赤みが増すかもしれません。

アルミでほっこりした玉子色、銅で桑茶色、鉄で海松色(みるいろ)

花言葉は「忠実」。

◎参考サイト◎
http://www.hana300.com/
https://www.flower-db.com/ja/flower:1368
http://kakuremino3.p2.weblife.me/pictorial/pictorial2/pictorial2117
https://pixta.jp/photo/4648294
http://www.pfaf.org

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2019/01/14

タニソバ・タデ科の底力の漆黒

Tanisoba01 (写真 : 宮越道代)

【学名】   Persicaria nepalensis (Meisn.) H. Gross,
       Polygonum nepalense Meisn
【英語名】  Nepalese Smartweed
【科】    タデ科

学名のPersicariaは「イヌタデ属」を表す。ミソソバ、ミズヒキソウなどは同じ仲間。日本在来種。北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、台湾、ロシア、アフガニスタン、インド、ブータン、ネパール、パキスタン、フィリピン、インドネシア、タイなどの山地、原野の湿った場所に自生する一年草。

夏から秋にかけて小花をつけます。花色は白から淡紅が多く、青紫のものもあるそうです。
秋に青黒い実がつきます。藍と同じタデ科なので、集めて染めたら、青系の色を得られるかもしれません。

イギリスのサイトには、根をすりおろした汁が解熱に効く、湿布にすると傷を癒やす、などの記述もありますが、日本の民間薬としての記述は特に見当たりません。

近種のミソソバに比べ、見た目が地味で目立たない。これといった歴史的逸話や民話も見当たらない・・・。しかし、なんでしょう、この、群生の存在感は。

小坪にお住まいの教室の生徒さんのお宅の近くに、群生が見つかり、少し採ってきてくださったので、煮出してみました。

タデ科の植物は、藍をはじめとして、染料として優秀なものが多く、このタニソバも、落ち着きのある大変堅牢な色を得ました。

アルミで空五倍子色(うつぶしいろ)、銅で鶯茶( うぐいすちゃ)、鉄の漆黒は特筆すべき美色です。

◎参考サイト / 文献◎
http://mikawanoyasou.org/data/tanisoba.htm
http://www.pfaf.org
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 2」 北隆館

(C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

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2019/01/13

バンマツリ・華麗な変身の油色

Nioibanmatsuri04 Nioibanmatsuri01

【学名】  Brunfelsia latifolia (Pohl) Benth.
      Brunfelsia australis(=ニオイバンマツリ)
【英名】  Yesterday-Today-Tomorrow, Morning-Noon-and-Night,
      Kiss Me Quick, Brazil raintree
【別名】  マツリカ(誤用が定着)
【科】   ナス科

ブラジル原産の常緑小低木。明治中期に園芸用に輸入されました。
種類が豊富で、現在ではニオイバンマツリという、強い芳香のある品種が多く出回っています。

夏のはじめから花が咲きます。はじめは濃い紫、だんだん薄紫となり、数日後には白くなって終わるという、不思議なお花。
その様から英語名Yesterday-Today-Tomorrow, Morning-Noon-and-Nightがついたのですね。ロマンチックで素敵だけれど、かなり説明的になってしまうのが英語の性質の悲しさ。日本語なら、そうですね、「日めくり花」とか、「一日変怪木」みたいな感じになるでしょうか。

和名の蕃茉莉は、蕃(外国)からの、茉莉(ジャスミン類)の意味で「外国からのジャスミン」を意味します。が、ジャスミンはモクセイ科の別種。

華麗なお花の印象に騙されるなかれ。どの部位にも神経毒性があり、特に未熟な果実や種などに中毒成分が多く含まれているそうです。犬や猫が誤って食べてしまうと、眼振・散瞳・嘔吐・ふらつきなどの症状を起こし、死に至ることもあるというから、びっくり。実際アメリカのASPCA(アメリカ動物虐待防止協会)には、犬が誤って花を食べて中毒症状を起こし、動物ポイズンセンターに運ばれる事例が多く報告されているといいます。日本での実情はどうなのでしょう。

花と枝葉を貰い受けたので試し染めしました。染液は色が薄く、素材の違いで色のフリ幅が大きいです。
アルミで練色から菜の花色、銅で青丹色(あおに)抹茶色、そして油色。鉄で利休色生壁色海松色(みるいろ)

土地の性質の違いで花の色を変えるアジサイも「移り気」という花言葉ですが、日が経つと花の色を変えるというのも、なかなか。やはり花言葉は「浮気な人」です。

◎参考サイト / 文献◎
https://en.wikipedia.org/wiki/Brufelsia_pauciflora
http://ja.wikipedia.org/wiki/ニオイバンマツリ
http://www.hana300.com/
http://blog.goo.ne.jp/frauyamada
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「色の手帖」小学館
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店

 (C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

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2019/01/12

イヌホオズキ・ナスの仲間は仙斎茶

Inuhozuki02

【学名】  Solanum nigrum L.
【英名】  Black nightshade, Garden nightshade, Garden huckleberry,
【別名】  ウシホオズキ, クロホオズキ、コナスビ
【生薬名】 龍葵(りゅうき)
【科】   ナス科

世界の熱帯、温帯に広く分布。日本でも北海道、本州、四国、九州、沖縄に分布の畑、荒地、海岸などに広く自生します。

和名の由来は葉がホオズキの葉に似ているがホオズキに劣るという意味。いやいや、調べてみましたところ、大変有用で興味深い植物であることが判明いたしましたよ。

生薬では生の果実、開花期の根を含んだ全草を乾燥させたものを「龍葵(りゅうき)」といいます。解熱、利尿に効果があるとされています。また腫れ物には、生の果実に塩を加えて、揉み潰して患部に塗布するとよいともいわれますが、ソラニンやアルカロイドを含むため、毒草の認識でいる方がよいでしょう。
アルカロイドの作用で、生葉の汁が目に入ると瞳孔がひらく「散瞳作用」も確認されています。

イギリスのサイトでは「実はジャコウの香りのする美味しいジャムになる」などの記述も見つかりますが、漢方では果実は一般的には有毒で吐寫、下痢をおこすとされますので、お薦めはできませんね。東南アジア、アフリカなどでは、野菜として、茎や葉を煮て食べるとも。でも、きっと、その土地の他の常食物との複雑な食べ合わせで食用として成り立っていることも考えられるので、こちらも容易に真似はしないほうがいいかもしれません。

和漢三才図会でも、特に毒草としての記述はなく、「実は酸っぱい。実の中に種がたくさんあるところがナスに似ている。」などの記述のほか、「苗・茎・葉葉・根は腫を消し、男子の元気を補益する」という面白い記述も見つかります。

乾燥した全草100g、砂糖150g、ホワイトリカー35度1.8㍑を約3ヶ月漬け込んだ竜葵酒は疲労回復に効果。

夏に一年ほど前から工房の庭に突然オオイヌホオズキが生えだしました。全体的にイノコヅチを思わせる青黒い姿。秋になると、葉がやけて紫色に。ちょっと玄人受けのする姿です。

アルミで浅梔子(あさくちなし)、銅で草色から麹塵色。鉄の利休鼠仙斎茶 (せんさいちゃ)が特に美しいです。

その玄人然とした青黒い姿に由来してか、花言葉は、「真実」「あなたの考えは腹黒い」「懐疑」「魔法」「魔術」「不可解」「死」、とかなりブラック。7/12の誕生花。秋の季語。

◎参考サイト / 文献◎
・http://www.e-yakusou.com/
・http://ja.wikipedia.org/wiki/イヌホオズキ
・http://ja.wikipedia.org/wiki/Solanum_nigrum
・http://www.pfaf.org
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「色の手帖」小学館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 第94巻

(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房  禁転載

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2019/01/11

ヌスビトハギ・ねずみ小僧は雀茶色

Nusubitohagi02

【学名】  Desmodium podocarpum DC.,  Desmodium racemosum DC.
【英名】  beggger’ lice (=ひっつきむし全般), Thunberg’s bush-clover
【別名】  ドロボウハギ, ツビッタカリ、ヤマシラミ
【生薬名】 山馬蝗(さんばこう)
【科】   マメ科

マメ科ヌスビトハギ属の多年草。中国、朝鮮、日本原産。日本各地の山野に生えています。
学名の(デスモディウム)は、ギリシャ語の「desmos(鎖(くさり))と「 eidos(構造)」が語源。実の途中がくびれて「鎖」状になっていることに由来します。確かに、とても個性的な優雅なデザインの実です。

実がセーターなどにくっついて運ばれる、いわゆる「ひっつき虫」系の植物の一つです。近似種が多区存在します。(その一つ 、アレチヌスビトハギは北米原産の外来種!)

抜き足差し足する泥棒の足跡に実の形が似ていることが名の由来。確かに鎖状に連なる独特の形の実の風情が、池波正太郎の鬼平犯科帳あたりに出てくる、江戸時代の盗人の地下足袋の足運びを連想させます。(私だけですかね・・・。)

英語名のbegger’s liceは、ひっつきむし系の草の実全般をさしますが、文字通り「乞食のシラミ」。もうちょっとかわゆいネーミングはなかったものかなぁ。

中国名(生薬名)では「山馬蝗(さんばこう)」といい、「中国では民間療法として、全草を発汗、感冒、咳、切傷、解毒、リウマチ、喀血に用いる」という記述も見当たります。

夏の終わりに、工房の庭に2018年、初めてお目見えしました。茶花にもなりそうなの可憐な小花。若い実は色も形の凛としたの美しさ。「シラミ」はやっぱ失礼でしょうよ。

煮出すとマメ科特有の甘い香りが漂います。全体に、そのほっこりした香りをそのまま移したような温かい色合いになりました。「盗みはすれど、犯さず殺さず、貧乏人からは盗らず」の掟を守る、人情味あふれる盗人さんの心粋が見えまする。アルミ媒染で柑子色(こうじいろ)鉄媒染で藍媚茶色(あいこびちゃいろ)。
そして銅媒染では、とても粋な雀茶色に。

花言葉は、「奪略愛」。 (※奪略は略奪の古い形)。「思案」「内気」

◎参考サイト / 文献◎
http://www.hana300.com/
http://had0.big.ous.ac.jp/index.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/ヌスビトハギ
http://www.amami.or.jp/kouiki/seibutsusigen/detail_plant/plant_detail_529.html
http://gkzplant2.ec-net.jp
・「季節の野草・山草図鑑」高村忠彦/監修  日本文芸社
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 3」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房

 (C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

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2019/01/10

ミネカエデ・山のもみじは伽羅色

Minekaede (写真出典)

【学名】  Acer crataegifolium Sieb. et Zucc.,  Acer tschonoskii
【英名】  Hawthorn-Leaved Maple
    【科】   カエデ科

中部以北の本州と北海道に分布し,亜高山帯の林内に生育する落葉樹で,高さは3~5m。 枝先の総状花序に、直径8~10mmの淡黄色の花を多数つけます。雄花と両性花があるそうです。名前高山にはえる楓、の意。

葉は掌状で,5個に中裂し, 裂片には欠刻と二重の鋸歯があります。
葉は秋に黄葉します。一般のカエデ(イロハカエデなど)が赤く紅葉するのとは違いますね。果実は2個の分果からなり,それぞれに翼がついて左右に開く。 これは他のカエデと同じようです。

ミネカエデの近縁種には,ナンゴクミネカエデ(東北南部以南),コミネカエデ,オオバミネカエデなどがあります。

イギリスのサイトの記述では、樹皮をペーストにして紙をつくる、などの記述が見当たります。

イロハカエデは煮出すと強いタンニン臭がし、金茶の染液となりますが、こちらはタンニン臭が少なく、染液が赤みを帯びています。

アルミで澄んだ伽羅色(きゃらいろ)、銅で桑茶色、鉄で薄墨色。イロハカエデでは鉄媒染では漆黒がでることを考えると、やはり、タンニンの含有量がイロハカエデより少ないのですね。山のもみじ、淡白な性格のようです。

花言葉は「他人からの好意」。7/6の誕生花。

   

◎参考サイト / 文献◎
http://tsukasan.hiho.jp/flower/album/minekaede.htm
http://www.plant.kjmt.jp/tree/kigi/mmjmine.htm
https://minhana.net/wiki/ミネカエデ
https://www.weblio.jp
https://pfaf.org
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 2」 北隆館

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